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2度目の守護者は失敗しない  作者: AIの奴隷
魔法少女も多様性

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魔法特急トレインガール

第二章 第二十四話


「はぁっ、はぁっ……! ひょ、ひょっとこさぁん! まだ走るんですかぁ!?」


 桃井星歌の悲鳴が、市街地の屋根の上に響き渡った。


 石川支部を出発してから、二人は建物の屋上を飛び移りながら、誘導網から外れたC級マガツを追い続けていた。すでに何体か仕留めているが、現在追跡している個体は特に足が速く、一般戦闘員では追いつけそうにない。


 前を行く《ひょっとこ》は、屋上に設置された室外機を片手で乗り越えると、着地した勢いをそのまま次の一歩へ繋げた。建物の縁まで駆け抜け、隣の屋上へ飛び移る。その動作には一切の迷いがなく、まるで最初からそこに道があるかのようだった。


 一方の星歌は、魔力で強化した脚力に任せて大きく跳躍した。飛距離は十分。むしろ十分すぎた。


「ひゃあっ!?」


 着地地点を通り過ぎそうになり、慌てて足を突っ張る。何とか止まれたものの、その間にも《ひょっとこ》との距離が開いてしまった。


「桃井、跳びすぎだ。もう少し抑えろ」

「そ、そんなこと言われてもぉ……!」


 星歌は再び走り出した。それにしても、おかしい。自分は身体強化の魔法を使っている。普通の人間とは比較にならない脚力も跳躍力もある。それなのに、前を走る守護者は一向に疲れた様子を見せない。


「ひょっとこさん! なんでそんなに平気そうなんですか!?」

「何がだ?」

「だって、魔力ないんですよね!? もしかして守護者武具の力ですか!?」

「いや。お前に無駄な動きが多いだけだ」

「えええええ!?」

「必要以上に高く跳ぶな。着地するたびに止まっていたら疲れるに決まっているだろう」

「そんな簡単に言われてもぉぉぉ!」


 星歌の抗議を聞き流しながら、《ひょっとこ》は次の建物へ飛び移った。その先、眼下の道路を異形の影が駆け抜けていく。追っていたC級マガツだ。


「桃井、いたぞ」

「はぁっ、はぁっ……! や、やっと追いついたぁ……!」

「先に仕留める。少し離れていろ」


 《ひょっとこ》は屋上の縁を蹴り、マガツの進行方向へ飛び降りた。着地と同時に身を低くし、こちらに気づいて振り返ったマガツの懐へ潜り込む。異形の口が大きく開かれたときには、すでに《月に叢雲》が抜き放たれていた。


 一閃。


 マガツの胴体が斜めに断ち切られ、その巨体が道路へ崩れ落ちた。《ひょっとこ》は刀を収め、周囲を確認してから星歌を見上げた。


「これで、はぐれたC級もだいたい片付いたか」

「そ、そうですねぇ……」


 星歌も屋上から降りてきたが、着地するなり両膝に手をついた。


「つ、疲れたぁ……!」

「少し休むか?」

「休みます! 絶対に休みます!」


 星歌が即答した、その瞬間だった。


 ――ずううううん!!


 腹の底まで響くような轟音とともに、地面が大きく揺れた。


「きゃあっ!?」


 《ひょっとこ》は音のした方向へ顔を向けた。遠くの建物の向こうから、土煙が立ち上っている。


「……何か倒れたな」

「な、何かって……何がですか?」

「それを確認する」

「えっ、ちょっと待ってください! 休憩は!?」

「後だ」

「そんなぁぁぁ!!」


 再び走り出した《ひょっとこ》の背中を、星歌は涙目になりながら追いかけた。


     ◇


 轟音の発生源は、そこからさほど離れていなかった。建物の陰まで来たところで、《ひょっとこ》は足を止め、星歌にも身を低くするよう合図した。


 そこには、巨大な鋼鉄の人型ロボットが倒れていた。頑丈そうな装甲に覆われた両腕と両脚を投げ出し、道路を塞ぐように横たわっている。周囲には砕けた舗装の破片が散乱し、その足元には鉄道の線路が延びていた。


