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 『二度目の人生も死ぬ予定ですが、死ぬつもりはありません』   転生。前世はキャバ嬢、今世は処刑予定の悪役令嬢。  作者: みつばち。


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15/17

第15話 祝賀会にむけて


帰りの。

馬車の中。

ソランは。

窓の外を。

眺めていた。

茜色の。

夕暮れ。

白い。

雪。



「…………」



窓硝子に。

うっすらと。

自分の顔が。

映っている。

眉間に。

少し。

皺。

六歳には。

あまり。

可愛くない。

でも。

今は。

仕方ない。



「…………」



馬車が。

進むたび。

景色が。

ゆっくりと。

後ろへ。

流れていく。



「…………」



なのに。

頭の中には。

先ほどの。

光景が。

まだ。

残っていた。

母親。

姉。

妹。

楽しそうに。

話していた。

母親が。

笑って。

妹の。

少し濡れた髪を。

拭いていた。

姉は。

今日あったことを。

楽しそうに。

話していた。

ただ。

それだけ。

本当に。

それだけの。

光景。

何も。

おかしくない。

それなのに。



「…………」



何だったのだろう。

あの時。

胸の奥に。

小さな。

何かが。

引っかかった。

何かを。

思い出しそうな。

そんな。

感覚。

でも。

結局。

何も。

思い出せなかった。

今も。

同じ。



「…………」



なにも。

分からない。

考えても。

引っかかった。

ということしか。

分からない。

そもそも。

本当に。

何か。

引っかかっているのか。

それすら。

曖昧に。

なってくる。



「…………」




なにか。

思い出すなら。

思い出して。

ほしい。

思い出さないなら。

せめて。

引っかからないで。

ほしい。

中途半端。

一番。

困る。



「ソラン?」


「…………」



隣から。

声。

ソランは。

顔を。

上げた。

母ミレーヌが。

不思議そうに。

こちらを。

見ていた。



「どうしたの?」


「…………」



また。

同じことを。

聞かれた。

先ほども。

聞かれた。

そして。

答えも。

やはり。

同じ。



「なんでもありません」


「そう?」


「はい」



今度も。

誤魔化した。

わけでは。

ない。

本当に。

分からない。

だから。

説明の。

しようがない。

ミレーヌは。

少しだけ。

心配そうに。

ソランを。

見た。

けれど。

それ以上は。

聞かなかった。



「…………」



なんでもない。

便利な。

言葉。

でも。

今日。

何度。

使っただろう。

少し。

使いすぎな。

気がする。

ソランは。

もう一度。

窓の外へ。

視線を。

戻した。

考えても。

答えは。

出ない。

なら。

今は。

仕方ない。

忘れる。

わけでは。

ない。

ただ。

分からないものを。

分からないまま。

一度。

置いておく。

それしか。

できなかった。



◇



その夜。

窓の外には。

星が。

静かに。

瞬いていた。

その窓辺で。

ソランは。

机に向かっていた。

最初は。

死なないために。

始めた。

ゲームの。

記憶。

思い出したこと。

この世界で。

知ったこと。

少しずつ。

書き足してきた。

目的は。

今も。

変わらない。

死にたくない。

一度目は。

突然だった。

知らない男に。

刺された。

理由も。

分からないまま。

死んだ。

そして。

二度目。

この人生には。

処刑。

あるいは。

暗殺。

そんな。

未来が。

待っているかもしれない。

他にも。

ルートは。

いくつもある。

きっと。

生き残るものも。

あれば。

そうではないものも。

ある。

考えはじめたら。

キリがない。

今は。

十三歳になるまでに。

できるだけ。

土台を。

固める。

それが。

一番。

大切だ。



「…………」



改めて。

並べると。

酷い。

非常に。

酷い。

人生。

二回分の。

死因候補が。

物騒すぎる。

もっと。

普通で。

いい。

寿命。

とか。

老衰。

とか。

そういうので。

お願いしたい。

そのためにも。

知る。

考える。

使えるものは。

使う。

ソランは。

ペンを。

取った。

まず。

レオンハルト。

ゲームの中では。

王道の。

王子様。

優しい。

完璧。

そして。

少し。

寂しいところがある。

ヒロインが。

惹かれるのも。

