暴爆と光速
茉莉花と執事の守護者を送り届けた昴は、香仁子を《天駆》の荷台に乗せたまま、自分たちが担当する戦闘区域へと向かっていた。
《光速》によって加速した昴の視界では、道路も建物も次々と後方へ流れていく。崩れた外壁や放置車両を避けながら目的地へ到着すると、昴は前方で繰り広げられている戦闘を確認し、安全な位置で足を止めた。
「かに先輩、着いたよ!」
「おう! ……って、もう着いたのか!」
香仁子が荷台から身を乗り出す。前方では《異常災害対策統括機構》の一般戦闘員たちが、巨大なマガツを相手に防衛戦を繰り広げていた。
マガツの姿は巨大なゴリラを思わせた。異様に長く太い両腕を地面につき、盛り上がった肩から背中にかけては、アルマジロのような分厚い甲殻が幾重にも重なっている。小さな頭部は肩の間に埋もれるようについており、その巨体が動くたびに道路が軋んでいた。
戦闘員たちは複数の班に分かれ、銃撃で注意を引きながら、グレネードを使って進路を制限している。道路の両脇には結界盾が展開され、マガツが建物へ向かわないように誘導していた。
『第二班、右へ回れ! そっちは避難が終わっていない!』
『結界班、正面を補強! 突進が来るぞ!』
通信が飛び交う中、マガツが突然両腕を地面へ叩きつけた。衝撃でアスファルトが砕け、戦闘員たちの足元が大きく揺れる。さらに巨体を低く沈めると、頭部と四肢を甲殻の内側へ引き込み始めた。
背中の装甲が次々と重なり合い、わずかに残っていた隙間まで塞がっていく。
やがて、そこには巨大な球体が完成していた。
「うわっ! 丸くなった!」
「へえ、面白えな!」
香仁子が感心したように声を上げる。
しかし、戦闘員たちにとっては見慣れた光景だったらしい。
『来るぞ! 正面から受けるな!』
球体の下部から太い腕が突き出し、地面を力任せに押した。さらに脚で道路を蹴りつけ、巨体が前方へ動き始める。十分な勢いがついたところで四肢が引っ込み、球体は道路を削りながら猛烈な速度で転がり出した。
進行方向に展開していた結界班が、指揮官の号令に合わせて動いた。
『第一列、角度を合わせろ! 第二列、衝撃に備えろ!』
正面から受け止めるのではなく、複数の結界盾を斜めに配置して衝突を受け流す構えだ。巨大な球体が結界へ激突すると、凄まじい衝撃音とともに盾の表面へ亀裂が走った。しかし、衝撃を横へ逃がすように配置された結界は、球体の進行方向を少しずつ変えていく。
やがてマガツは建物の手前で進路を大きく逸らされ、道路の中央へと転がっていった。
「おおっ! すっげえ!」
昴が目を輝かせる。
「正面から止めるんじゃなくて、受け流したのか。やるじゃねえか!」
香仁子も感心したように笑った。
一般戦闘員たちは勝利を喜ぶこともなく、すぐさま次の行動へ移っていた。損傷した結界盾を後方へ下げ、無事な班が前へ出る。別の班は銃撃でマガツの注意を引き、再び建物へ向かわないよう誘導を始めた。
「すごいね、かに先輩! みんな息ぴったり!」
「ああ。私たちも負けてらんねえな!」
二人が近づくと、戦闘員の一人がこちらに気づいた。
「《光速の魔法少女》と《暴爆の魔法少女》か!」
「そうだよ! あたしたちが引き継ぐね!」
「お疲れさん! あとは私たちに任せな!」
『こちら第二班! 《光速》と《暴爆》の到着を確認!』
『了解! 戦闘班は予定どおり撤退し、C級対応部隊へ合流! 結界班と避難誘導班は任務を継続しろ!』
指示を受けた戦闘員たちが後退を始める。その間にも球体は道路の先で速度を落とし、再び四肢を伸ばして巨体を起こした。