「……何ですか、あれ」

「ロボット……だよな?」

「ですよね!? ロボットですよね!? なんでロボットがこんなところに!?」

「さあな」


 そして、その巨人の前には、もう一つの巨大な影があった。二本の脚で直立する、巨大なカブトムシをそのまま人型にしたようなマガツだった。全身を覆う硬質な外殻が鈍い光を反射し、頭部からは立派な角が伸びている。


「……監視室で確認したA級だな」

「えっ、じゃあ……! A級を担当するのって、クララさんでしたよね?」

「ああ。しかも、あの線路だ。おそらくクララの魔法だろう」

「なるほど! 列車の魔女ですもんね! でも……倒れちゃってますよ? クララさん、大丈夫なんでしょうか?」

「まだ分からん。少し様子を見よう」


 そのとき、マガツが大きく口を開いた。


「ギャハハハハ! どうした鉄くずぅ! さっきまでの威勢はどこへ行ったんだよ!」

「きゃあああああああ!! 喋ったああああああ!!」

「……桃井?」

「ひょっとこさん! マガツが! マガツが喋りましたよ!?」

「ああ、喋ったな」

「なんでそんなに冷静なんですかぁ!?」


 《ひょっとこ》は再びマガツへ視線を戻した。


「あれがA級マガツの特徴だ。B級より強いというのもあるが、何より知能が高い。しかも、理由は分かっていないが、なぜか俺たちと同じ言語を使う」

「えっ、じゃあ、普通に会話できるんですか?」

「一応はな。ただ、まともな話し相手になるとは思わない方がいい」


 星歌は恐る恐る建物の陰から顔を出した。マガツはこちらに気づいた様子はない。


「それで……あのロボット、負けちゃったんでしょうか?」

「さあな。少なくとも、まだ戦闘は終わっていないようだ」


     ◇


 ――時は少し遡る。


 空中に敷かれた線路を、一編成の蒸気列車が走っていた。黒い車体から白い蒸気を噴き上げ、力強い汽笛を響かせながら進むその先頭車両には、クララ・フォーゲルの姿があった。


「さて、そろそろ目的地かな」


 眼下には、避難警報の鳴り響く市街地が広がっていた。A級のいる一帯へ一般戦闘員を近づけるわけにはいかない。彼らは周辺で避難を支え、危険区域への立ち入りを防いでいる。


 その大通りでは、巨大なカブトムシを人型にしたようなマガツが暴れ回っていた。硬質な外殻に覆われた腕が振るわれるたび、道路脇の車両が玩具のように弾き飛ばされる。頭部の角で建物の外壁を突き崩し、舞い上がる粉塵の中から下品な笑い声が響いた。


「ギャハハハハ! どいつもこいつも逃げ足だけは速ぇなぁ!」


 マガツは道路に放置された車を蹴り飛ばし、周囲を見回した。


「チッ、せっかく喰いに来てやったってのによぉ」


 そこへ、頭上から汽笛が響いた。


 ボオオオオオオオッ!!


「あぁ?」


 見上げた先には、空中の線路を走る黒い列車。


「やあ! ずいぶん派手に暴れているじゃないか!」


 先頭車両からクララが声をかけた。


「……何だ、てめぇ?」

「君を討伐しに来た魔女だよ。そろそろ、その悪趣味な遊びを終わりにしてもらおうか!」

「……喰われに来たのか?」

「いいや。君を倒しに来たんだよ!」


 マガツは一瞬きょとんとし、腹を抱えて笑い始めた。


「ギャハハハハ! 討伐だぁ!? てめぇみてぇな小せぇ女が、俺を殺しに来たってのか!」

「そういうことになるな」

「面白ぇ! だったら、まずはてめぇから喰ってやるよ!」

「おっと、それは困るな。私にはまだまだやりたいことがあるんだ」


 クララはにやりと笑い、片手を掲げた。虚空に光り輝く鍵が現れる。その鍵を何もない空間へ差し込むと、光の線が走り、巨大な魔法陣を描き出した。幾重にも重なった光が形を変え、やがて一枚の扉となる。


