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2度目の守護者は失敗しない  作者: AIの奴隷
魔法少女も多様性

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列車の魔女は浪漫を運ぶ

第二章 第十五話 列車の魔女は浪漫を運ぶ


福井の港に着いてから、しばらく経った。


星歌たちが聞かされているのは、ここで海外から来る魔女と合流するということだけだった。アメリカから来たエヴァに続く、二人目の海外組。白石は当然詳しい資料を受け取っているらしいが、本人と会うのは今日が初めてだという。


「それで、その人はどこから来るんですか?」

「ドイツよ」

「ドイツ」


星歌は海を見る。


「……ここ港ですよね?」

「福井のね」

「外国から来るなら、空港とかじゃないんですか?」

「本人からここを指定されたの」

「船ですか?」

「さあ」

「白石さんも知らないんですか!?」

「移動手段については聞いてるけど、私も実際に見るのは初めてなのよ」


どういうことだろう。


星歌が首を傾げていると、隣で昴が「あ」と声を上げた。


「なんか聞こえない?」

「何が?」

「ほら」


全員が黙る。


遠くから、低く規則的な音が響いていた。


ガタン、ゴトン。

ガタン、ゴトン。


「……電車?」


猫が小さく呟いた。


「いやいや、ここ港だよ?」


香仁子が笑う。


だが、音は確実に近づいている。


ガタン、ゴトン。

ガタン、ゴトン。


やがて、もう一つの音が重なった。


――ポォォォォォッ!


「汽笛!?」


星歌たちが一斉に海を見る。


最初に見えたのは煙だった。


水平線の向こうから黒い煙が立ち昇っている。その下に、黒い巨体があった。


蒸気機関車だった。


「…………」


誰も声を出さない。


海の上に線路が伸びていた。


何もなかった海面へ、機関車が進むたびに二本のレールと枕木が次々と形成されていく。その上を巨大な動輪が回転し、煙突から黒煙を吐き出しながら、蒸気機関車が真っ直ぐ港へ向かってくる。