「さて、私たちも始めるか!」
「うん! でも、かに先輩、建物は壊さないでよ! うた先輩に怒られるから!」
「分かってるって! 周りに何もないところでやればいいんだろ!」
香仁子はマガツの周囲を見渡した。結界班が守っている建物から離れた場所に、道路が大きく開けた一角がある。
「昴、あっちに誘導できるか?」
「任せて!」
昴がマガツの前を横切る。
その動きに反応したマガツが、巨大な腕を振り上げた。昴は軽々と攻撃範囲から離れ、再び姿を見せて注意を引く。何度か繰り返すうちに、マガツは彼女を追って道路の中央へ移動していった。
「かに先輩、今だよ!」
「おう!」
香仁子が地面を蹴った。
マガツの懐へ一気に飛び込み、巨体のすぐ目の前まで迫る。
「《暴爆》!」
次の瞬間、凄まじい爆発が起こった。
香仁子自身を中心に巻き起こった爆炎が、至近距離にいたマガツを呑み込む。爆風が道路を揺らし、砕けたアスファルトが周囲へ飛び散った。
爆煙の中から香仁子が飛び出す。
「っしゃあ! どうだ!」
マガツは大きく後退していた。胸元には焼け焦げた傷が残り、身体を支える腕もわずかに震えている。確かな手応えがあった。
「効いてる! かに先輩、効いてるよ!」
爆発の範囲外から様子を見ていた昴が声を上げる。
「だろ! もう一発いくぞ!」
香仁子が再び踏み込もうとしたところで、マガツが右腕を振り上げた。
巨腕が地面へ叩きつけられ、道路が砕ける。香仁子は横へ跳んで直撃を避けたが、続けざまに左腕が薙ぎ払われ、逃げ道を塞がれた。
その瞬間、香仁子のすぐ隣に昴の姿が現れた。
「かに先輩、荷台!」
昴が《天駆》を展開する。香仁子は振り下ろされる腕を見ながら荷台へ飛び乗った。乗り込んだのを確認した昴が《光速》で走り出し、二人はマガツの攻撃範囲から一瞬で離脱した。
「助かったぜ! ……しかし、あいつ見た目以上に素早いな!」
「腕も長いし、近づくの大変だね!」
「だが、爆発は効いてる! このまま押し切るぞ!」
香仁子が荷台から降り、再びマガツへ向き直る。
ところが、マガツは追撃してこなかった。
傷ついた胸元を庇うように腕を引き寄せると、頭部を甲殻の内側へ沈め始めたのである。
「あっ、また丸くなる!」
昴の声とともに、マガツの身体が完全な球体へ変わった。
香仁子が舌打ちする。
「ちっ! 守りに入りやがったか!」
「でも、あれじゃ攻撃できないんじゃない?」
「どうだろうな……」
二人が様子を見ていると、球体の下部から腕が突き出した。
地面を強く押し、さらに脚で蹴りつける。十分な勢いがつくと再び四肢を収納し、マガツは道路を転がり始めた。
「うわっ! こっち来た!」
昴は香仁子を荷台へ乗せて進路から離れる。
球体は二人のいた場所を通過すると、そのまま道路を転がっていった。進行方向には、結界班が守っている建物がある。
「まずい! あっちに行っちゃう!」
「くそっ、止めるぞ! 昴、あいつの正面に回ってくれ!」
「了解!」
昴は《天駆》を牽引したまま球体を追い抜き、建物との間に回り込んだ。
「かに先輩、ここでいい!?」
「ああ! ちょっと離れてな!」
香仁子が荷台から飛び降りると、昴はすぐさま距離を取った。
迫りくる球体を睨みつけ、香仁子は爆発の間合いを見極める。あの勢いを正面から止めるのは難しい。ならば、横から弾けばいい。
「そっちには行かせねえよ! 《暴爆》!」
香仁子が球体の側面へ飛び込み、爆発を巻き起こした。
凄まじい衝撃が道路を揺らし、巨大な球体の進行方向が大きく逸れる。マガツは建物を外れ、道路の反対側へ転がっていった。