「我、列車の魔女としてここに再臨する!」


 鍵がひねられ、扉が開く。溢れ出した光の奔流がクララを包み込み、そのまま列車の進行方向へ流れ出した。光は空中を駆け抜け、一本の巨大な線路へと姿を変える。


 その瞬間、どこからともなく勇壮な音楽が鳴り響き始めた。力強い金管楽器の旋律に、腹の底まで響く打楽器の連打。まるで巨大ロボットの合体を盛り上げるためだけに作られたような、やたらと気合いの入った曲だった。


「……あぁ? 何だ、この音楽?」


 マガツが周囲を見回すが、クララは答えない。胸を張り、満面の笑みで前方を指さした。


「さあ! 変形合体、開始だ!!」


 ボオオオオオオオッ!!


 一本だった光の線路が五本へと分岐する。同時に五両の車両が連結を解き、それぞれの線路へ飛び込んだ。


 中央を走るのは先頭車両。その左右には腕となる二両が並び、さらに外側を脚となる二両が疾走する。五両の列車が横一列に並び、汽笛を響かせながら並走した。


 まず動き出したのは中央の先頭車両だ。車体の前後が折り畳まれ、側面の装甲が展開する。車輪が内部へ収納され、金属の骨格がせり出すと、列車は巨大な胴体へと姿を変えた。


 続いて左右の二両が加速する。車体が縦に割れ、内部から巨大な拳が現れた。装甲が回転し、肘関節が形成され、列車だったものが左右一対の腕へと変形していく。


「両腕、合体ッ!!」


 ガキィィン!!


 左右の肩で連結機構が噛み合い、火花が散る。胴体と両腕が一体となった巨体が、光の線路の上を滑るように前進した。


 最後に、外側を走っていた二両が大きく起き上がった。先端から巨大な足が展開し、車輪を収納した車体が折り重なって、分厚い装甲に覆われた両脚へと変形する。


「両脚、合体ッ!!」


 ガゴォォォン!!


 腰部の連結機構が固定された。五両の列車が、一体の巨大な鋼鉄の身体となる。


 光の線路が消え、巨人の両足が大地を踏みしめた。低く構えていた巨体がゆっくりと立ち上がり、最後に首元の装甲が開いて頭部がせり上がる。


 ガシャンッ!!


 顔の装甲が固定され、両眼に光が灯った。


『変形完了。出力正常。システム、オールグリーン』


 胸部の操縦席に機械音声が響いた。


「よぉぉし!!」


 クララが操縦桿を握りしめる。鋼鉄の巨人は両腕を大きく広げ、力強く一歩を踏み出した。


「完成ッ!! レッシャオウッ!!!」


 ドドドドドォォォン!!


 レッシャオウの背後で、突如として巨大な爆発が巻き起こった。爆炎を背負い、堂々と決めポーズを取る鋼鉄の巨人。そのあまりにも唐突な光景に、マガツはしばらく言葉を失っていた。爆発は見た目だけの演出で、熱も衝撃も周囲に及ぼしていない。


「…………おい」

『何かな?』

「……何だ、今の爆発は?」

『実はね、背後に日の丸を浮かべるのと爆発させるのとで迷ったんだが、やはり巨大ロボットには爆発が王道だと思ってね!』

「いや、そうじゃねぇ!! 何で爆発したんだって聞いてんだよ!!」

『だから、巨大ロボットには爆発が似合うだろう?』

「話が通じねぇ!!」


 マガツは頭を抱えた。目の前にいるのは、自分を討伐しに来た敵のはずだ。なのに、どうして自分がこいつの話に付き合わされているのだろう。


『さて、名乗りも済んだことだし、そろそろ始めようか!』

「てめぇが勝手に始めてたんだろうが!!」


 マガツが地面を蹴った。その巨体が一直線に迫る。


『望むところだ!』


 クララが操縦桿を押し込むと、レッシャオウの右腕が唸りを上げて振り抜かれた。金属と甲殻がぶつかる鈍い音が響き、マガツの身体が横へ弾き飛ばされる。


「ぐおっ!?」


 だが、相手もただでは倒れない。着地するなり体勢を立て直し、今度は巨人の側面へ回り込んだ。クララは機体を旋回させ、左腕で攻撃を受け止める。


 ガギィン!