分からなくはない。

それくらい。

完璧な。

王子様。

だった。

けれど。

実際に。

会った。

完璧な。

笑顔。

完璧な。

挨拶。

六歳とは。

思えないほど。

きちんとした。

受け答え。

その一方で。

緊張を。

隠していた。

外へ。

出たそうにしていた。

雪を見て。

笑った。

自分が。

ヴァレンティア家へ。

誘った時。

嬉しそうに。

笑った。

ゲームでは。

知らなかった。

顔。

ソランは。

書く。

――レオンハルト殿下。

――ゲームで知っている性格だけで判断しない。

――平気そうに見えても、本当に平気とは限らない。



「…………」



最後。

人生訓。

みたいに。

なった。

まあ。

いい。

次。

ユエ。

ゲームでは。

クールな。

冷酷系。

確かに。

冷たい。

ところは。

ある。

今日も。

令嬢へ。

向けた言葉は。

かなり。

鋭かった。

七歳。

怖い。

でも。

それだけでは。

ない。

寒そうなら。

マフラーを。

貸す。

嫌だったこと。

怖かったこと。

言いたければ。

言えばいい。

言いたくなければ。

言わなくていい。

そう。

言った。

冷たいだけ。

ではなく。

優しいところもある。

ソランは。

少し。

考えて。

書く。

――ユエ。

――ゲームでは「冷酷系」。

――冷たいところはある。

――でも、それだけではない。

そして。

一行。

加える。

――ゲームの印象だけで、人を決めつけない。



「…………」



レオンハルトも。

ユエも。

ゲームでは。

攻略対象。

決められた。

台詞。

決められた。

場面。

決められた。

物語。

でも。

今。

目の前にいる。

二人は。

ゲームでは。

見たことのない。

顔を。

普通に。

見せる。

当然。

なのかもしれない。

ゲームは。

この世界の。

すべてを。

映していたわけでは。

ない。

分かっていた。

つもりだった。

でも。

実際に。

会うと。

その意味が。

少し。

変わる。



「…………」



ゲームの。

情報。

足りない。

いや。

恋愛ゲームだ。

仕方ない。

攻略対象の。

幼少期から。

一日の行動。

家庭事情。

交友関係。

好きな食べ物。

嫌いな食べ物。

睡眠時間。

全部。

載っていたら。

それは。

それで。

怖い。

前世の親友。

ひかるなら。

喜んで。

読んだかもしれない。

自分は。

多分。

飛ばした。



「…………」



過去の。

私。

絶対。

飛ばさないで。

今。

困ってる。

切実だった。

しかし。

本当に。

載っていたのか。

それすら。

謎。

過去の自分へ。

文句を。

言っても。

仕方ない。

次。

婚約。

王太子の。

婚約者。

これまでは。

言葉。

だった。

知識。

だった。

今日。

初めて。

少し。

分かった。

誰と。

話すか。

何を。

借りるか。

どう。

振る舞うか。

自分にとって。

何でもない。

ことでも。

周囲にとっては。

何でもないとは。

限らない。

勝手に。

意味を。

つけられる。



「…………」



面倒。

非常に。

面倒。

前世でも。

人の目は。

あった。

客。

キャスト。

店。

誰が。

誰と。

仲が良い。

誰が。

誰を。

気に入っている。

誰が。

誰を。

嫌っている。

そういうものは。

いつだって。

見られていた。

でも。

売上さえ。

立てていれば。

多少のことは。

言われなくなる。

それに。

店を。

出れば。

空は。

置いていけた。

斉藤優に。

戻れた。

今は。

違う。

お金があっても。

権力があっても。

ずっと。

肩書は。

ついてくる。

見られている。

ソラン・ヴァレンティアを。

どこかへ。

置いて。

帰ることは。

できない。

まして。

王太子の。

婚約者。

それも。

自分。



「…………」



六歳。

重い。

やっぱり。

重い。

もう少し。

軽いものから。

背負わせて。

ほしい。

お菓子の。

籠。

とか。

そのくらいから。

始めて。

ほしかった。

ソランは。

小さく。

息を。

吐いた。

そして。

書く。

――王太子の婚約者として、どう見られるのかを知る。

――貴族社会について、もっと勉強する。

そこで。

ペンが。

止まった。

今日。

もう一つ。

気になったこと。

茶会の。

最後。

あの。

親子。

ペンを握る。

ソランの。

手は。

一瞬。

止まった。



「…………」



何を。

書く?

何が。

気になった?

分からない。

何を。

思い出しそうだった?

