唯奈のお部屋
「ここがわたしの部屋なんだね」
唯奈ちゃんは部屋の中を見渡しながら言った。
わたしの部屋と同じ間取りだった。掃除が行き届き、綺麗なお花が飾られていた。ベッド、机、本棚がありクローゼットの中に洋服などの荷物をしまうようになっている。
「うん、そうだよ。なんだかイギリスの女の子のお部屋って雰囲気でしょ」
わたしはにっこり笑いながら言った。シロッコの代わりにわたしがお部屋の案内をしているのだった。
「うん、とても可愛らしいお部屋だね。でも、満里奈ちゃんはイギリスの女の子のお部屋を見たことってあるの?」
「えっ! あ、ううん、見たことないよ。何となくこんな感じかな~って思っただけだよ」
「うふふ、そうなんだね~この壁紙可愛らしいね」
唯奈ちゃんは水色とピンク色のシマシマの魚が泳いでいる壁紙の前で立ち止まった。
「わぁ~海の中にいるみたいだね。わたしのお部屋はチューリップ柄なんだよ」
「いいな。チューリップ柄って女の子らしいもんね」
「うん、チューリップ柄とっても気に入っているよ。でも、お魚柄も癒されていいな~」
わたしと唯奈ちゃんは部屋の中を眺め女子トークをした。
「しばらくわたしはこの部屋で生活をするのか」
笑っていた唯奈ちゃんの表情が引き締まった。
「わたしもここに来た時同じことを感じたよ。でも、すぐに慣れたよ」
そう答えながらシロッコに導かれこのもふもふ癒しの空間アパートカフェへ来た日を思い出した。と、言ってもつい最近のことではあるのだけれど……。
「今は学校のことなんて忘れてこの部屋でゆっくりしようかな」
唯奈ちゃんはふぅーと息を吐きそして、にっこりと微笑みを浮かべた。
「それが一番だよ」
「なんだか満里奈ちゃんの方が学校の先生みたいに見えるね」
唯奈ちゃんはクスクスと笑った。
「そうかな?」
このもふもふパラダイスではわたしが先輩だもんね。
わたしが唯奈ちゃんに教えてあげていると思うとなんだか可笑しくて笑みが零れる。
だって、従姉の唯奈ちゃんは年齢も上で学校では教師と生徒という関係なのでいつもわたしが教えてもらう立場なのだから。
「ねえ、満里奈ちゃんどうして笑っているのかな?」
唯奈ちゃんがわたしの顔をじっと見て言った。
「えっ? 笑っているかな?」
「うん、めちゃくちゃ笑っているよ」
「あはは、バレたか。だって、わたしが唯奈ちゃんに何かを教えてあげることって滅多にないんだもん。この世界ではわたしが先輩だと思うと可笑しくて」
わたしはニッと笑った。
「じゃあ、この世界では満里奈先輩だね。満里奈先輩よろしくお願いします」
唯奈ちゃんもニッと笑った。
「うふふ、満里奈先輩に任せてね」
わたしはふふんと胸を張って見せた。
「満里奈ちゃんってばちょっと偉そうじゃない」
「満里奈ちゃんじゃないよ。満里奈先輩なんだからね」
「もう満里奈先輩ってば~」
唯奈ちゃんはぷっ、ぷぷぷって笑った。
「そんなに面白いかな~」
「いや、面白いと言うか満里奈ちゃんってばここぞとばかりに先輩風を吹かすんだもんね。あ、満里奈先輩だったね」
「唯奈ちゃん! 先輩風ってちょっとひどくな~い」
わたしは頬をぷくぷくと膨らませた。
「満里奈ちゃんほっぺたが膨らんで可愛いよ」
唯奈ちゃんはわたしのほっぺたを人差し指でツンツンしてくる。
「あ~あ、やっぱりわたしの方が子供みたいだね。ふん! いいもんね~だ」
わたしは、そう言ってほっぺたを最大限にぷくぷくと膨らませた。
「満里奈ちゃんそんなに怒らなくてもいいんじゃないの」
「ふ~んだ!」
なんて言いながら頬を膨らませているけれどなんだか幼い日に戻ったみたいで楽しいなと思った。
大人になった唯奈ちゃんは夢や希望を捨て去り遠くに行ってしまったように思えて寂しかったので、今、また少し近くに感じられてわたしは嬉しかった。