「おっと、なかなかやるじゃないか!」

「てめぇこそ、妙なもん使いやがって!」


 レッシャオウが一歩後退する。その足元では、新たな線路が地面を走るように生み出されていた。マガツが右へ回れば巨人も向きを変え、左へ跳べばそれを追うように線路が延びる。どれほど激しく攻防を繰り返しても、巨人の両足は決して線路から外れなかった。


 何度か拳を交え、距離を取り、再び飛び込む。そんな攻防の中で、マガツは少しずつ違和感を覚え始めた。


「……おいおい。ひょっとして、てめぇ……」


 クララは答えず、巨人を前進させる。その足元に線路が延びた。


「ギャハハ! そういうことかよ!」


 マガツが大きく跳躍した。巨人の拳が空を切る。着地したマガツは線路から大きく離れ、両腕を広げた。


「こっちだ、こっち! ほら、来てみろよ!」

『くっ……!』

「どうしたぁ!? 来られねぇのか!?」

『調子に乗るな!』


 クララが操縦桿を倒す。巨人の足元から新たな線路が伸び、マガツへ向かって進み始めた。


「ギャハハハハ! やっぱりなぁ! てめぇ、その変な線の上しか動けねぇんだろ!」


 マガツは線路の外へ飛び退き、振り下ろされた拳をかわすと、がら空きになった胴体へ強烈な一撃を叩き込んだ。


 ガァァン!!


 巨人の上体が大きく揺れる。


『ぐああっ!』

「ギャハハ! どうしたどうしたぁ! さっきまでの威勢はよぉ!」

『くっ……まだだ!』


 クララは巨人を立て直し、再び拳を構えさせる。マガツはますます愉快そうに笑った。


「いいぜぇ! もっと足掻けよ! どうせてめぇは俺の餌になるんだからな!」

『……ずいぶん自信があるんだな』

「あったりめぇだろ! こんな世界、俺にとっちゃ天国みてぇなもんだ! 弱ぇ奴らを好きなだけ喰って、力を蓄えて……いずれは俺が王になる!」

『王、ねぇ』

「そうだ! 力さえありゃ、あいつらだって屁でもねぇ!」


 クララは操縦桿を握ったまま、わずかに目を細めた。


『あいつらというのは?』

「ギャハハハ! ここで俺に喰われるてめぇに教えても意味ねぇだろ! あの世で永遠に悩んでな!」

『そうか。残念だな』

「何が残念だって?」

『いや、せっかくの機会だから、もう少し面白い話が聞けると思ったんだがね』

「……あぁ? てめぇ、何様のつもりだ?」

『いや、気にしないでくれ。私の勘違いだったようだ』

「舐めやがって……! 俺はなぁ、あいつらなんざいつかまとめて喰ってやるつもりなんだよ! 特に、最近来やがったあの女!」

『……女?』

「ああ! いけ好かねぇ女だ! 何様のつもりか知らねぇが、偉そうにしやがって! あいつだけは、俺が真っ先に喰ってやる!」


 クララはその言葉を聞き逃さなかった。


『その女というのは、何者なんだ?』

「知るかよ! あんな奴のことなんざ!」

『名前くらいは?』

「知らねぇって言ってんだろ! どうでもいいんだよ、そんなもん!」

『なるほど。それは失礼した』

「てめぇ、さっきから何を偉そうに……!」


 マガツが怒りに任せて突進する。クララは巨人の腕を交差させ、その一撃を正面から受け止めた。凄まじい衝撃が装甲を伝わり、鋼鉄の足が線路の上を滑る。


 そして、クララは操縦桿を大きく引いた。


 巨人の体勢が崩れる。そのまま背中から地面へ倒れ込み、周囲の舗装を粉砕した。


 ――ずううううん!!


