もふもふカフェの開店です
「ねえ、シロッコちゃんってトマトジュースを飲んでいるけどトマト好きだね」
わたしはトマトジュースを美味しそうに飲んでいるシロッコを見ていると聞かずにはいられなかった。
「うん、わたしトマト大好きだよ。このトマトジュースはうちの畑で採れたトマトを使っているんだにゃん」
シロッコはそう言ってトマトジュースをゴクゴク飲んだ。そのトマトジュースがどんどんシロッコの真っ白な身体を真っ赤なトマト色に染めてしまうのではと思ってしまった。
「そうなんだね」
わたしは、笑いながらトーストにバターをたっぷり塗った。口に運んだトーストにじわりと染み込んだバターが濃厚でとても美味しかった。
「あ、そうだ。みんな、今日はもふもふカフェをオープンするよ」
その言葉にみんなの視線がシロッコに集まった。
「お客さんがシロッコちゃんの料理を喜んで食べてくれるにゃんね。想像するとヨダレが垂れそうだにゃん」
「ミケにゃん、すでにヨダレ垂れているよ」
うさぴーがじろーりとミケにゃんを見て言った。
「ありゃまにゃん……ミケにゃんとしたことがにゃん」
ミケにゃんは照れ笑いを浮かべもふもふな手の甲でヨダレを拭いた。
「ミケにゃん、ばっちいな」
ミケにゃんとうさぴーのいつものやり取りが微笑ましい。それはそうとシロッコの気まぐれもふもふカフェが気になる。
「さあ、今日のわたしは忙しいにゃん。みんなももふもふカフェを手伝ってね」
シロッコはトマトジュースを飲み干した。
「あのシロッコちゃんわたしも手伝うの?」
「うん、満里奈ちゃんも良かったら手伝ってにゃん。唯奈ちゃんもね」
「うん、分かったよ」
わたしは返事をしながらシロッコちゃんのもふもふカフェにわくわくしていた。
たくさんのもふもふな動物のお客さんが来店するのだろうか。それはもうもふもふパラダイスそのものではないかとわたしは嬉しくなった。
楽しい朝食の時間が終わると一旦部屋に戻った。可愛らしいチューリップ柄の壁紙が貼られているこの部屋も見慣れてきた。
ここもふもふパラダイスの毎日がわたしの日常になってきた。もうずっと、この異世界で暮らしてもいいかななんて考え始めている。
だって、地球で気がかりなことと言えば猫のマナのことだけなのだから。マナもこの世界に引っ越してきたらいいのになとふと思った。
わたしは地球で暮らしているとマイペースだねと言われた。けれど、この世界で暮らしているとわたしは普通の女の子だなと思う。
だって、アパートの管理人はマイペースな猫のシロッコなんだもん。
それに住人(動物)はお転婆で食いしん坊のミケにゃんにそれからキュートで可愛らしいけれど思ったことをハッキリ言ううさぎのうさぴー。それと無愛想な人間のケンなのだから。
わたしは人間との生活よりも猫と暮らす方が合っているのかなと考えるとなんだか可笑しくなる。
今日はもふもふカフェで初仕事も待っている。
「満里奈ちゃ~ん、唯奈ちゃ~ん、もふもふカフェのお時間だよ~」
シロッコが階下からわたし達を呼んでいる。
「は~い」とわたしは元気よく返事をした。隣の部屋からは唯奈ちゃんの明るい返事も聞こえてきた。
カフェの扉を開けると、シロッコがエプロンを持っていた。
「満里奈ちゃんと唯奈ちゃん、もふもふカフェのエプロンだにゃ~ん」
シロッコから受け取ったエプロンの真ん中に『もふもふカフェ』と刺繍されたロゴがどーんと入っている。
「わ~い、可愛いね」
わたしは嬉しくなってぴょーんと飛び跳ねた。
「うふふ、もふもふカフェってなんだかいいね」
唯奈ちゃんも笑顔を浮かべている。
「にゃはは、気に入ってくれたんだね」
シロッコは笑いながら『もふもふカフェ』とロゴが入っているエプロンをつけた。
「わたし達もエプロンつけよう」
「うん、そうだね。エプロンなんてつけるの久しぶりだよ」
「うん、わたしもだよ~」と言いながらわたしと唯奈ちゃんは『もふもふカフェ』と刺繍されたロゴ入りエプロンをつけた。
