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剋生の孔雀  作者: 氷炎
新しい世界 定めた目標

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14/18

Ep.13 濃翠の脈動 ― 森の深部

 


 レベルアップ後、エーテルはすぐにステータスを開いた。


 レベル1の時点では、


 名前 : エーテル  種族 : 鬼人  【相生】【相剋】

 役職 : 『十二影座』 双影座  レベル : 1

 相生 : 主属性 金 副属性 水  相剋 : 主属性 金 副属性 木

 魔法系統:「金」・「雷」・「水」・「氷」・「木」・「風」

 経験値 : 0/200 SP : 0

 筋力 : 15(3) 頑強 : 15(3)

 柔軟性: 10(2) 魔力 : 12(4)

 精神 : 10(2)


 振り分けを終えたあとは、


 名前 : エーテル  種族 : 鬼人  【相生】【相剋】

 役職 : 『十二影座』 双影座  レベル : 2

 相生 : 主属性 金 副属性 水  相剋 : 主属性 金 副属性 木

 魔法系統:「金」・「雷」・「水」・「氷」・「木」・「風」

 経験値 : 1/250 SP : 0

 筋力 : 18(3) 頑強 : 18(3)

 柔軟性: 15(2) 魔力 : 18(4)

 精神 : 15(2)


 柔軟性と精神に三ずつ、魔力に二。


 レベル1の時点で低かったところを埋める形で振り終え、エーテルはウィンドウを閉じた。


「少し、強くなったよ」


「少し~?」


「でも確実に強くなった」


 マッチーが笑う。


「身体能力が上がった時の、あの独特の高揚感いいよね。あのためにゲームしてるって人がいるのもわかる~」


「一時期ちょっと危なかったよね。精神に悪影響がどうとか」


「あったあった~。結局、言ってた団体が自社ゲームのシェア取れなかったのが原因だったって話だよね」


「まあ、そのおかげで安全機能が見直されて、全体の性能が上がったんだから、善し悪しだよね」


 話しながら、エーテルは森の奥を見る。


 さっきまでより、ずっとはっきりと。


「さて……いるね」


「うん。さっき感じてた威圧感と一緒。集中してたら、さっきもすぐ気づけたかもね~」


 マッチーの声は静かだった。けれど、奥には熱がある。


 風が止む。


 二人は並んだまま、さらに奥へ踏み込んだ。


 踏み込んだ瞬間、足裏の感触が変わった。


 土じゃない。生きているものの上へ乗ったような、嫌な柔らかさ。


 次の瞬間、地面が持ち上がる。太い根が絡み合いながら隆起し、その中心から幹のように肥大した巨体が、ゆっくりとせり上がった。


 最初の印象は、ツタバイン。


 けれど大きさが違う。通常個体の数倍はある。そこから放射状に伸びる蔦は、どれも一本で武器みたいな太さと質量を持っていた。


 中央には濃い翠の核。


 その脈動は重い。どくん、どくん、と森ごと揺れるようだった。周囲にはすでに根が張り巡らされていて、ここ一帯がこいつの縄張りだとはっきりわかる。


「こいつだよ~」


 マッチーの声は軽い。けれど視線は細い。


 エーテルは核の明滅を見る。間隔が短くなっていく。


「拘束、くるよ」


 言って、前へ出る。


 その直後だった。


 地面が爆ぜる。


 全方位から蔦が跳ね上がり、視界が緑に埋まった。避ける隙がない。蔦が足に、腕に、胴に巻きつき、一気に全身を締め上げる。通常個体より明らかに重い。呼吸が止まり、筋肉が軋んだ。


