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2度目の守護者は失敗しない  作者: AIの奴隷
失敗しない男と落ちこぼれ魔法少女

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二十四話 完成魔法少女戦隊 

二十四話 完成魔法少女戦隊 


桃井星歌の固有魔法が確認されてから、しばらくの時間が経った。


 その間にもマガツは何度か出現し、五人にも出動命令が下された。


 もちろん、すべてが順調だったわけではない。実戦で初めて見つかる問題もあれば、訓練通りにいかず苦戦することもある。それでも五人は戦うたびに自分たちなりの戦い方を身につけ、今では五人が揃っているのなら、C級のマガツまでなら自分たちだけで討伐できるようになっていた。


 かつては、揃いも揃って問題を抱えた落ちこぼれだった五人。


 それが今では、《組織》から一つの戦力として数えられている。


 そして夏休みを目前に控えたある日、朔は《組織》本部へ呼び出されていた。


「まずは、よくやったと言っておこう」


 執務机の向こうで、黒鉄征司が五人の資料を閉じた。


「阿久別香仁子、宍戸猫、流星昴、須久井鏡子、桃井星歌。五人全員の再評価が終わった」


「結果は?」


「五人揃っていることが前提だが、C級までなら安定して討伐を任せられる。個人として見ても、それぞれ自分の欠点と付き合う方法を見つけ始めている。少なくとも、もう落ちこぼれとは呼べんな」


「そうか」


「……もう少し喜べ」


「最初からそのつもりで引き受けた」


「お前な」


 黒鉄は呆れたように息を吐いた。


「二度目の守護者なんて前例を認めたと思ったら、落ちこぼれを五人まとめて担当したいと言い出した。どうなることかと思っていたんだぞ」


「だから言っただろ」


 朔は平然と答える。


「俺は失敗しないからな」


「はいはい」


「軽いな」


「聞き慣れたんだよ」


 黒鉄は笑いながら次の資料を手に取った。


「だが、五人を育てて終わりというわけにもいかなくなった」


「何かあるのか?」


「桃井だ」


 朔も、それだけでおおよその察しはついた。


「固有魔法か」


「それもある。それに指揮能力だ」


 牛鬼との戦いで偶然任された指揮だったが、それ以降も星歌は勉強と実戦を重ねている。


 まだ経験は浅い。それでも仲間それぞれの能力を把握し、戦場の状況を見ながら誰をどこへ動かすべきかを考える力は、明確に伸びていた。


「桃井自身を中心に複数人の思考と感情を共有する固有魔法。それに指揮能力が合わされば、かなり面白い存在になる」


「五人の指揮官としてか?」


「それだけなら話は簡単なんだがな」


 黒鉄は机の上で指を組んだ。


「検査結果では、桃井が接続できる人間はあの四人に限定されていない」


「ああ」


「なら、他の魔法少女とも繋がれる可能性がある」


 星歌と繋がった魔法少女同士は、星歌を中心として思考と感情を共有できる。


 それが五人だけのものではないのなら、可能性は一気に広がる。


「桃井が他の魔法少女とも絆を結べれば、その指揮能力と合わせて既存の部隊の連携まで高められるかもしれない。うまくいけば一人の魔法少女を育てるだけではなく、《組織》全体の戦力を底上げできる」


「それで、桃井に片っ端から友達を作らせるのか?」


「言い方が悪い」


 黒鉄が苦笑する。


「難しく考えるな。《組織》の金で旅行して、友達を作ってこい。それだけだ」


「……任務なのか、それ」


「立派な任務だぞ」


「友達作りが?」


「友達になれと強制するわけじゃない。気が合えば仲良くなればいいし、合わなければそれまでだ。そもそも、絆を強制して作らせようなんて桃井の魔法とは一番相性が悪いだろう」


「それはそうだ」


「それに、ちょうどいい時期でもある」


「全国行脚か」


「ああ」


 《組織》では、一定以上まで成長した魔法少女を各地へ送り出し、他の魔法少女や魔女と交流させる機会を設けている。


 魔女へ至るための決まった方法は存在しない。戦いの中で覚醒する者が多いとはいえ、それがすべてではなく、何が最後のきっかけになるのかは誰にも分からない。


 だからこそ、自分とは違う魔法に触れ、違う戦い方を知り、すでに自らの魔法を完成させた魔女と出会う。


 それによって何かを掴む魔法少女は、決して少なくなかった。


「《歌劇の魔女》との出会いで桃井が自分の魔法を見つけたばかりだからな。五人にも今度は、もっといろんな魔女を見せてやればいい」


「それで日本全国か」


「交通費、宿泊費は《組織》持ちだ。各地の魔法少女や魔女に会って、話して、観光して、美味いものでも食ってこい。そこで友達ができればなお良し。何か魔女へのきっかけまで掴めれば最高だ」