「「「「「「銀河鉄道????!!!」」」」」」


魔法少女六人の声が綺麗に重なった。


「いや、違うでしょ!」


星歌が自分たちで言っておきながら否定する。


「でも海の上走ってるよ!?」

「銀河じゃないです!」

「そこ!?」


昴と星歌が騒いでいる間にも、蒸気機関車は港へ近づいてきた。


海上から岸へ向かって線路が伸び、巨大な車体がゆっくりと速度を落としていく。蒸気を噴き出しながら停車すると、先頭車両から一人の女性が身軽に飛び降りた。


こちらを見渡し、にっと笑う。


「よう! 元同盟国が来たぜ、列車でな!」

「第一声それでいいんですか!?」


思わず星歌が突っ込んだ。


女性はまったく気にした様子もなく笑っている。


白石が一歩前へ出た。


「あんたが日本側の案内役か?」

「ええ。白石真帆です。あなたがクララ・フォーゲルさんですね」

「Ja。クララ・フォーゲルだ。よろしく頼む」


二人は短く握手を交わした。


白石もクララと直接会うのは初めてらしく、そこに旧知のような親しさはない。あくまで事前に互いの情報を知らされていた者同士の挨拶だった。


「みんな、紹介するわ。ドイツから来た《列車の魔女》、クララ・フォーゲルさんよ」

「よろしくな!」


クララはそう言うと、自分が乗ってきた蒸気機関車を親指で示した。


「せっかくだ。乗ってみるか?」

「乗ります!」


真っ先に答えたのは昴だった。


「即答!?」

「だって海の上走ってきたんだよ!?」

「それは私も気になりますけど!」

「なら決まりだな。全員乗れ!」


結局、星歌たちは揃って客車へ乗り込むことになった。


◇


汽笛が鳴る。


巨大な動輪が回り始め、蒸気機関車は港を離れた。市街地へ突っ込むような真似はせず、線路は再び海へと伸びていく。


窓の外を流れるのは、日本海。


その上を蒸気機関車が走っている。


「すごーい!」


昴が窓に張り付いていた。


「本当に海の上だ!」

「落ちないでくださいね」


鏡子が穏やかに声をかける。


「大丈夫大丈夫!」

「そう言ってる人ほど落ちるんだよ……」


猫が心配そうに昴を見ていた。


香仁子は反対側の窓から海面を覗き込み、茉莉花も興味を隠せない様子で外を眺めている。その隣には執事がおり、少し離れた席にはひょっとこも座っていた。


白石だけは端末を確認しながら、時折クララへ視線を向けている。


「ところで白石さん」

「何?」

「どうしてクララさんが今回の視察メンバーに選ばれたんですか?」


星歌としては純粋な疑問だった。


クララがドイツの魔女であることは分かった。しかし海外に魔法少女や魔女が何人いるのかは知らない。その中から、なぜクララなのか。


白石は少しだけ間を置いた。


「安かったからよ」

「はい?」

「この人、自力でドイツから日本まで来られるの。航空券を用意する必要がないのよ」


星歌がクララを見る。


クララは気にした様子もなく笑った。


「合理的でいいじゃないか」

「選考理由がものすごく現実的!!」

「組織だって予算は有限なのよ」

「夢がない!」

「何を言う。これだけ夢のある乗り物で来てやったんだぞ」

「そういう問題じゃないですよ!」


その時、昴が客車の先頭側を指差した。


「ねえクララさん。これって空も走れるの?」

「ああ」

「ほんと!?」

「線路を上へ伸ばせばいい」

「飛べるんだ!」

「飛ぶんじゃない。登るんだ」

「同じじゃない?」

「違う」


クララの声が急に真剣になった。


「空を飛ぶんじゃない。空へ向かって敷いた線路を、蒸気機関車が登るんだ」

「そこ重要なの?」

「重要だ」

「クララさんって面倒くさい人ですね」

「褒め言葉として受け取っておこう」

「褒めてませんよ」


そんなやり取りをしているうちに、クララが運転席へ戻っていく。


気になった星歌たちも後を追った。


そこで目にしたのは、クララが火室の様子を確認しながら石炭を放り込んでいる姿だった。


「……何してるんですか?」

「見れば分かるだろ。石炭を焚べてる」

「それ、どこから持ってきたんですか?」

「私の魔法で作ってる」

「石炭まで作れるんですか?」

「こいつを走らせるために必要だからな」


クララは火室の中を覗き込み、次の石炭を放り込んだ。


ただ適当に投げ込んでいるわけではない。燃えている場所を確認し、火床の状態を見ながら投入する位置と量を細かく変えている。


「どこに入れても同じじゃないの?」


昴が覗き込もうとして、クララに手で制された。


「全然違う。火床全体を見ろ。燃えている場所、弱くなっている場所、石炭が厚すぎる場所。適当に放り込めば燃焼効率が落ちて蒸気圧も下がる」

「難しいんだ……」