「これで、わたし達ももふもふカフェの店員さんだね。あ、唯奈ちゃんめちゃくちゃ似合っているね」
「うふふ、ありがとう。満里奈ちゃんもとっても可愛らしいよ~」
なんて、わたし達はお互いの姿を褒め合った。そんな自分達がなんだか可笑しくて笑い合った。
すると、その時、
「にゃんだかエプロンをつけると気合いが入るにゃんね。ミケにゃん頑張るぞ」
「うん、エプロンをつけるとわたしももふもふカフェの店員さんだよって気合いが入るよ」
「うさぴー頑張ろうにゃん」
「うん、ミケにゃん頑張ろう。って、あ、ミケにゃんってばヨダレが垂れているよ」
「え? ヨダレにゃん。あ、カフェのココアやパンケーキを頭の中に思い浮かべちゃったにゃん」
ミケにゃんは言いながら頭をぽりぽり掻いている。
ミケにゃんとうさぴーもわたし達と同じようなやり取りをしているではないか。ただ、ミケにゃんはヨダレ付きというオマケが付いているけれど。
二匹の可愛らしいやり取りにわたしの心はほっこりと和らいだ。隣に立っている唯奈ちゃんも微笑みを浮かべていた。
「さあ、もふもふカフェをオープンするにゃん。その前にお仕事の説明をちょっとするね」
シロッコがそう言いながらキッチンから出てきた。やっぱりオーナーであるシロッコが一番もふもふカフェのエプロンが似合っているね。
それからケンも『もふもふカフェ』と刺繍されたロゴがどーんと入っているエプロンをつけてやって来た。その姿は似合っているのか似合っていないのか分からないけれど、ちょっとエプロンが目立ち笑ってしまった。
「満里奈ちゃん、俺の顔を見て笑っているよね?」
ケンは嫌な顔をして唇を尖らせた。
「あはは、ケンの仏頂面にそのもふもふカフェのエプロンが似合っているような似合っていないような微妙な感じだったんだもん」
「あっそ、なんだかちょっとムッとするんだけどな」
ケンはそう言ってむすっとした。
「はいはい、ケンも満里奈ちゃんも喧嘩はしないでにゃん。さあ、もふもふカフェの仕事の配置を決めましょうにゃん」
シロッコがわたしとケンの間に入り言った。
「は~い、シロッコちゃん」、「分かったよ」とわたしとケンは返事をした。
「わたしはキッチンで調理をしますにゃん。ケンも調理係がいいよね」
「うん、そうだね」
「は~い! ミケにゃんは料理を運ぶにゃん」
ミケにゃんが手を挙げて言った。
「じゃあミケにゃんはホールスタッフね。満里奈ちゃんと唯奈ちゃんはどうするにゃん?」
「わたしも料理を運ぶホールスタッフがいいかな?」とわたしは答えた。
「わたしもホールスタッフかな?」と唯奈ちゃん。
「じゃあわたしは調理スタッフをやるよ」
うさぴーが鼻をぴくぴくさせながら言った。
「じゃあ一応決定にゃん。満里奈ちゃんと唯奈ちゃんは初めてだからメニュー表を見て覚えてね。それと、分からないことはわたしとミケにゃんに聞いてね」
「あの……シロッコちゃん、ミケにゃんちゃんに聞いてと言ったのかな?」
「うん、ミケにゃんはもふもふカフェのお仕事経験者だからにゃん」
「ミケにゃんは先輩だにゃん」
ミケにゃんは得意げに胸を張った。
「……ミケにゃんちゃんに聞かなきゃならないなんてそんな~」
「満里奈ちゃん! ミケにゃんは先輩にゃんだよ」
ミケにゃんは頬をぷくぷく膨らませた。
「あ、ミケにゃんちゃんごめんね」
「慣れてきたらミケにゃんがつまみ食いをしないか見張っていてね」
「あ、シロッコちゃんってば酷いにゃん! ミケにゃんはつまみ食いなんてしないにゃん」
ミケにゃんはぷんすかと怒っているけれどつまみ食いの常習犯なんだよね。
「あ、満里奈ちゃんも笑っているにゃん」
「だって、ミケにゃんちゃんってばいつもつまみ食いをしているんだもん」
わたしはクスクスと笑った。まあ、そんなミケにゃんが可愛らしいんだけどね。
「さあ、もふもふカフェの開店だよ~」
さてさていよいよ開店らしいです。
みんなでエプロンをつけて準備完了しました(^^)/




