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2度目の守護者は失敗しない  作者: AIの奴隷
失敗しない男と落ちこぼれ魔法少女

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天下無双ライブガール

 二十二話 天下無双ライブガール


星歌のツッコミが、静けさを取り戻した夜の戦場に響いた。


「あはは、楽しんでもらえたなら何より☆」


「楽しませるためにやってたの!?」


「ライブはお客さんを楽しませてなんぼでしょ?」


「戦闘だったよね!?」


 星歌が叫ぶ。


 つい数秒前まで牛鬼型がいた場所には、もう何も残っていない。


 あれほど戦場を覆っていた《呪毒》も消え去り、イブが作り出していた舞台も、ファンたちも、すべて跡形もなく消えていた。


 そんな光景を作り出した張本人はというと。


「はい、おつかれー☆」


 先ほどまでの威厳はどこへやら。


 イブは片手をひらひら振りながら、五人のところへ歩いてきた。


「みんな元気ー?」


「軽っ!」


「元気じゃない人いる?」


「健康診断みたいに聞かないでよ!」


「あははは!」


 楽しそうに笑うイブの横で、鏡子が自分の身体を確かめる。


「私はもう大丈夫です。先ほどの歌で、完全に治していただきましたから」


「ならよかった☆」


 イブは鏡子へ笑顔を向けると、残る四人も順番に見た。


「怪我は?」


「ないです」


「だ、大丈夫です……」


「ボクも平気!」


「私も」


「よしよし。五人とも無事だね」


 そこでイブは、ぽん、と手を叩いた。


「じゃ、改めまして」


 五人の前に立つ。


 そしてステージ上でするように、軽く一礼した。


「天空時イブです☆」


「知ってます!!」


 星歌が即答した。


「有名人だから!!」


「お、認知されてる。嬉しいなぁ」


「そのレベルの認知じゃないよ!」


「あははは!」


 目の前で笑っている女性を見ながら、星歌はなんとも言えない気持ちになった。


 ついさっきまで。


 歌一つで《呪毒》を消し。


 炎で牛鬼型を焼き。


 鎧騎士を呼び出し。


 最後には翼まで広げて牛鬼型を跡形もなく消滅させた。


 あの《歌劇の魔女》と。


 目の前でへらへら笑っている人気アイドルが。


 どうにも同一人物とは思えない。


「そうだ」


 イブが五人を見回している途中で、ふと星歌に視線を止めた。


「君、すごかったね」


「……私?」


「うん。君」


 イブが星歌を指差す。


「さっき指示出してた子でしょ?」


「あ……はい」


「よく持たせたねー」


 さらりと言って、イブは笑った。


「君が持たせてくれたおかげで、私が来れたよ」


「…………」


 星歌はすぐには答えられなかった。


「でも……私、結局何もできてません」


「ん?」


「みんなに指示して……でも、それだけで。結局、現状維持しかできなかったし……」


「うん」


「……うん?」


「現状維持だったね」


「そこは否定してくれないんですか!?」


「あははは!」


「だって倒せてないもん。そこは事実でしょ?」


「そうですけど!」


「でもさ。倒せないなら、倒せる人が来るまで持たせればいいじゃん」


 星歌が黙る。


「無理に倒そうとして誰かが怪我したり、戦線が崩れたりしたら、それこそ失敗でしょ?」


「現状維持できた。誰もやられなかった。私が来るまで持った。十分じゃない?」


「……でも」


「それに、いざとなったら、あの人がいたんでしょ?」


 イブの視線がひょっとこへ向く。


「牛さん、倒せたんだよね?」


「ああ」


「ほら。じゃあ、なおさら無理する必要なかったじゃん」


 星歌はそこで、ようやく気づいた。


 自分たちは牛鬼型を倒せなかった。それは事実だ。


 けれど、だからといって負けていたわけではない。


 戦線を維持して、誰も欠けず、増援が来るまで持たせる。


 そして、もし持たなければ――ひょっとこがいた。


「戦いって、敵を倒した人だけが偉いわけじゃないよ」