「やった! 曲がった!」
「……ちっ、傷一つついてねえな」
爆煙の向こうで転がる球体を見て、香仁子が舌打ちする。甲殻は黒く煤けているものの、ひび割れすら見当たらなかった。
「でも、爆発で動かせるんだね!」
「ああ。中身はともかく、あの殻は相当硬えみたいだな」
やがて勢いを失った球体が四肢を伸ばし、地面を掴んで向きを変えた。
その様子を見て、昴が何かに気づいた。
「ねえ、かに先輩。あいつ、丸まってる間は自分で曲がれないんじゃない?」
「そりゃ、手足引っ込めてるんだからな」
「じゃあ、曲がったり止まったりしたかったら、一回開かなきゃいけないんだ!」
香仁子もマガツを見た。
球体になれば、あの分厚い甲殻が全身を覆う。外からの爆発では傷一つつかなかったが、動きを変えるためには、その装甲を開く必要がある。
「……なるほどな」
香仁子の口元が吊り上がった。
「昴、面白いこと考えたぜ」
「なになに?」
「こいつをあの殻の中に放り込むのさ!」
香仁子が手のひらを差し出すと、そこに赤い光を帯びた魔力の球が浮かび上がった。
「なにそれ?」
「基本魔法の《魔力球》に私の爆発の魔法を込めたんだ! その名も《爆裂球》!」
「わー、すごい! これ、かに先輩が自由に爆発させられるのー?」
「うんにゃ。いつ爆発するかは分かんない」
「えーー!?」
昴の期待に満ちた表情が、一瞬で崩れた。
「それ危なくない!?」
「大丈夫だ! 何かにぶつけりゃ確実に爆発する!」
「じゃあ、ぶつける前に爆発しちゃうかもしれないってこと!?」
「そうとも言うな!」
「えー! ……まあ、あたしなら逃げられるか!」
「だろ? 頼んだぜ、昴!」
「任せてー!」
昴は《天駆》を展開した。
香仁子が《爆裂球》を荷台へ放り込む。昴はすぐさま走り出し、球体となったマガツの進路へ向かった。
しかし、近づいたところで問題が発生した。
マガツは一向に甲殻を開こうとしない。
道路を削り、瓦礫を弾き飛ばしながら、ただひたすらに転がり続けている。
「開かないじゃん!」
昴は球体の横を並走しながら、どうにか隙間ができないか観察した。
だが、装甲は完全に噛み合っており、球体の表面には《爆裂球》を押し込めそうな場所など見当たらない。
しかも、その進行方向には別の建物があった。
「……もう!」
昴はマガツの前方へ回り込み、《天駆》を解除した。
荷台が消え、積まれていた《爆裂球》が道路へ落ちる。
昴はその場から《光速》で離脱し、十分な距離を取って振り返った。
次の瞬間、巨大な球体が《爆裂球》を踏み潰した。
凄まじい爆発が起こった。
地面を這うように広がった炎と衝撃が球体の下部を直撃し、マガツの巨体が宙へ跳ね上がる。
「おおっ!?」
離れた場所で見ていた香仁子が声を上げた。
「飛んだ! あいつ飛んだぞ!」
「かに先輩! これいいかも!」
昴はすぐさま香仁子のもとへ戻り、《天駆》を再展開した。
「もう一個!」
「おう!」
新たな《爆裂球》が荷台に投げ込まれる。
昴は上空のマガツを見上げた。
球体は爆発の勢いで大きく跳ね上がったものの、空中で姿勢を変える様子はない。放物線を描きながら落下を始めていた。
昴はその落下地点を見定めると、《光速》で走り出した。
荷台を目的の位置まで運び、《天駆》を解除する。球が地面へ落ちたのを確認すると、すぐさま爆発範囲から退避した。
落下してきた球体が《爆裂球》を押し潰した。
再び爆発が起こり、マガツの巨体が宙へ舞い上がった。
「おおおっ! また飛んだ!」
