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2度目の守護者は失敗しない  作者: AIの奴隷
失敗しない男と落ちこぼれ魔法少女

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戦闘はいつも突然に

第二話 

「しんらつ!!!」

「……?」


 何がそんなに問題だったのだろう。

 五人を見渡しながら、俺は首を傾げた。

 資料を読んだ限り、全員何かしらの問題を抱えている。


 実地配属までに解決できなかった問題だ。

 つまり、落ちこぼれ。

間違ったことは言っていないはずなのだが。


「いきなり会った人に言います!? 普通!」

 桃井が抗議してくる。

「事実だろ」

「事実なら何でも言っていいわけじゃないんですよ!」

「そうなのか」

「そうです!」

 難しいものだ。

「まあいい」

「よくないですけど!」

「お前たちの資料には一通り目を通した。だが、実際に見てみないことには分からないことも多い」


 俺は五人を見る。


「訓練場へ行くぞ」

「今からですか?」

「ああ。実際に魔法を使ってもらう」


 資料には、それぞれが何をできるか。

 そして何ができないか。

 訓練過程でどのような問題が発生したか。

 それらは一通り記録されている。

 だが、文章と実物は違う。


 どれほど爆発するのか。


 どれほど速いのか。


 どれほど強いのか。


 どれほど脆いのか。


 そして桃井については――何が起きるのか。


 実際に見るのが一番早い。

「今日は始業式だったんですけど……」

「だから早く終わったんだろ」

「そういう問題じゃないです!」


 何か問題があるのだろうか。

 そう思った、その時だった。

 施設内に警報音が響いた。


『警報。瘴気濃度が規定値を超過。次元移動反応を感知』


 五人の表情が変わる。


『先行出動中の戦闘班、結界班、避難班は警戒態勢へ移行してください』


「マガツ……」


 宍戸の顔から血の気が引いた。

 警報が続く。

 まだマガツが出現したとは言っていない。

 瘴気濃度が上昇し、次元移動が起こり得る状態になった。


 その段階で、戦闘班、結界班、避難班は現地へ先行する。


 俺たちは待機だ。

 やがて、再び放送が入った。


『現地より報告。レーダー及び目視によりマガツの出現を確認』


 続けて、情報が更新される。


『D級複数、C級一体』


 D級複数に、C級一体。

 ふむ。

 最悪、俺一人でもなんとでもなるな。

 五人に初めての実戦を経験させるには、悪くない。


「ちょうどいいな」

「何がですか!?」

 桃井が即座に反応した。

「ここで実戦を経験させてもらえないか、司令官に進言してみるか」


「初めてなんですよ!? 私たち!」

「だからだ」

「しかもC級いるじゃないですか!」

「いるな」

「怖いこと言わないでくださいよ!」


 もちろん、俺に出動を決める権限はない。

 現場の状況。

 マガツの数と脅威度。

 他に動かせる戦力。

 それらを踏まえて、誰を出すのか判断するのは司令官だ。


 俺にできるのは進言することだけ。

 通信を入れようとした、その時。

 部屋の扉が開いた。


「司令部より、皆さんに出動要請です」


「早い!!!」

 桃井が叫んだ。

「現地ではすでに住民の避難が始まっています。戦闘班がマガツを足止めし、結界班も展開準備に入っています」


「戦闘班、もう戦ってるの?」

 阿久別が驚いたように聞いた。

「戦闘班や結界班は、瘴気が一定以上に高まった時点で出動するからな」


 俺が答える。


 すると桃井がこちらを見た。

「え? 私たち、瘴気が高まってるなんて聞いてないですけど」

「魔法少女の皆さんには、原則としてマガツの出現が確認されるまで連絡しません」


 職員が説明を引き継いだ。


「瘴気が高まっても、何もないこともありますから」

「そうなんですか?」

「ええ。そのたびに皆さんを待機させていたら、学校生活にも影響が出てしまいます。できるだけ皆さんの学生時代を潰したくないんですよ」


