可愛らしい仲間
「満里奈ちゃんぼーっと突っ立っていないで座ったら」
ケンがそう言いながら目の前の席を指差した。
「えっ! わたし、ここに座るの?」
わたしは、恐らく嫌そうな顔をしたのだと思う。
「俺の目の前に座るのが嫌なわけ?」
「あ、うん」
「あ、うんって信じられないことを言うんだね」
ケンはわたしの顔をギロリと睨んだ。
だって、嫌なことを嫌じゃないと言えないのだから仕方がないのだけど、ここはグッと我慢をしよう。
わたしは、ケンの目の前の席に腰を下ろした。
「満里奈ちゃん、お茶飲むよね。コーヒーと紅茶どっちがいいかな?」
シロッコのふっくら丸みを帯びた口元がとても可愛らしくて癒される。わたしを睨むケンとは大きな違いだ。
「わたし、紅茶がのみたいな」
「じゃあ、紅茶を淹れてくるにゃん。もふもふの仲間達もそろそろ帰ってくる頃かな~」
シロッコはにゃははと笑いキッチンへ行った。その後ろ姿ももふもふふわふわしていてとても可愛らしかった。
わたしがぼんやりと木の温もりを感じる店内を眺めていると、
「ふ~ん、満里奈ちゃんもこのもふもふな異世界に連れて来られたんだ……」
なんて呟くケンの声が聞こえてきた。
「ケ、ケン君! 今、満里奈ちゃんもって言ったよね?」
「うん、言ったよ。俺は嫌なことがあって憂鬱な顔をして歩いていたらあのシロッコが……」
「もしかしたら、我らと楽しいもふもふライフを送るかにゃん? って言ったのかな?」
わたしは、身を乗り出して聞いた。
「やっぱり満里奈ちゃんも言われたんだね」
「うん、言われたよ」
わたしとケンがそんな話をしていると、カランコロンとドアベルが鳴ったのと共にドタバタとクリクリとした大きなおめめの白、茶、黒の毛色を持つ三毛猫が店内に入ってきた。
「ただいまにゃ~ん。お腹が空いたにゃ~ん」
その声はとても可愛らしくて二足歩行で歩いているんだけど体が小さくてあどけない顔をしているので子猫のようだ。
めちゃくちゃ可愛らしくてこれはもう胸がきゅんとしちゃうよ。
「人間のお姉さんはお客さんかな?」
三毛猫は大きくて可愛らしいクリクリのおめめでまっすぐな視線を向けてくるのだから堪らない。
「しばらくお世話になることになりました川本満里奈高校一年生です」
なんて思わずわたしは、敬語で答えてしまったではないか。それに、わたしこのもふもふパラダイスでしばらく暮らすことになるのかな? 自分で言っておきながらやっぱり不安になる。
「満里奈ちゃんって名前可愛いにゃん。わたしは、ミケにゃんだよ。よろしくね」
「うふふ、可愛いかな、嬉しいよ。ありがとう。ミケにゃんよろしくね」
わたしは、頬を緩めて挨拶をした。
「あ、ミケにゃんはお腹が空いたんだった~ご飯食べたいにゃ~ん」
三毛猫改めミケにゃんはキッチンに向かって叫んだ。
「あら、ミケにゃんおかえりなさい~ちょっと待っててね」
キッチンからシロッコが返事をした。
「ねえ、シロッコちゃんってミケにゃんちゃんのお母さんなのかな?」
わたしがミケにゃんのクリクリの丸くて大きな目を見て尋ねる。
「ううん、違うよ。シロッコちゃんはこのカフェとアパートの管理人さんらしいにゃん」
「そうよ、わたしはこのもふもふ癒しの空間アパートカフェの管理人よ」
その声に振り向くとシロッコちゃんが湯気の立ったティーカップとお菓子やオムライスを載せたお盆を片手に持ち立っていた。
「あ、お菓子にオムライスだにゃん。ミケにゃんむしゃむしゃにゃんするにゃん」
ミケにゃんはぴょんぴょんと飛び跳ねお盆に飛びつく勢いだ。ミケにゃんはめちゃくちゃ可愛らしいけれど食いしん坊だな。
「もうミケにゃん食いしん坊さんなんだからにゃん」
シロッコちゃんは言いながらテーブルにお菓子とオムライスに湯気の立ったティーカップを並べた。
「美味しいにゃ~ん!」
ミケにゃんは手づかみでオムライスを食べているではないか。
「ミケにゃん、スプーンを使って食べなさい」
「手づかみで食べるオムライスは美味しいにゃん」
「ミケにゃん、スプーンで食べなさい。オムライス没収しちゃうよ」
「わ、わかったにゃん。仕方ないな~」
ミケにゃんは渋々スプーンを使ってオムライスを食べた。
わたしは二匹のそのやり取りがなんだか可愛らしくてクスクスと笑ってしまった。
「あ、満里奈ちゃんもお菓子と紅茶をどうぞ」
「ありがとうございます。いただきま~す!」
わたしは、紅茶を口に運んだ。紅茶の良い香りに包まれてじわじわと体が温かくなって癒された。
異世界で飲む紅茶もとても美味しかった。