「やった! これなら地面を転がらせずに済むよ!」
昴は嬉しそうに笑いながら香仁子のもとへ戻った。
「かに先輩、もう一個!」
「おう! 任せろ!」
香仁子が新たな《爆裂球》を作り出す。
昴はそれを荷台へ受け取ると、すぐさま落下地点へ向かった。
爆発。
球体が跳ね上がる。
落下地点を予測して《爆裂球》を置く。
また爆発。
巨大なマガツが、まるで毬のように空を跳ね回り始めた。
「すっげえ! お手玉じゃねえか!」
「かに先輩、これ楽しい!」
「よっしゃ! その調子でどんどん行くぞ!」
二人はすっかり調子に乗っていた。
しかし、これは単に遊んでいるわけではない。
マガツが地面へ降りれば、再び転がって建物を破壊する危険がある。だからこそ、昴は落下地点を見極め、確実に爆発で跳ね上げ続けていた。
しかも、狙いはそれだけではなかった。
「ほらほら! 早く手足出して方向変えないと一生地面に降りられないよー!」
昴が空中の球体へ呼びかける。
「そうだぞ! いい加減諦めて開きやがれ!」
香仁子も声を張り上げた。
甲殻さえ開けば、その隙間へ《爆裂球》を放り込める。
そうすれば、どれほど頑丈な装甲でも関係ない。内側から爆発させてしまえばいいのだ。
ところが、マガツは一向に甲殻を開かなかった。
爆発で跳ね上がり、落下し、また爆発で跳ね上がる。その繰り返しにもかかわらず、球体のまま耐え続けている。
「くっそー! しつこいな! いい加減開けよ! しつこい男は嫌われるぞ!」
「えー、あいつオスなの?」
「いや、知らん」
「知らないんだ!?」
昴は思わず空を見上げた。巨大な球体は相変わらず甲殻を閉じたまま、次の爆発を待つように落下してくる。
「ほら、昴! 次の球だ!」
「はーい!」
昴は《爆裂球》を受け取り、再びマガツの落下地点へ向かった。
何度目かの爆発で球体が大きく横へ弾かれたときも、昴は即座に軌道を見極め、次の《爆裂球》を置いた。着地の直前に爆発が起こり、巨体は再び空へ押し戻される。
周囲の一般戦闘員たちも、いつしかその光景に目を奪われていた。
「……なあ、あれ何やってるんだ?」
「マガツを……空中で足止めしてるんだと思う」
「足止めって、あんな方法があるのか?」
「俺に聞くなよ……」
彼らの視線の先では、巨大な球体が何度も何度も宙を舞っていた。
結界班が警戒を続ける中、避難誘導班から周辺の避難完了が報告される。それでも昴は手を止めなかった。マガツを地面へ降ろせば、また何が起こるか分からない。
「かに先輩、次!」
「おう!」
爆発。
「もう一個!」
「ほらよ!」
爆発。
「まだ開かないね!」
「しぶとい野郎だ!」
さらに爆発。
最初のうちは元気いっぱいだった香仁子も、次第に表情を険しくしていった。
《爆裂球》を作るたびに魔力が消費される。しかも、相手はB級マガツだ。一度の爆発で確実に跳ね上げるには、それなりの威力が必要になる。
何十回と繰り返していれば、消耗しないはずがなかった。
「……あいつ、しぶといな」
香仁子が額の汗を拭う。
「かに先輩、大丈夫?」
「大丈夫だ! こうなったら魔力尽きるかあいつが根負けするか勝負だ!」
「おおっ! かに先輩、かっこいい!」
「だろ!?」
香仁子は気合いを入れ直し、再び《爆裂球》を作り出した。
昴はそれを荷台へ乗せ、空中のマガツを追いかける。
爆発。
また爆発。
さらに爆発。
そのたびに巨大な球体が跳ね上がり、落下し、再び跳ね上がる。
もはや二人が最初に考えた作戦など、ほとんど形を失っていた。
甲殻を開かせ、その内側へ《爆裂球》を放り込む。