「……なるほど」

「今回はマガツの出現が確認され、司令部から正式に出動要請が出ています」


 五人が顔を見合わせる。

 さっきまでとは空気が違った。

 初めての実戦。

 緊張するのは当然だ。

「行くぞ」

 俺が言うと。

「……はい!」

 桃井を皮切りに、五人が頷いた。

     ◇

 現地に到着した時には、すでに一般人の姿はほとんどなかった。


「こちらです! そのまま避難してください!」


 避難班が残っている住民を誘導している。

 その向こうでは、戦闘班がマガツを押さえ込んでいた。

 銃撃。

 怒号。

 人間より一回り大きな異形が、複数。


 D級。


 動物に近い姿をしているが、口だけが異様に大きい。

 そして、そのさらに奥。

 四肢の数も、身体の構造も、生物として明らかにおかしいものが一体。


 C級。


「本物……」

 桃井が呟いた。

「当たり前だ」

「分かってますよ!」

『結界、展開します!』


 通信が入る。


 次の瞬間、周囲を覆うように結界が展開された。

『結界展開完了。魔法戦闘要員、交戦を許可します』

「全員変身だ」

「「「「「……っはい」」」」」

「そして、行け」

「軽い!」

「出動したんだから戦うだろ」

「そうですけど!」


 それでも五人は前へ出た。

 初陣。

 まずは見せてもらおう。

 資料ではなく。

 こいつらが実際に、どう戦うのかを。

     ◇

「いっけえええええっ!」

 阿久別が魔力を放つ。

 次の瞬間。


 爆発した。


「ぎゃあああああっ!?」

「うわあああっ!?」


 D級マガツが吹き飛ぶ。

 同時に、阿久別と近くにいた桃井も吹き飛んだ。


「なんで私までぇ!?」

「ごめーん!」

「ほんとに爆発するんだ……」


 資料通りだ。

 威力は十分。

 むしろD級相手には過剰なくらい。

 ただし敵味方の区別がない。


「次、私!」

 流星が消えた。

「――速っ」

 次の瞬間には、D級の背後。


 殴る。


 そしてまた消える。


 別方向から蹴る。


 また消える。


 速い。

 とにかく速い。

 敵は反応すらできていない。

 だが。

「なんで倒れないの!?」

 流星が叫ぶ。

 D級は困惑したように周囲を見回しているだけだった。

 資料通り。

 速さと攻撃力が、まるで結びついていない。


「ひっ……!」

 別のD級が宍戸へ迫る。

「こ、来ないで……!」

 逃げる。


 マガツが追う。

「来ないで来ないで来ないで……!」

 追いつかれた。

 腕が伸びる。


「ひゃああああああっ!」


 宍戸が反射的に手を振った。

 それだけだった。


 D級が視界から消えた。


「……ん?」

 視線を動かす。

 戦場の端。

 結界壁へ叩きつけられたD級が、そのままずるずると滑り落ちていく。


「…………」


 俺は事前資料を思い出した。

 身体強化能力――極めて高。

 少々、控えめだったらしい。


「こ、怖かったぁ……」


 本人は泣いていた。


 次。

「防ぐ」

 須久井が前へ出る。

 身体のすぐ近くに氷壁を展開。


 D級が爪を振り下ろす。

 びくともしない。


「おお!」


 桃井が歓声を上げる。


「すごい!」

「当然だ」


 須久井は平然としている。

「なら、あっちも!」

 離れた場所にいる阿久別の前へ氷壁を出す。

 マガツの攻撃。


 ぱりん。


「あ」

「割れたー!?」

「遠いからな」

「冷静に言ってる場合ですか!?」

 これも資料通り。

 そして。


「桃井」

「はい!」

「お前も何かやれ」

「何かって!」

「魔法」

「それが分かったら苦労してないんです!」

「とりあえず使え」

「もう!」


 桃井が集中する。


 魔力が動いた。

 確かに発動した。

「発動しました!」

「何が?」

「私が知りたいです!!!」


 何も起こらなかった。

「…………」

 本当に分からんな。

     ◇