分からない。

なら。

書けることは。

一つ。

ソランは。

ペンを。

動かした。

――茶会で、何か気になった。



「…………」



雑。

非常に。

雑。

何の。

役にも。

立たない。

しかし。

消す気にも。

ならなかった。

だから。

そのまま。

残した。

いつか。

分かるかもしれない。

今は。

分からない。

それで。

いい。

ソランは。

ノートを。

閉じた。



◇



それから。

冬が過ぎ。

季節は。

春になった。

特別なことは。

何も。

起こらなかった。

朝。

起きる。

食事。

授業。

礼儀作法。

休憩。

授業。

食事。

寝る。

いつも通り。

だった。

少なくとも。

ソラン自身は。



「…………」



婚約した。

王太子と。

婚約した。

人生における。

かなり。

大きな。

出来事。

だった。

はず。

なのに。

授業は。

なくならなかった。



「ソラン様」


「はい」


「もう一度、お願いいたします」


「…………はい」



姿勢。

歩き方。

挨拶。

視線。

手。

足。

一つ。

一つ。

ヘレナに。

確認される。

婚約したのだから。

少しくらい。

授業が。

減っても。

良いのでは。

そう。

思った。

現実は。

逆。

だった。



「もう一度」


「はい」



増えた。

気がする。

非常に。

納得が。

いかない。

ただ。

ソランの。

日常が。

変わらなくても。

屋敷の中は。

少しずつ。

変わっていた。

廊下を。

使用人たちが。

忙しそうに。

行き交う。

花が。

運ばれる。

料理について。

相談する。

声。

招待客を。

確認する。

声。

婚約を。

祝う。

祝賀会。

その準備が。

少しずつ。

進んでいた。

自分の。

婚約のために。

これだけの。

大人が。

動いている。



「…………」



実感。

したくない時ほど。

実感が。

向こうから。

やってくる。

困る。



◇



その日は。

窓から入る。

春風が。

心地よい。

よく晴れた。

日だった。

授業が。

終わった。

ソランは。

椅子へ。

座ったまま。

小さく。

息を。

吐いた。

疲れた。

非常に。

疲れた。

六歳。

今日も。

頑張った。

誰も。

今。

褒めてくれないので。

自分で。

褒める。

偉い。

私。

とても。

偉い。



「姉様!」


「…………」



元気な。

声。

扉の。

向こう。

ほどなく。

ノアが。

入ってきた。



「姉様!」



二回目。



「聞こえているわ」


「授業、終わった?」


「終わったわ」


「ほんと?」


「本当よ」



ぱっと。

顔が。

明るくなる。



「じゃあ、遊べる?」


「…………」



元気。

非常に。

元気。

こちらは。

礼儀作法で。

疲れている。

というのに。

四歳。

強い。



「少しなら」


「やった!」


嬉しそうな。

顔をして。

ノアが。

駆け出そうと。

した。



「走るな」



別の。

声。

ノアの。

後ろから。

カイルが。

姿を。

見せた。

カイルは。

続ける。



「屋敷の中を走るなって、何回言われてるんだ」


「走ってないよ」


「今、走ろうとしただろ」


「まだ走ってないもん」


「そういう問題じゃない」


「…………」



ノアが。

必死に。

言い返している。

そんな。

二人を。

ソランは。

見つめていた。

いつもの。

カイル。

いつもの。

ノア。

少し。

笑った。

ノアは。

目を。

輝かせながら。

話した。



「今日ね、庭で鳥を見たの!」


「鳥?」


「すごく大きかった!」


「普通の雀だったぞ」


「大きかったもん!」


「雀だ」


「兄上、見てないでしょ!」


「見てた」


「見てない!」


「見てた」


「…………」



どちらでも。

いい。

ソランは。

お菓子を。

一つ。

口に入れた。

甘い。

特別なことは。

何も。

しなかった。

お菓子を。

食べて。

どうでもいい。

話をして。

時々。

笑った。

ただ。

それだけ。



「姉様」


「なに?」



お菓子を。

食べていた。

ノアが。

ふと。

顔を。

上げた。



「お祝いの日」


「ええ」


「僕も、姉様と一緒に遊べる?」


「…………」



ソランは。

少し。

答えに。

詰まった。

祝賀会。

自分の。

婚約を。

祝う。

会。

当然。

自分は。

主役の。

一人。

レオンハルトも。

来る。

招待客への。

挨拶。

会話。

おそらく。

自由に。

遊んでいられる。

時間は。

あまり。

ない。

だから。

簡単に。

遊べるとは。

言えなかった。



「すぐには、遊べないかもしれないわ」


「…………」



ノアの。

顔が。

分かりやすく。

曇った。



「そっか……」


「ノア」


「うん」



しゅん。

としている。

非常に。

分かりやすい。



「…………」



ソランは。

ノアの。

頭へ。

手を。

伸ばした。

柔らかな。

濃紺の髪。

父と。

同じ色。

顔を。

上げた。

灰紫色の瞳は。

母と。

同じ。



