もふもふ達の住む世界へようこそ
気がつくとわたしは、色とりどりの花が咲き誇る地面に倒れていた。ゆっくり体を起こし辺りを見渡すと見たことのない世界がそこには広がっていた。
だって、二足歩行で猫や犬やうさぎなどの動物達が歩いているのだから。
それに動物達は洋服を着ていて思い思いのファッションを楽しんでいるようなのだ。いちご柄のワンピースを着ている猫やタキシード姿の犬にそれから、ひらひらのドレスに身を包んでいるうさぎもいるのだった。
「もふもふパラダイスだよ~どうなっているの!?」
わたしに何が起こったのかな? ここは一体どこなのだろうか……。
そう言えば、白猫がにゃははと笑い、「では、我らともふもふライフを楽しむと決定」と言ったこと思い出した。
でも、あれは夢ではなかったの? だって、猫が喋るなんてありえないではないか。
まさか、わたしは、もふもふが二足歩行で生活をしている異世界に来てしまったというのだろうか。
果たしてマンガや小説の中で起こるようなことが現実に起きるなんて……。信じられないし、信じたくないよ。
でも、今、目の前にあるこの状況を見る限り現実であるとしか考えられない。わたしは、念の為に自分のほっぺたを力いっぱいつねってみた。
「い、痛いよ~これって夢じゃないの?」
ほっぺたはジンジンヒリヒリして痛かったのだ。
「にゃはは、満里奈ちゃんてば自分のほっぺたをつねってどうしたの?」
この声はまさか……。
わたしは、恐る恐る振り返った。すると、そこには、海の色に良く似た瞳を持つ白猫がチューリップ柄のワンピースに身を包み立っていたのだった。
「満里奈ちゃん、我らのもふもふパラダイスへようこそにゃん!」
と言って笑った。
「……わたし、もふもふパラダイスに来てしまったの?」
わたしは、金魚のように口をぱくぱくさせてしまった。
「あら、満里奈ちゃんお魚みたいなお顔になっていますがどうしましたかにゃん?」
白猫はそう言って首を傾げた。
「だって、白猫さん君は喋ってるしそれに二足歩行で歩くもふもふさんがたくさんいるんだもん。びっくりしちゃうよ」
「この世界は我らもふもふパラダイスなんだからこれが常識なんだにゃん」
白猫さんはそう言って胸を張った。
「……そうなんだね」
「そうよ、あ、わたしの名前はシロッコだよ。よろしくにゃん」
白猫さん改めシロッコは肉球のある可愛らしい手を差し出した。
わたしは、「シロッコちゃんよろしくね」と挨拶をして、その差し出された手を握り返した。
その手はぷにぷにしていて柔らかくてとても触り心地が良かった。これこそ正にもふもふの癒しのパワーだなと思った。
「じゃあ、仲間を紹介するにゃん」
シロッコはにゃんにゃんと歩き出した。
「あ、シロッコちゃん待って」
わたしは、シロッコの後を追いかけた。
この世界で知り合いはシロッコしかいない。一人取り残されてもどうすることもできないので今はシロッコを信じてついていくしかない。
シロッコは太陽の光を浴びて緑がキラキラ輝く道をどんどん歩く。
「満里奈、着いたよ」
シロッコは花と緑に囲まれた石造りの建物の前で立ち止まり、こちらに振り返った。
「ここはシロッコちゃんのお家かな?」
「うん、お家とカフェになっているにゃん。仲間もいるから紹介するね」
なんだかヨーロッパの田舎もしくは昔の時代のヨーロッパって感じだ。行ったことはないけれど。
シロッコはノスタルジックな雰囲気が漂う木製のドアを開けた。
すると、美味しそうな匂いがふわりと漂ってきた。
「シロッコおかえりなさい。おっ、お客さんかい? 見かけない人間だね」
そう言ってこちらを見たのはわたしと同じ年くらいの男の子だった。もふもふ以外に人間もいるんだなと思いわたしは、その男の子をじっと眺めた。
「ケン、この子は満里奈だよ。仲良くしてあげてね」
シロッコがわたしを紹介してくれた。
「川本満里奈です。よろしくお願いします」
わたしは、ぺこりと頭を下げた。
「ふ~ん、満里奈ちゃんって言うんだ。俺はケンよろしく」とぶっきらぼうに少し長めの前髪をかきあげながら言った。
果たして仲良くできるのだろうかとちょっと不安になった。
「さて、これで二人は友達だね」
シロッコはにゃははと微笑みを浮かべているけれど、ケンは優雅にコーヒーを飲んでいるではないか。