「当然だ。特にこれから坂を登るならな」

「坂?」

「空へ行きたいんだろ?」


クララが笑った。


「なら、ここからが腕の見せ所だ」


やがて海上を真っ直ぐ伸びていた線路が、緩やかに上を向き始めた。


蒸気機関車が坂へ差しかかる。


それまで一定だった走行音が少しずつ変わり、機関車は力強く煙を吐きながら高度を上げ始めた。


クララは火室と計器を交互に確認し、石炭を焚べ続ける。坂へ入ったからといって、魔法が勝手に出力を合わせてくれるわけではないらしい。


「火を弱らせれば速度が落ちる。勾配の途中で蒸気が足りなくなれば、そのまま登れなくなるぞ」

「えっ」


猫が不安そうな声を上げた。


「登れなくなったらどうなるの……?」

「下がる」

「嫌ぁ!?」

「だから下がらないように焚いてるんだろうが!」


クララは楽しそうだった。


猫にとっては笑い事ではない。


「もっと急角度で一気に上がれないんですか!?」


星歌が聞くと、クララは即座に首を振った。


「無理だ。蒸気機関車は急勾配に弱い」

「魔法ですよね!?」

「蒸気機関車だからな」

「海の上に線路作れるのに、坂道には弱いっておかしくないですか!?」

「海は平らだろう?」

「そういう問題じゃない!!」


それでも機関車は確実に高度を上げていく。


クララが火の状態を読み、必要な場所へ石炭を入れ、蒸気圧を保つ。その操作に応えるように巨大な動輪が回り続け、やがて海は遥か下へ遠ざかった。


昴が大喜びで窓へ走る。


香仁子もその後を追い、猫は逆に窓から離れた。鏡子はそんな猫の隣へ座り、茉莉花も眼下に広がる景色へ目を奪われている。


星歌も景色そのものには素直に感動した。


ただ、一つだけ気になる。


「クララさん」

「なんだ?」

「もっと便利な乗り物にしようとは思わなかったんですか?」

「例えば?」

「新幹線とか。速いし、いっぱい乗れるし」

「新幹線に石炭を焚べられるか?」

「焚べませんよ」

「煙突から煙は?」

「出ません」

「巨大な動輪は?」

「ないです」

「では駄目だ」

「判断基準そこなんですか!?」

「当然だろう」


クララは胸を張った。


「これがドイツ人魂だ!」

「絶対クララさん個人の趣味ですよ!!」


便利さより蒸気機関車であることが大切らしい。


星歌はこのドイツ人について、一つだけ確信した。


面倒くさい。


そして本人は、その面倒くささを心の底から楽しんでいる。


◇


ひとしきり空の列車旅行を楽しんだ後、一行は福井へ戻った。


全員が降りると、巨大な蒸気機関車も線路も消えていく。


「さて」


白石が全員を見回した。


「この後だけど――」

「白石」

「何?」

「おもちゃ屋はどこだ?」

「……おもちゃ屋?」

「ああ」


クララの目が輝いていた。


「せっかく日本まで来たんだ。本場の変形ロボットを見ずに帰れるか!」

「やっぱり遊びに来てません!?」

「《絆の魔法少女》の視察もする。おもちゃ屋にも行く。両方やればいい」

「正論で押し切ろうとしてる!」


今日の予定に余裕があるのも事実だった。


白石が折れ、一行は近くのおもちゃ屋へ向かうことになった。


そして店に入って数分後、星歌は白石を止めるべきだったと後悔した。


「おお……!」


クララが変形ロボットの棚から動かない。


車から人型へ変形する玩具の箱を手に取り、裏面に掲載された変形手順を食い入るように見ている。


「見ろ、流星!」

「なになに?」

「ここだ! 車両形態の後部が回転して脚部へ移動する! 車輪も隠していない。そのままロボット形態の意匠として使っている!」

「おおー!」

「そしてボンネットが分割されて胸部になる!」

「おおー!」

「分かってるか!?」

「よく分かんない!」

「なぜそんなに楽しそうなんだ!?」


昴は完全にクララと同じテンションになっていた。


クララは別の商品を手に取る。


「こいつもいいな。飛行機から人型か……翼をこう畳んで……なるほど」


箱をひっくり返し、側面を見る。もう一度裏面へ戻し、変形前と変形後を見比べる。


「この設計者は分かってるな」

「何がですか?」

「余ってる部品がほとんどない。車輪だったものはそのまま脚部へ、翼は背面へ、機首は胸部へ移動している。元の形を作っていた部品が、別の形でもちゃんと意味を持ってる」

「そんなところまで見るんですか?」

「そこを見るんだよ!」


クララは真顔だった。


「二つの姿を同じ部品だけで成立させるんだぞ。しかも子供が何度も動かすことを前提に、壊れにくく作らなきゃならない。こんなものを考える人間は天才だ」

「蒸気機関車の時より熱くなってません?」


星歌の言葉は届いていなかった。


クララは商品をカゴへ入れる。