「ギャハハハハハ!! どうした鉄くずぅ! さっきまでの威勢はどこへ行ったんだよ!」


 倒れた巨人は動かない。その胸部の操縦席で、クララは小さく息を吐いた。


「……さて。そろそろ、いいかな」


     ◇


 建物の陰から様子をうかがっていた星歌は、倒れた巨人の腕が動いたことに気づいた。


「あっ! ひょっとこさん! ロボットが!」

「ああ」


 巨人が片腕を地面につき、ゆっくりと上体を起こす。一度は立ち上がりかけたものの、膝が折れて再び地面に手をついた。やがて両脚を踏ん張り、どうにか身体を持ち上げる。まるで満身創痍の戦士が最後の力を振り絞って立ち上がるかのようだった。


『くっ……まだだ……! 私は……まだ、諦めない!』

「ギャハハ! しぶとい女だな!」

『これが……私の最後の一撃だ! 受けてみろ!』

「最後の一撃ぃ?」


 マガツは線路の外へ歩き、挑発するように両腕を広げた。


「無駄無駄! てめぇはその変な線の上しか動けねぇんだからよ!」


 巨人が走り出す。先ほどまでとは比べものにならないほど鈍い動きだった。足取りは重く、拳を構える動作にも精彩がない。


「ギャハハ! 遅ぇ遅ぇ!」


 マガツは巨人の進路を見極め、線路から離れるように横へ跳んだ。


「ほらよ! これでてめぇの攻撃は――」

『――なーんてね!』


 声が変わった。それと同時に、巨人の動きも一変した。


 ガァン!!


 鋼鉄の足が線路の外へ踏み出す。


「……は?」


 巨人は一切減速しなかった。線路から飛び出した巨体が、そのままマガツへ迫る。


『巨大ロボットが線路の上しか動けないわけないだろう!!』


 振り抜かれた拳が、マガツの顔面を真正面から捉えた。


「ぶごぉっ!?」


 巨体が吹き飛ぶ。だが、クララは追撃の手を緩めない。


『まだまだぁっ!!』


 ガシュン! ガシュン! ガシュン!


 蒸気機関のピストンを思わせる轟音とともに、レッシャオウの両腕が猛烈な速度で往復を始めた。右、左、右、左。鋼鉄の拳が交互に叩き込まれる。


「ぐっ、がっ、て、てめ――!」

『どうしたどうしたぁ! さっきまでの威勢はどこへ行ったんだい!?』


 クララが楽しそうに叫ぶ。操縦席の彼女は、もはや満身創痍の主人公を演じてなどいなかった。満面の笑みで操縦桿を握り、憧れの巨大ロボットによる連続攻撃を心ゆくまで堪能していた。


 最後の一発がマガツを大きく吹き飛ばす。クララはそれを見届けると、巨人の両脚を地面に踏ん張らせた。


『君がもっと色々と喋ってくれたら、もう少し君の命は永らえたんだけどな』

「……あぁ? 何言ってやがる?」


 クララは楽しそうに笑った。


『さあ、フィナーレだ!』


 巨人の胸部装甲が左右へ展開する。その奥に現れた機関から、猛烈な熱気が噴き上がった。


『全火力、一点集中ッ!!』


 轟々と燃え盛る炎が胸部の奥で渦を巻く。マガツが慌てて身体を起こした。


「ま、待て! てめぇ、何を――!」

『必殺ッ!!』


 クララが操縦桿を押し込んだ。


『フルバーストファイヤァァァァァ!!』


 胸部から超高熱の炎が噴き出した。一直線に放たれた炎の奔流がマガツを呑み込み、その姿を一瞬で覆い尽くす。凄まじい熱風が大通りを駆け抜けた。


 そして炎が消えたとき、そこにA級マガツの姿はなかった。


 鋼鉄の巨人が、ゆっくりと拳を掲げる。


『大勝利ッ!!』


 操縦席でクララが歓声を上げた。


 その様子を少し離れた建物の陰から見ていた星歌は、ぽかんと口を開けていた。


「……ひょっとこさん」

「なんだ?」

「あれ……魔法少女なんですか?」

「魔女だろうな」

「魔女って……あんなこともできるんですね……」


 星歌は巨大ロボットを見上げた。鋼鉄の巨人は、胸を張るように堂々と立っている。


「……なんか、すっごく楽しそう」


 《ひょっとこ》は少し考え、それから頷いた。


「まあ……楽しそうではあるな」



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