「ずいぶん気楽な任務だな」


「気楽でいいんだよ。学生の交流まで作戦行動みたいにしたら、仲良くなれるものも仲良くなれん」


 その点については朔も同意だった。


 ただ、一つ気になることがある。


「いつやる?」


「夏休み」


「……なるほど」


「お前たち全員学生だからな。全国を回らせるなら、ここしかない」


「ちゃんと覚えてたか」


「何をだ?」


「俺も学生だってことを」


「当たり前だろう」


「本当か?」


「…………たまに忘れる」


「忘れるな」


 守護者として話している時の黒鉄は、朔を高校二年生として扱っていない節がある。


「まあ、喜べ。学生らしく夏休みを満喫してこい」


「学生らしい夏休みは、任務で全国を回ったりしない」


「経費で旅行できる学生もなかなかいないぞ」


「だから任務だろ」


「細かい奴だな」


「お前が雑なんだ」


 黒鉄が笑う。


「ああ、それから――今回はもう一つある」


「まだあるのか?」


「海外からも来る」


 朔が黒鉄を見る。


「誰が?」


「魔女と魔法少女だ。何人か、日本へ来ることが決まっている」


「……桃井か」


「ご名答」


 星歌の固有魔法については、すでに国外の協力組織にも情報が共有されていた。その中でも特に興味を集めたのが、思考と感情を直接共有するという性質だった。


「海外が一番気にしているのは、桃井の魔法が言語の壁を越えられるかどうかだ」


「まだ試してないのか」


「国内じゃ試しようがないからな。外国語を話せる日本人を用意しても、そいつが日本語を理解していたら検証にならん」


「それもそうか」


「桃井が共有しているものが言葉そのものなら、違う言語を使う相手とは意思疎通できない可能性がある。だが、思考や感情そのものを共有しているなら――」


「言葉が違っても関係ない」


「そういうことだ」


 もしそれが可能なら、国籍も母語も違う魔法少女同士が、言語を介さず意思を共有できることになる。


 国際的な共同戦線を考えれば、興味を持たれるのも当然だった。


「もちろん、それを確かめるためだけに桃井へ無理やり接続させる気はない。向こうも承知している」


「ならいい」


「日本へ来て、会って、遊んで、気が合ったら友達になってみる。それで自然に繋がれたなら、初めて試してみればいい」


「結局、やることは同じか」


「そうだ。友達を作ってこい」


 ずいぶんと壮大な友達作りになったものだ。


 五人で日本全国を回り、各地の魔法少女や魔女と出会う。その一方で、海外からも星歌に興味を持った魔女や魔法少女たちが日本へやってくる。


 しかも、それで訓練やマガツとの実戦がなくなるわけでもない。


「忙しい夏休みになりそうだな」


「学生らしくていいじゃないか」


「どこがだ」


 そう言いながら立ち上がろうとした朔を、黒鉄が呼び止めた。


「待て。もう一つ、大事な仕事が残っている」


「今度はなんだ」


「桃井を連れてきてくれ」


     ◇


 しばらくして、星歌は一人で司令官室を訪れた。


「失礼します」


「来たか。そこに立ってくれ」


「はい」


 いつもより少しだけ硬い黒鉄の声に、星歌も何かを察したのか、姿勢を正す。


 その少し後ろには、ひょっとこの面をつけた朔が立っていた。


「桃井星歌」


「はい」


「お前は一年間、固有魔法を発動させながら、その正体を見つけることができなかった」


「……はい」


「魔力を消費していることだけは分かる。それなのに、何が起きているのかは誰にも分からない。そのため、《組織》もお前に正式な魔法少女名を与えることができずにいた」


 星歌は黙って黒鉄の言葉を聞いていた。


 ずっと、自分にだけ何もないと思っていた。


 香仁子には爆発があった。猫には怪力があった。昴には光速があり、鏡子には氷壁があった。


 自分だけは、魔法を使っているはずなのに何も起こらなかった。


 けれど、もう違う。


「お前の魔法は、人と人を繋ぐ」


 香仁子と。


 猫と。


 昴と。


 鏡子と。


 あのライブで初めて気づいた、四人との繋がり。


「互いの思考を知り、感情を感じ、それぞれ別の人間でありながら一つに繋ぐ。そしてお前自身は、その中心に立って仲間を見渡すことができる」


 黒鉄は一枚の書類を手に取った。


「魔法少女の名は、《組織》がその魔法を見て与える名だ」


 星歌はその言葉を知っていた。


 以前、《歌劇の魔女》から聞いたばかりだった。


 魔女の名は違う。


 誰かから与えられるものではない。


 自分の魔法とは何なのか。


 その魔法で何ができるのか。


 そして、その魔法で何がしたいのか。


 それを突き詰めた果てに、今までの自分から真の自分へと至った時、世界からの祝福のように自ら見つける名前。


 だから魔女は《魔女解錠》によって真の自分を再び現す時、こう宣言する。


 ――我、○○の魔女、ここに再臨する。


 それがいつになるのか。


 星歌がどんな魔女になるのか。


 今はまだ、誰にも分からない。


 だからこそ、それまでの自分を示す名前を《組織》が与える。


 黒鉄は司令官として、桃井星歌へ告げた。


「改めて、君に――《絆の魔法少女》の名を与えよう」


 星歌が目を見開く。


「いつか魔女としての真名を見つける、その日まで。この名を名乗ってくれ」


 一年前。


 自分の魔法が何なのかさえ分からなかった少女に、ようやく名前が与えられた。


 星歌は少しだけその名を噛み締めるようにしてから、笑った。


「――はい!」


 《絆の魔法少女》、桃井星歌。


 その名とともに、五人にとってこれまでで一番忙しい夏が、始まろうとしていた。


                第1章 失敗しない守護者と落ちこぼれ魔法少女 了


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