続いて同じ商品をもう一つ入れた。


「あれ?」


星歌が気づく。


「同じの二個入ってますよ?」

「知ってる」

「間違えたんじゃなくて?」

「二つ買うんだ」

「保存用?」

「違う。壊れた時の見本だ」

「見本?」

「一つを遊び倒す。壊れたら、もう一つを見ながら直す。ギアの向きや部品の位置が分からなくなっても、完全な状態の同型機があれば確認できるだろ」

「じゃあ新品の方で遊べばいいじゃないですか」

「壊れたから新品に乗り換えるなど敗北だ」

「玩具に対する覚悟が重い!」

「気に入ったものは直して長く使う。当たり前だろ?」


買い方は豪快なくせに、妙なところで物を大切にする。


星歌がなんとも言えない顔をしていると、少し先から昴が手を振った。


「クララさん! こっち五体合体だって!」

「何!?」

「五体全部くっつく!」

「全部必要だな!」

「待って!」


星歌が止めるより早く、クララは移動していた。


一体ずつでも遊べる五つのメカ。それらが合体して一体の巨大ロボットになるらしい。


クララは箱を一つずつ確認しながら、目を輝かせていく。


「なるほど……一体ずつでも成立しているのに、合体するとそれぞれが別の部位になるのか。いいな!」

「買うの?」

「当然だ」

「五箱ですよ?」

「五体合体だからな」

「それを二セット?」

「当然だ」

「当然じゃないですよ!」


五体合体が二組、カゴへ入った。


その様子を少し離れたところから眺めていた茉莉花は、最初こそ余裕を保っていた。


「まあ、趣味にお金を使うこと自体は珍しくありませんわ」

「お嬢様も以前は――」

「余計なことは言わなくてよろしくてよ」

「まだ何も申し上げておりませんが」

「何を言おうとしたかくらい分かりますわ!」


執事を睨んだ茉莉花の前を、玩具を満載したクララのカゴが通過する。


茉莉花の目が止まった。


「……少々お待ちになって」

「なんだ?」

「それ、全部買いますの?」

「ああ」


茉莉花はカゴを見る。


次に棚の値札を見る。


またカゴを見る。


「こちらが……こちらで……それが二つ。先ほどの五体合体が二組ですから……」

「お嬢様」

「話しかけないでくださいまし。今、計算していますの」

「左の棚からさらに二箱追加されました」

「増やさないでくださいまし!!」


茉莉花の悲鳴などお構いなしに、クララは次の商品へ手を伸ばした。


しかし、そこで手が止まる。


同じ商品が二箱だけ残っていた。


「クララさん?」

「これは一つでいい」


星歌は首を傾げる。


「二個買わないんですか?」

「残り二個だからな」

「二個あるじゃないですか」

「私が二つとも買ったら、次に来た奴が買えないだろ」


クララは一箱だけカゴへ入れ、もう一箱を棚へ残した。


「いいものは、たくさんの人間の手に渡らなければならない。私が二つ欲しいからって、誰かがこいつを手に取る機会まで奪う必要はない」

「……クララさん」

「なんだ?」

「急にものすごくいいこと言いますね」

「急にとはなんだ」

「クララさん!」


昴が別の棚から呼んだ。


「こっちは在庫いっぱいあるよ!」

「よし! 二つ持ってこい!」

「節度が消えましたわ!?」


茉莉花の声が響いた。


さらに昴は追加合体できる別売りロボットまで発見した。


「クララさん! これ、さっきのやつとさらに合体するって!」

「何!?」

「こっちが追加のやつ!」

「二つだ!」

「はい!」

「昴ちゃん! これ以上クララさんを煽らないで!」

「なんで? 楽しそうだよ?」

「カゴを見て!」

「いっぱいだね!」

「そういう問題じゃない!」


その後ろでは、茉莉花が完全に金額の計算へ入っていた。


「こちらが一万二千円……二つで二万四千……こちらは五体で……それが二組……追加合体まで……」

「お嬢様、顔色が優れませんが」

「あなたは黙っていてくださいまし……」

「まだ会計前でございますよ」

「分かっていますわよ……!」


やがてクララも満足したらしく、一行はレジへ向かった。


積み上げられた箱を前に店員が一瞬だけ固まったものの、すぐに一つずつ会計を始める。


表示される金額が上がっていく。


茉莉花の顔色が悪くなっていく。


「まだ……上がりますの……?」

「お嬢様、見ない方がよろしいかと」

「ここまで来たら最後まで見届けますわ……!」


最後の商品が読み取られた。


店員が合計金額を告げる。


星歌たちは黙った。


猫は目を丸くし、鏡子も驚いたように瞬きをする。香仁子は素直に「すごっ」と声を漏らした。昴だけは購入した玩具の山を見て楽しそうにしている。


クララは平然とカードを取り出した。


