scene3
海を背に木箱の上に立った。
目の前には怪訝そうな顔をした村人たち。
「なんだかんだ?」
「気の触れた令嬢が本当におかしくなったのか?」
「ヤバいなあいつ…」
ふふ、聞こえてるわよ。
しっかりとね。
ちょっとイラッとしないでもない…けど今は我慢よレイオリア。
「レイオリア様、こっ拳から血が…」
ニーナを見てにっこり笑った。
その笑顔はぎこちなかったかもしれないけど笑顔は笑顔だ。
「皆さん、この海は死んでいません!」
海を指さし高らかに叫んだ。
村人の怪訝な顔がさらに怪訝になる。
「何言ってんだ。こんなヘドロだらけの海、死んでるに決まってるだろ」
「もう何年も魚なんか捕れねえんだぞ」
「ゴミをちょっと拾ったぐらいで何になる!」
ああ、そうね。
そう思っているわよね。
だからこそ、この海の状態。
でもね。
「この海は、また魚が釣れる海になりますわ!」
「何言ってんだ人をわざわざ呼び出して、
そんな夢物語、聞かせるために呼んだんか?」
「俺たちはな、落ちぶれた令嬢の遊びに付き合ってる暇は無いんだよ」
「落ちぶれたじゃなくて気が触れたか?」
ひ、ひどい言われようね。
流石にちょっとショックだわ…。
心の中でがっくりと膝をついた。
でも、あきらめない。
熱意を持って説明すればわかってもらえるはずよ
「皆さん!ゴミを掃除して、海に空気を入れていけば…」
「気の触れた令嬢に付き合うほど暇じゃないんだよ」
その一言がきっかけになった。
ひとり、またひとり。
人が去っていく。
それでも演説を続けた。
「…だからこれを繰り返していくことでこの海は必ず魚で溢れる海になりますわ!」
そこまで言い終わったとき私の前には誰もいなかった。
流石に…きついわね…。
「レイオリア様!感動です。そんな事を考えてたんですね。やりましょう!やり遂げましょう!」
「ニーナありがとう」
ニーナだけは最後まで聞いてくれたようね。
数少ないけどわかってくれる人はいる。
そうね。
例え今すぐに伝わらなくても一人でも、理解してくれる人がいるのなら…。
やり続ければ村の人もきっと…。
パチパチパチパチ
その時、手を叩く音が聞こえた。
音のする方を見ると細身の男性が一人座っていた。
歳は私とそう変わらない感じかしら?
これは一人目の理解者なのではと思ってしまう。
やっぱり話してみるものね。
青年にそっと近づき声をかける。
「あなた海を、この海を魚でいっぱいにしてみたいと思いませんか?」
私の問いに青年は表情を変えることなくじっとこちらを見ていた。