 イブは軽い調子のまま言う。


「時間を稼ぐ人もいる。守る人もいる。誰かを動かす人もいる」


 そして星歌を指差した。


「今回は、それが君だったってこと☆」


「…………私が」


「うん。だから胸張りなよ、指揮官ちゃん」


「指揮官ちゃん!?」


 笑うイブを見ながら、星歌はふと先ほど聞いた言葉を思い出した。


 ――魔女の名は、与えられた名じゃない。


 己の魔法を突き詰め、その果てに自ら見つける、到達点の名。


「あの。一つ、聞いてもいいですか?」


「いいよー。スリーサイズ以外なら☆」


「聞きません!」


「じゃ、なんでもどうぞ」


「どうやったら……魔女になれるんですか?」


「お。そこ気になる?」


「気になりますよ!」


「うーん」


 イブが腕を組み、少し考えて。


「知らない☆」


「知らないの!?」


「だって、人によって違うもん。戦ってる最中になる人もいるし、何かの拍子になる人もいる。私みたいなのもいるし」


「イブさんは?」


「私は歌」


 イブは自分の喉元に軽く触れた。


「自分で作った歌を、ちゃんと自分の歌として歌えた時かな」


「……歌?」


「そ。歌ってたら魔女になった☆」


「そんな軽い感じなんですか!?」


「私の場合はね」


 イブが笑う。


「でも、たぶん大事なのは『魔女になろう』って頑張ることじゃないよ」


「え?」


「自分の魔法が何なのか。自分はその魔法で何ができるのか。それから――自分は、その魔法で何がしたいのか」


 イブは五人を順番に見る。


「それを自分で見つけた先に、魔女があるんじゃない?」


「…………」


「まあ、私の持論だけどね☆」


「急に責任逃れした!」


 星歌は少し考えて、もう一つ尋ねた。


「じゃあ、《歌劇の魔女》って名前も、イブさんが自分で考えたんですか?」


「んーん」


 イブは首を横に振った。


「浮かんできたの」


「浮かんできた?」


「そ。私が魔女になった、その瞬間にね」


 イブは胸元へ手を当てる。


「誰かに教えてもらったわけでもないのに、すっと分かった。ああ――私は《歌劇の魔女》なんだって」


「…………」


「不思議だよね。世界からの祝福みたいに。頑張ったご褒美に、贈り物をもらったみたいに」


「私のところに、《歌劇の魔女》って名前が来たの」


「じゃあ、自分で付けた名前じゃない……」


「うん。自分で付けた名前じゃなくて、自分で見つけた名前」


「見つけた……」


「ずっとそこにあった私の名前を、魔女になった時に初めて見つけた。そんな感じかな☆」


「桃井」


「はい?」


 呼ばれて振り返る。


 ひょっとこがこちらを見ていた。


「次の訓練内容が決まったな」


「……え?」


「指揮の勉強をしろ」


「…………指揮?」


「ああ。お前の魔法については、まだ何も分かっていない。分からないものを鍛えろと言っても無理がある」


「まあ……そうですけど」


「だが、今日できたことは分かった。戦場を見る。味方が何をできるか把握する。状況に応じて誰をどこへ動かすか判断する」


 ひょっとこは淡々と並べていく。


「それは魔法が何であろうと鍛えられる。なら、今はそれをやれ」


「でも私、指揮なんて今日初めてやったんですよ?」


「だから勉強するんだろう」


「正論!」


「《組織》には戦闘記録もある。過去の作戦資料もある。指揮を教えられる人間もいるだろう」


「えっ、座学増えるの?」


「嫌なのか?」


「嫌というか……みんなが魔法の訓練してる横で、私だけお勉強?」


「安心しろ」


「何を?」


「実地訓練もある」


「安心できる要素がない!」


「あはははは!」


 イブが声を上げて笑った。


「いいじゃん、指揮官ちゃん」


「その呼び方定着させないでください!」


「でも私も賛成かな。この子は爆発する。この子はものすっごく力持ち。この子はものすっごく速い。この子はものすっごく硬い」


「紹介が雑!」


「でも、これだけバラバラな四人を見ながら、その場で『じゃあこうしよう』って考えたんでしょ?」


「……まあ」


