みんなが幸せになる歌
唯奈ちゃんが夢を歌うそして、時には悲しみを歌う。唯奈ちゃんのその歌詞には夢や希望や切なさが溢れている。
唯奈ちゃんの歌声はわたしの胸に強く響く。わたしは、ずっと唯奈ちゃんがもう一度歌を歌ってくれるその日を待っていた。
今日はその歌声が聴けた。まさか久しぶり聴ける場所が異世界だとは夢にも思っていなかったけれど……。
でもどこだっていいよ。歌を歌っている唯奈ちゃんに会いたかったその願いが叶ったのだから。
そんなことを考えながらみんなの顔を見る。
シロッコもうさぴーもうっとり唯奈ちゃんの歌声に耳を傾けているようだ。それからミケにゃんはホットレモンを飲みながらじっと唯奈ちゃんの歌声を聴いている。ケンもじっと唯奈ちゃんを見ていた。
みんなをその歌でほっこり笑顔にできる唯奈ちゃんは最高に格好いいではないか。
ジャカジャカとアコースティックギターをかき鳴らし歌を歌う唯奈ちゃんが大好きだ。幼い頃からずっとその背中を追いかけていた。
そんなことを思いながら唯奈ちゃんを眺めていると、背中をツンツンとされた。何だろうと思い振り返るとミケにゃんがニコニコと笑っていた。
「ん? ミケにゃんちゃんどうしたの?」
「唯奈ちゃんって格好いいにゃん! ミケにゃんは感動したにゃん」
ミケにゃんはそう答えホットレモンを飲んだ。
「うふふ、ありがとうそうでしょ。唯奈ちゃんは格好いいよね」
「うん、格好いいにゃ~ん! にゃんだか感動して涙が零れるにゃん」
ミケにゃんの涙は飲んでいたホットレモンのティーカップにぽとりと零れ落ちた。
「ミケにゃんちゃん、唯奈ちゃんの歌に感動してくれてありがとう」
わたしは、ミケにゃんの可愛らしいもふもふした頭をそっと撫でた。唯奈ちゃんが褒められたことがとても嬉しかった。まるで自分のことのように。
ミケにゃんの柔らかくてもふもふな毛並みを撫でると気持ちいい。そして、ミケにゃんからレモンの香りとお日さまの匂いがして癒される。
わたしに頭を撫でられたミケにゃんもうっとりと幸せそうな顔をしている。
「ミケにゃんは撫でられると嬉しいにゃん!」
「わたしもミケにゃんちゃんを撫でると癒されるよ」
笑い合うわたしとミケにゃんに唯奈ちゃんの優しい歌声がふわりと舞い降りる。なんとも言えない幸せな時間だ。
大きな舞台ではなくて手作りの小さな舞台で歌を歌う唯奈ちゃんではあるけれど、その表情は幸せそのものだった。
唯奈ちゃんありがとう。
(人と違っていてもかまわない、君は君の夢を追いかけてね。自分を押し殺すのはやめよう、ほんとうの君を分かってくれる人はきっと、どこかにいるよ)
唯奈ちゃんの歌からそんな想いがわたしの胸に伝わってきた。きっと、唯奈ちゃんは自分の為にそして、歌を聴いているわたし達に向かって歌っているのだろう。
スポットライトを浴びているかのように唯奈ちゃんはキラキラ輝いていた。
「みんな、わたしの歌を聴いてくれてありがとう」
唯奈ちゃんはマイクを強く握り挨拶をした。
わたし達は唯奈ちゃんに盛大な拍手を送った。
「唯奈ちゃん、素敵な歌をありがとう」
シロッコがそう言ってもう一度拍手をした。その拍手に続きわたし達も拍手をした。唯奈ちゃんは大きな拍手に包まれた。
「今日は楽しかったよ」
唯奈ちゃんは、わたしの左隣の席に腰を下ろしながら言った。
「わたしも唯奈ちゃんの歌が聴けて幸せだったよ」
「えへへ、ありがとう。そう言ってもらえると照れてしまうけれど嬉しいよ~」
唯奈ちゃんは頭をぽりぽり掻いた。
「ミケにゃんも感動したにゃんよ」
わたしの右隣に座るミケにゃんが唯奈ちゃんの方に体を向けて言った。
「ありがとう、ミケにゃんちゃん。嬉しいよ~」
唯奈ちゃんはとびっきりの笑顔を浮かべた。
「ミケにゃんちゃんはね、感動して涙まで流してくれたんだよ」
「わっ! ほ、本当なの? ミケにゃんちゃんそれはもう嬉しいよ~」
「うん、ミケにゃんは感動して思わず涙をぽろぽろ流してしまったにゃん」
ミケにゃんは照れたように笑い頭をぽりぽり掻いた。唯奈ちゃんも「ありがとう」と言って頭をぽりぽり掻いた。
そのミケにゃんと唯奈ちゃんの姿は微笑ましかった。




