転校生とカレー
もふもふ学校に辿り着き校門をくぐり校舎に向かう。わくわくと緊張が入り交じる。
職員室の前に着くと、
「満里奈ちゃん、ケン君、今日からもふもふ学校を楽しんでにゃん」とミケにゃんが言った。
「うん、楽しむよ」
「学校だから楽しむのもね」
「お昼休み一緒にご飯を食べようにゃん。あ、ケン君ってば学校は楽しむところだにゃん」
「ふ~ん、そうかな。まあ、俺なりに楽しむよ」
「じゃあ、二人とも後でにゃん。ミケにゃんは小さな一年生の教室に行くにゃん」
ミケにゃんはそう言ってお日様みたいな元気いっぱいの笑顔を浮かべそして、踵を返しパタパタにゃんと廊下を歩き出した。
わたしとケンはミケにゃんのもふもふした可愛らしい後ろ姿を見送った。
「賑やかな奴だな」
「そこがミケにゃんちゃんらしくていいんだよ」
わたしは言いながら職員室のドアを開けた。
職員室では担任のもふもふした犬の先生がわたし達を待っていた。昨日十年生の教室で授業をしていた先生だ。
「おっ、満里奈ちゃんにケン君だね。我らのもふもふ学校にようこそ。わたしは十年生の担任のワンコロです」
ワンコロ先生はもふもふな両手を広げわたし達を歓迎してくれた。
そして、わたしとケンはワンコロ先生の後に続き十年生の教室がある三階の廊下を歩いている。
「ケン君、なんだか楽しみでワクワクドキドキしちゃうね」
わたしはニコニコと笑い隣を歩くケンに言った。
「能天気な奴め」
思った通りの返事が返ってくるけれど、今は怒らないのだ。
前を歩いていたワンコロ先生が『十年生』の教室の前で立ち止まり、「さあ、十年生の教室へようこそ!」と言いながら教室のドアを開けた。
わたしは地球の学校から異世界のもふもふ学校へ転校してきたそんな気持ちになった。
十年生の教室の扉が開くとほぼ同時に教室の中にいたもふもふや人間達が一斉にこちらに振り向いた。
わっ! 注目を浴びていると思うとドキドキする。
「みなさん、おはようございます。新しい仲間ですよ」
ワンコロ先生が教壇に向かいながら言った。わたしとケンもその後に続く。
みんなの視線がわたし達に集まった。
「では、満里奈ちゃん、ケン君自己紹介をどうぞ」
ワンコロ先生にそう言われわたしは教壇に立ち自己紹介をした。
「みなさんおはようございます。川本満里奈です。えっと、地球の高校から転校してきました。好きな食べ物はカレーとケーキです。どうぞよろしくお願いします」
とわたしは言って頭をぺこりと下げた。我ながら完璧な自己紹介だなと思ったのに教室はざわめいた。
「地球の高校だってにゃん?」、「あ、もしかしたら仲間かな?」、「カレーが好きなんだ」とかクラスメイトは口々に言った。
「カレーは大好物です」と勇気を出して言ってみると、なぜだか笑われてしまう。
わたしはしょんぼりとうつ向く。
「わたしもカレー大好物だよ」と誰かが言った。
顔を上げると、丸顔にくりんとした大きな目をした人間の女の子がにっこりと笑っていた。
「やっぱりカレーって美味しいよね? チーズカレーなんてそれはもう最高だよね。あ、キムチを入れても美味しいよ」
なんてわたしは気がつくとカレーについて語ってしまっていた。
「わたしもチーズカレー好きだよ。キムチもいいかもね」
「今度キムチも入れてみてね」
「うん、入れてみるね」
教壇に立つわたしは気がつくと夢中になり話していた。
カレーの話をするとクラスメイト達は、頷きながら聞いてくれた。
「納豆をどばっと入れても美味しいよ」
なんて自分でカレーの話をしていると食べたくなってくる。
「カレーにコロッケを入れても美味しいよ」
ああ、気がつくと自己紹介がどんどんカレーの話しになっていくよと自分でも呆れてしまうのだった。
「満里奈ちゃんって幸せそうにカレーについて語るんだね」
さっきの丸顔にくりんとした目の大きなカレー好きな女の子が言った。
「あ、あはは、そうかな?」
「うん、満里奈ちゃんのその幸せそうな表情を見ているとなんだかほっこりしちゃったよ」
なんて言ってにっこりと笑う女の子の笑顔こそふわっと柔らかくて癒される。
「えっと、ありがとう」
わたしは、ぽりぽりと頭を掻いた。
「あ、ほんとだ~満里奈ちゃんの顔を見ると癒されるにゃん」
なんて言ってくれた猫ちゃんこそちょっとぽっちゃりしたもふもふなにゃんこでとってもキュートだった。
「みなさん、ありがとう。これからよろしくお願いします」
わたしはぺこりと頭を下げて教壇から降りた。すると、パチパチと拍手が沸き起こった。
ただ自己紹介をしただけなんだけどなと思うのと同時にクラスメイト達はわたしを温かく迎え入れてくれたと思うと嬉しくて頬が緩んだ。
「満里奈ちゃん、ありがとう。では、ケン君も自己紹介をどうぞ」
ワンコロ先生がケンの肩をぽんぽんと優しく叩いた。ケンは、「みなさんよろしくお願いします」とだけ言って挨拶を終えた。相変わらずのケンなのだ。
それからわたしとケンは割りあたえられた席に座った。