目的は変わっていない。
ただ、そのために始めたはずのお手玉が、いつまで経っても終わらないのである。
「ほらー! いい加減開きなよー!」
昴が空中の球体へ叫ぶ。
返事はない。
「かに先輩、あいつ全然言うこと聞かない!」
「マガツが言うこと聞くわけねえだろ!」
「そっか!」
納得した昴は、次の《爆裂球》を運びに走った。
香仁子はその背中を見送りながら、膝に手をついて大きく息を吐いた。
「はぁ……はぁ……もう魔力が尽きるのに、あいつ根性あるじゃないか……」
見上げれば、相変わらず巨大な球体が空を舞っている。
甲殻には無数の焦げ跡がついていた。爆発のたびに炎を浴び続けたせいか、表面は黒く煤けている。それでも装甲が砕ける様子はなく、丸まった姿勢も崩れていない。
香仁子は歯を食いしばり、残った魔力を集めた。
「くそっ……あと何発必要なんだよ……!」
そのときだった。
昴が空中のマガツを見上げながら、ふと首を傾げた。
先ほどから、マガツの動きがおかしい。
いや、正確には、まったく動いていない。
最初のうちは爆発で跳ね上げられるたびに、甲殻がわずかに揺れたり、手足を出そうとするような動きがあった。
だが、いつからだろう。
そうした反応が、完全になくなっていた。
「……あれ?」
昴は次の《爆裂球》を設置するのをやめた。
巨大な球体が、重力に従って地面へ落ちてくる。
激しい衝撃音とともに道路へ激突し、アスファルトを砕いた球体は、勢いのまま少し転がった。
そして、止まった。
甲殻は開かない。
腕も脚も出てこない。
それどころか、ぴくりとも動かなかった。
昴はしばらく様子を見ていたが、やがて香仁子のもとへ戻った。
「おい、どうしてお手玉やめたんだよ! まだ開いてないだろ!」
「ねぇ、かに先輩。あいつ死んでない?」
「へ?」
香仁子は思わず間の抜けた声を出した。
昴は道路の中央で動かなくなった球体を指さす。
「さっきから全然動かないし、落ちてくるときも何もしなかったんだよね」
「そりゃ、丸まってるんだから動けねえだろ」
「でも、最初は落ちるときにちょっと揺れたりしてたよ? 今はずーっと同じ形のままだし」
「…………」
香仁子が改めて球体を見た。
確かに、マガツはまったく反応していなかった。
どれほど高く跳ね上げられようと、どれほど激しく爆発を浴びようと、甲殻を開く気配すらない。
それどころか、先ほどからは自分の身体を動かそうとする様子さえ見せていなかった。
「……おい、まさか」
「多分、途中で爆発の熱で蒸し焼きになったんじゃないかな?」
昴があっけらかんと言った。
香仁子は口を開けたまま固まった。
考えてみれば、あのマガツは何度も何度も爆発を浴び続けていた。しかも、身体を覆う甲殻はほとんど隙間のない球体を形成している。
外側の装甲は無事でも、内側まで無事とは限らない。
爆発の熱が繰り返し伝わり、逃げ場のない内部に蓄積されていたとしたら。
「…………」
「…………」
二人はしばらく無言で球体を見つめていた。
「……かに先輩?」
昴が香仁子の顔を覗き込む。
「…………勝ったからよし」
香仁子は、そう言って親指を立てた。
「うん! 勝ったからよし!」
昴も満面の笑みで親指を立てる。
こうして、B級マガツとの戦いは幕を閉じた。
最後まで甲殻を破ることはできず、当初の作戦も成功しなかった。
ただ一つ確かなのは、二人が勝利したということだった。
そして、その勝利のために費やされた大量の魔力と爆発が、いったい何発目から死体を跳ね上げていたのか。
それを知る者は、誰もいなかった。