 D級相手なら、問題はありながらも戦えていた。

 阿久別は巻き込む。

 流星は倒せない。

 宍戸は怖がって逃げる。

 須久井は離れた場所を守れない。

 桃井は何をしているのか分からない。

 それでも、D級ならどうにかなっていた。

 だが。


「来るぞ」


 C級が動いた。

 そこからは早かった。

「えっ――」

 阿久別の爆発範囲から離れる。


 流星の速度に反応こそできないものの、攻撃そのものが効かない。


 宍戸は接近される前から逃げる。


 須久井の遠距離の壁を容易く破壊する。


 桃井は。

「発動しました!」


 やっぱり何も起きない。

 連携もない。

 経験もない。

 互いの能力を活かす方法も知らない。

 C級一体を相手に、五人が次々と崩されていく。


「痛ったぁ!」

「ちょ、ちょっと待って!」

「無理無理無理無理!」

「壁が保たない」

「だから私の魔法は何なのぉ!?」

「…………」


 俺はその光景を眺めた。


 ――うわー。

 思ったよりひでぇー。


 俺は腰に差した刀――《月に叢雲》へ手をかけた。

 刀は戦場に入る前から展開してある。

 これ以上は危険か。


 鯉口を切る。


 抜こうとした、その瞬間。


『応援の《砲撃の魔女》、現着しました』

 手を止める。


「なら、いいか」

「何がいいんですかぁぁぁっ!?」

 桃井の叫びと。

 凄まじい轟音が重なった。

     ◇

 数秒だった。


 本当に、それだけだった。

 残っていたD級。

 そして、五人を散々に苦しめたC級。

 すべてが、砲撃によってまとめて吹き飛ばされた。


「…………」


 五人が呆然としている。


 その前へ、巨大な砲筒を従えた女が降り立った。

 《砲撃の魔女》。


「初陣、お疲れさま」

「…………」

「まあ、最初なんてこんなもんでしょ」

 軽い調子でそう言って、彼女は五人を見る。

「怪我は?」

「だ、大丈夫です……」

 桃井が答える。


「ならよかった」

「やさしい……」

「え?」

「いえ!」

 桃井がこちらを見た。

 なんだ。

 その目は。


「この人、初めて会った私たちに落ちこぼれって言ったんですよ」

「事実だろ」

「また言った!」


 《砲撃の魔女》がこちらを見る。

 少し目を細めた。


「久しぶり」

「ああ」

「聞いてはいたけど……本当に戻ってきたんだ」

「ああ」

「相変わらずだね、あんたも」

「そうか?」

「褒めてない」

「そうか」

「そこも相変わらず」


 五人がこちらと《砲撃の魔女》を交互に見る。


『現時点で確認されたマガツはすべて沈黙。戦闘班は引き続き残存個体の捜索を行います。結界班は結界を維持してください』


 通信が入った。

 戦闘が終わったように見えても、任務終了ではない。

 隠れている個体がいないことを確認するまで、戦闘班の捜索は続く。


 その間、結界も維持される。


 そして万が一に備えて、最低一人は魔法戦闘要員が現地に残る必要がある。


「私が残るよ」


 《砲撃の魔女》が言った。

「初陣だったんだし、六人も待っててもしょうがないし」

「いいのか?」

「そのための後詰でしょ」

「助かる」

「はいはい。新人たちは連れて帰ってあげて」

 俺は五人を見る。


「帰るぞ」

「ちょっと待ってください!」

 桃井が手を挙げた。


「なんだ?」

「さっき、この人が言ってた……『戻ってきた』って、どういう意味ですか?」

「…………」

 俺は少し考えた。

「戻ってきたんだ」

「そのまま!!」

「帰るぞ」

「話を逸らした!!!」


 騒ぐ桃井たちを連れて、現場を後にする。


 初陣。


 結果だけなら散々だった。

 だが、実際に見られた。

 何ができるのか。

 何ができないのか。

 資料だけでは分からなかった部分も含めて。

 これで、五人の現状は把握できた。

 さて。


 この五人。


 どうしたものか。


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