 三秒。


 マッチーの情報通りなら、それで解ける。短い。けれど拘束力は比べものにならない。


 その横を、マッチーが走り抜けた。横回転しながら軽く跳び、勢いごと斧を叩き込む。


 本来なら、それで十分なはずだった。


「硬っ……!」


「マッチー!! すぐ離れて!」


 核を覆う蔦は何本か飛んだ。けれど幾重にも重なった層に勢いを殺される。斧は本体へ食い込んだまま、振り抜けない。返ってきた反動で、マッチーの体が一瞬止まった。


 その間に、地面が抉れる。


 マッチーの体が後方へ弾かれた。


「威力はないよ。でもノックバック効果が高~い!」


 吹き飛ばされながらも、空中で体勢を整えて着地する。


 距離を取らされた。


 接近拒否。蔦は拘束だけのためじゃない。戦場を切るための手でもある。


 徘徊型の核が強く脈打つ。地中の蔦がそれに応じて震えはじめた。


 嫌な感じが背筋を走る。


 次の瞬間、地面が裂けた。


 ツタバインが二体、這い上がる。核の光は少し淡い。けれど動きは鋭い。


「蔦の脈動は増援! たぶん次もある! 周期見るね!」


「了解! 火よ、宿れ! 刃に熱を、燃焼を! ――《ブレイズエッジ》!!」


 炎を纏った斧を手に、マッチーが増援へ飛び込む。一体を叩き割り、その勢いのまま二体目も潰す。だが、その背へ本体の蔦が振り下ろされた。衝撃が走り、体勢が崩れる。


「本体の圧が強い……!」


 自分で押し潰す型じゃない。


 拘束と増援で削り続ける、耐久寄りの個体だ。時間をかけるほどこっちが苦しくなる。


「優先順位は変わらないよ。増援は即処理。本体は核狙い」


 核がまた明滅する。速くなる。


「拘束まで、だいたい十秒くらい!」


 蔦がゆっくり持ち上がる。空気が重くなる。


「拘束、来るよ!」


 二度目は、前に出ていたマッチーが絡め取られた。


「最初の時より拘束強~い!」


 レベル差か、眷属を落とされた影響か。どちらにせよ圧が増している。


 そのまま、また蔦が脈動する。


 最初から数えて、増援の周期は三十秒。


 地面を破って、眷属がまた出た。


 森は静かだった。鳴き声もない。ただ蔦のうねる音だけが続く。


 不利なのははっきりしている。けれどマッチーは笑っていた。


「面白いじゃ~ん!」


「増援周期は三十秒。消耗戦になるよ」


 エーテルは短く返す。


 核の翠はまだ深い。森の中央で、巨大な蔦がもう一度持ち上がった。


 まだ序盤だ。


 マッチーが笑いながら増援へ突っ込む。斧が振り抜かれ、一体が消し飛ぶ。その隙へ、本体の蔦が地面を叩きつけた。足場が崩れ、マッチーの重心がずれる。


「左、来る!」


 声を飛ばす。


 けれど遅い。足元を叩いた蔦がそのまま横薙ぎに変わり、マッチーを掠めた。大きく吹き飛ぶほどじゃない。だが、また距離を離される。


「うわ、やっぱ重い!」


「分断されないで!」


 どくん、とまた脈が鳴る。


 三十秒。


 地面が裂け、さらに二体。


 これで場に三体。


「どこまで増えるんだろ!」


「優先は変わらないよ! これ以上増えたら手が足りない!」


 ここまで観察に寄せて動きを抑えていたが、もう止まれない。エーテルも増援へ踏み込む。視界の端で、本体の核の明滅が速まっていく。


 拘束が来る。


「あと五秒で拘束来るよ!」


「マジ~!?」


 蔦が持ち上がる。


「来る!」


 三度目。


 今度は増援の蔦まで絡んだ。締め付けが深い。重い。肺が潰される。


「きつ……!」


「耐えて!」


 三秒。


 解けた瞬間、本体の蔦が二人をまとめて叩く。大きく距離を取らされ、その間へ増援が割り込んだ。


「まずい、囲まれる!」


 視界が緑に埋まる。


 その中で、エーテルは気づいた。


「核の光、少し弱くなってるよ。私たちが本体に入れた攻撃はマッチーの斧だけ。それも蔦に止められてた。なのに最初より濃さが落ちてる。眷属召喚はHP消費型。でも処理が追いつかない」


「手数が足りないか~。あと単純にステータス不足?」


「そうだね。今の私たちだときつい」


 マッチーはそれでも笑った。


「じゃあとりあえず、強引にいってみよっか~。次につなげるよ!」


「無理は――」


「今しないでいつするの!」


 言い切って、本体へ突っ込む。


 増援の蔦を斬り裂きながら一直線。振り下ろした刃が核に届く。


 響いたのは、硬い音だった。


 核は蔦よりさらに硬い。斬撃を弾き、衝撃がそのまま腕へ返る。


 その直後、地面が爆ぜた。


 足元から蔦が伸び、至近距離のままマッチーを締め上げる。そのまま横薙ぎの追撃。拘束中に受けた一撃はさっきまでより重く、マッチーの体が弾かれて転がった。


 視界左上のHPバーは、もう三割しかない。


「マッチー!」


 エーテルが増援を斬り払い、駆け寄ろうとする。だが三体の眷属が壁になった。


「邪魔!」


 斬る。一体は落ちた。けれどまだ二体いる。


 その二体の蔦が、今度はエーテルへ向いた。


 全身へ絡む。肺が空気を求め、視界が狭まる。


 三秒。


 数える。


 ……一。


 蔦がさらに食い込む。


 ……二。


 本体の蔦が重なる。


 ……三。


 拘束が解け、吹き飛ばされる。着地した瞬間、増援の体当たりが入った。崩れたところへ、間髪を入れず本体の拘束。


 また蔦が巻きつく。


 HPが削れていく感覚が、はっきりわかる。


「くっそ~……!」


 マッチーが立ち上がる。けれど遠い。


 エーテルは苦笑した。


「詰みだね……今回は負けだよ」


 核が最後に大きく脈打つ。


 視界が緑に染まり、そのまま暗転した。


 ──────────────────────────────


《ペンタクルベース 中枢域》


 次に視界が開いた時、隣にはマッチーがいた。


 結晶柱の淡い光。戻ってきた場所は中枢域だった。


 リスポーン。


 マッチーが隣で大きく息を吐く。


「いや~、やられたね」


 エーテルはゆっくり立ち上がった。


「ごめん。観察に回りすぎて、増援処理が遅れた」


「観察する時間を作るのが、わたしの役目だったけど、うまくいかなかったや。こっちこそ、ごめん。……でもさ」


 マッチーが笑う。


「負けることの悔しさ、思い出せたね~」


 エーテルは静かに頷いた。


 森の奥。あの濃い翠の核を思い出す。


「うん。次は、倒す」


 今回は負けた。


 けれど、それで終わりじゃない。


 エーテルとマッチーは、またやり直せる。



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