「Ja。これで」

「待ってくださいまし」


茉莉花の声が震えた。


「それを……全部……玩具に……?」

「ああ」

「一度のお買い物で……?」

「ああ」

「しかも、ご自分のお金で……?」

「当然だ。私の趣味になぜ国の金を使う?」

「そこはちゃんとしてますのね……!」


茉莉花の身体がふらりと傾いた。


「お嬢様」


隣にいた執事が、慣れた動きでその身体を受け止める。


「茉莉花さん!?」

「わたくし……確かに昔はお金持ちでしたけれど……玩具に一度でそんな金額を使ったことはありませんわ……」

「お嬢様にもまだまだ上がいらっしゃいましたね」

「今それを言いますの……?」

「元、ではございますが」

「二回刺さないでくださいまし……」


茉莉花から力が抜けた。


「お嬢様!?」

「茉莉花さん、しっかりしてください!」


会計を終えたクララが振り返る。


「どうした?」

「あなたの買い物で元お嬢様が倒れたんですよ!!」

「なぜ!?」

「こっちが聞きたいですよ!」


星歌の叫びが店内に響いた。


◇


大量の玩具は、その場でドイツのクララの自宅へ送ってもらうことになった。


「え、持って帰らないんですか?」

「ああ。列車に積んで帰るより、きちんと梱包して送ってもらった方が安心だ。箱が潰れたら困るからな」

「そこはものすごく繊細なんですね!?」

「当たり前だ。箱も商品の一部だぞ」

「分かる!」

「流星は分かるか!」

「分かる!」

「頼むからこれ以上意気投合しないで!!」


星歌が頭を抱える。


結局、日本へやって来た海外の魔女との最初の交流は、海と空を走る蒸気機関車に乗り、変形玩具を山ほど買うという、視察と呼んでいいのか分からない一日になった。


だが、いつまでも福井にいるわけにもいかない。


クララとの合流という目的は果たした。次の視察先は石川県。そこにも星歌たちが会う予定の魔法少女と守護者がいる。


「それじゃ、そろそろ石川へ向かいましょうか」


白石の言葉に、星歌たちがそれぞれ返事をする。


「石川か」


クララが当然のように会話へ入ってきた。


「クララさんも来るんですか?」

「何を言ってる。私は《絆の魔法少女》を見に来たんだぞ。まだほとんど遊んでいただけじゃないか」

「自覚あったんですね!?」

「当たり前だ!」


クララは笑うと、白石へ視線を向けた。


「石川までなら私が乗せていってやる」

「それは助かるけど、私の車はどうするの? 現地でも必要よ」

「車?」


クララは駐車場に停められている白石の車を見る。


「ああ。なら、それも載せればいい」

「……載せる?」

「列車にな」

「車も運べるんですか!?」


星歌が食いついた。


「何を驚いてるんだ。列車は人と荷物を運ぶものだろ」

「言ってることは普通なのに、クララさんが言うと何かおかしいんですよ!」

「失礼だな」


店を出た一行は、クララが列車を出せるだけの広さがある場所へ移動した。


「この辺ならいいだろ」


周囲を確認したクララが魔法を使う。


何もなかった場所へ線路が伸び、その上に巨大な蒸気機関車が姿を現した。先ほどの試乗とは違い、今回は後方に白石の車を積むための車両も連結されている。


「よし。白石、車をこっちへ」

「分かったわ」


白石が車を動かし、後方の車両へ載せる。クララが固定を確認すれば、石川へ向かう準備は整った。


「列車で車まで運ぶんですね……」

「何を驚いてるんだ。列車は人と荷物を運ぶものだろ」

「言ってることは普通なんですけどね……」


星歌は目の前の蒸気機関車を見上げる。


普通の列車なら、その理屈で何もおかしくない。


問題は、これが今さっき魔法で何もないところから現れた列車だということだった。


「それで、どっちから行くんです?」


星歌が尋ねると、クララは海の方角を指した。


「海だ」

「やっぱり海なんですね」

「街中を走るより楽だからな。それに海なら邪魔するものも少ない。思い切り走れる」

「ああ、そっちが本音ですね」

「当然だ」


全員が客車へ乗り込み、白石も車を降りて客車へ移る。


クララが機関車へ乗り込むと、巨大な動輪がゆっくりと回転を始めた。


――ポォォォォォッ!


高らかな汽笛が響く。


機関車の前方へ新たな線路が生まれ、それは海へ向かって伸びていった。


「出発だ!」


クララの声とともに、蒸気機関車が走り出す。


港を離れ、日本海へ。


海面に次々と生まれていく線路の上を、黒煙を引きながら巨大な機関車が北へ向かっていく。


目的地は石川県。


星歌たちを乗せた列車は、日本海を北上していった。


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