第一話 魚が釣れない海はない scene1
辺境への道のりは遠かった。
そして断罪で辺境へ送られる令嬢に対して世間は冷たい。
見送りなんて誰もいないしついてきたのは、メイドが一人だけ。
まあ、そのほうが気楽で良いのだけど。
ただひたすらに釣りのことだけを考えていられるのだから。
そんな私に唯一ついてきたメイドのニーナが心配そうに私を見ていた。
「レイオリア様、大丈夫です。必ず帰れますから元気を出してください」
ニーナの気持ちはうれしかったが、不要な心配だ。
そもそも帰りたくない。
これから来る海の景色とその先の世界。
それらに思いを馳せ、高揚感でいっぱいなぐらいだった。
「ニーナ、私は大丈夫…海があるのだから」
私の言葉にニーナが涙を流す。
「あまりのつらい出来事にレイオリア様がおかしな事を…」
おかしな事など言った覚えはないのだが…。
「お、おかしくない、おかしくないんですよ」
慌てて否定してみたが、伝わった気がしない。
その時ふっとそっとよい香りがした。
潮の香り…。
ふふ、これよこれ。
王都では感じられないこの香り。
「ちょっと止めて」
「ど、どうしましたレイオリア様」
ニーナが心配そうな顔をした。
「…トイレ…ですか…?」
心配して遠慮がちに聞いてくれるのはありがたいのですが…。
「違いますわ」
馬車の扉を開け外に出る。
一瞬言葉を失った。
目の前に広がるのはどこまでも続く青。
「うーみー!!」
思わず叫んだ。
「最高ー!!」