「…………」



可愛い。

いや。

違う。

今は。

そこではない。



「でも、時間ができたら一緒に遊びたいわ」



ノアが。

顔を。

上げた。



「ほんと?」


「ええ」


「遊べる?」


「時間ができたらね」


「…………」



また。

少し。

しゅん。

とした。

難しい。

四歳への。

説明。

非常に。

難しい。

期待させすぎても。

いけない。

でも。

悲しませたい。

わけでもない。



「それまで、待っていてくれる?」


「待つ?」


「ええ」



ソランは。

ノアの。

頭を。

撫でながら。

微笑んだ。



「ノアも少し、お兄ちゃんになったものね」


「…………」



ノアが。

瞬いた。



「僕、お兄ちゃん?」


「ええ」


「お兄ちゃん……」



小さく。

繰り返す。

何故か。

噛み締めている。

そして。

胸を。

張った。



「うん! 待てるよ!」


「そう」


「僕、お兄ちゃんだから!」


「そうね」


「ちゃんと待てる!」



得意げ。

だった。

非常に。

得意げ。

四歳。

お兄ちゃん。

という響き。

相当。

気に入ったのだろう。



「…………」



可愛い。

ソランは。

もう一度。

ノアの。

頭を。

撫でた。

本当に。

ノアは。

可愛い。



「姉様?」


「なに?」


「いっぱい撫でるね」


「嫌?」


「嫌じゃない!」



即答。

なら。

問題ない。

もう一度。

撫でる。

ふと。

視線を。

感じた。

カイル。

こちらを。

見ていた。

少し。

笑っている。



「何よ」


「いや」


「なに?」


「仲がいいなと思って」


「姉弟だもの」


「僕も姉様と仲良しだよ!」



ノアが。

すぐに。

入ってくる。



「ええ。そうね」


「兄上も!」


「俺も?」


「うん!」



カイルが。

少し。

目を。

丸くした。

それから。

笑った。



「そうだな」



ノアも。

笑う。

ソランも。

つられて。

笑った。

何も。

特別ではない。

兄。

弟。

自分。

三人で。

お菓子を。

食べて。

どうでもいい。

話をして。

笑う。

ただ。

それだけ。

当たり前の。

時間。

温かい。

家族の。

時間だった。



◇



祝賀会が。

近づいた。

衣装。

確認。

髪飾り。

確認。

挨拶。

確認。

当日の。

流れ。

確認。



「…………」



確認。

多い。

非常に。

多い。

ソランは。

鏡の前に。

立っていた。



「もう少し、顎を」



ヘレナが。

言う。

少し。

上げる。



「上げすぎです」



戻す。



「ほんの少しだけ」



もう一度。

上げる。



「はい。そのくらいです」


「…………」



難しい。

顎。

難しい。

六年間。

普通に。

使ってきた。

はずなのに。

急に。

正解が。

分からなくなった。



「当日は、多くの方がソラン様をご覧になります」



ヘレナが。

言った。



「ヴァレンティア公爵家のご令嬢として。そして、王太子殿下の婚約者として」


「はい」



以前なら。

そういうもの。

その程度に。

受け止めた。

かもしれない。

でも。

今は。

少し。

分かる。

誰と。

話すか。

どう。

笑うか。

何を。

言うか。

何を。

するか。

全部。

見られる。

そして。

意味を。

つけられる。

自分が。

望んで。

いなくても。



「…………」



怖くない。

そう。

言えば。

嘘になる。

面倒では。

ない。

そう。

言っても。

嘘になる。

でも。

ソランは。

鏡の中の。

自分を。

見た。

銀色の。

髪。

濃紺の。

瞳。

六歳の。

ソラン・ヴァレンティア。

王太子の。

婚約者。

でも。

それだけでは。

ない。

ヴァレンティア家の。

娘。

カイルの。

妹。

ノアの。

姉。

そして。

ソラン。

昨日も。

今日も。

そこは。

変わらない。

王太子の。

婚約者に。

なったからといって。

それまでの。

自分が。

消えるわけでは。

ない。

なら。

覚える。

知らないなら。

知ればいい。

間違えたなら。

次は。

間違えないように。

すればいい。

ゲームの。

ソランと。

同じ道を。

歩かないために。

生きるために。

そして。

自分のまま。

いるために。



「ソラン様?」


「はい」


「もう一度、最初からお願いいたします」


「…………」



最初から。

ソランは。

ほんの少し。

遠い目を。

した。

生きるため。

必要。

必要。

なのだ。

多分。



「はい」



姿勢を。

正す。

顎を。

ほんの少し。

上げる。

そして。

もう一度。

歩き出した。

祝賀会まで。

あと。

三日。



「…………」



三日。

短い。

非常に。

短い。

せめて。

あと。

一週間。

いや。

十日。

できれば。

一か月。



「ソラン様」


「はい」


「集中してください」


「…………はい」



延長は。

できない。

らしい。


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