「だったら、それ伸ばせばいいじゃん☆ 自分の魔法が分からないからって、できることまで何もないわけじゃないんだから」


 星歌は四人を見る。


 今日、自分が見ていた四人。


 そして、自分の言葉で動いてくれた四人。


「……指揮官、か」


 魔法の答えは、まだ見つからない。


 それでも、明日から何をすればいいのか。


 その答えだけは、一つ見つかった。


「さて!」


 イブが大きく伸びをした。


「そろそろ帰りましょうか。もう夜も遅いし」


「高校生がいつまでも夜更かししてちゃダメだよー」


「マガツと戦ってたんですけど!?」


「それはそれ、これはこれ☆」


「理不尽!」


 イブは笑いながら五人へ手を振った。


「今日はおつかれさま。あ、そうだ」


 五人を見回して、にっこり笑う。


「またライブで会いましょ☆」


「え?」


「それじゃ、おやすみー!」


 イブはひらひらと手を振りながら歩いていく。


 星歌は瞬きをした。


「……ライブ?」


 数秒。


「…………あ」


 白石からもらったチケットを思い出す。


「あのライブ!?」


     ◇


 それから数日。


 桃井星歌の訓練内容は、大きく変わった。


 相変わらず、自分の固有魔法が何なのかは分からない。


 だから、魔法そのものの訓練ではない。


 過去の戦闘記録。


 マガツの特性。


 魔法少女ごとの能力。


 戦力配置。


 撤退の判断。


 増援到着までの時間。


 そして何より――誰に、何をさせるのか。


 指揮官としての勉強。


 それが、今の星歌に与えられた新しい訓練だった。


「覚えること多すぎない!?」


 魔法を一発撃つより、よほど頭が疲れた。


 それでも、以前とは違う。


 自分だけ、何をすればいいのか分からない。そんな状態ではなくなった。


 自分の魔法についての答えは、まだ見つかっていない。


 けれど、今できることはある。


 ならば、まずはそれを伸ばせばいい。


 そうして戦場の見方を学び、過去の戦闘記録と睨めっこし、頭を使いすぎて何度か机へ突っ伏し。


 数日が過ぎ――。


     ◇


 天空時イブのライブ当日。


 ライブが始まってしまえば、時間が過ぎるのはあっという間だった。


「いっけぇぇぇぇぇ!!」


「香仁子、声でかい!」


「星歌も同じくらい出てるよ!」


「出してない!」


「出てる!」


 否定しながら、星歌の手に握られたペンライトも思いっきり振られていた。


 猫も最初こそ周囲の熱気に圧倒されていたものの、いつの間にか小さく身体を揺らしている。


 昴は最初から最後まで元気だった。


「次なに!? 次なに!?」


「待ってれば始まるから!」


 鏡子に至っては、普段のおっとりした雰囲気からは想像できないほど、しっかりコールまで覚えていた。


「鏡子先輩、詳しくない!?」


「予習してきました」


「真面目!!」


 曲が変わる。


 衣装が変わる。


 照明が変わる。


 天空時イブが歌うたび、会場全体の空気まで変わっていく。


 先日の戦場で見た《歌劇の魔女》。


 あの時も確かにライブだった。


 けれど、本物はまるで違った。


 何千、何万という人間が、一人の歌に熱狂する。


 笑って。叫んで。手を振って。同じ曲を歌う。


 星歌もいつしか、何も考えなくなっていた。


 自分の魔法のことも。指揮の勉強も。マガツのことも。


 全部忘れて。


 ただ、楽しかった。


     ◇


「――みんなぁぁぁ! 今日は本当にありがとぉぉぉ!!」


 最後の曲が終わる。


 会場を揺らすほどの歓声の中、イブが何度も手を振った。


「また会おうねー!!」


 やがてステージの照明が落ちる。


「…………終わったぁ」


 星歌が大きく息を吐いた。


「楽しかったぁ……」


「すごかったね!」


「すごかったです……」


 五人とも、すっかり汗だくだった。


「私、喉痛い」


「叫びすぎ」


「星歌も叫んでたじゃん!」


「私は香仁子ほどじゃない!」


「ボクまだいける!」


「昴ちゃんは元気ですね……」


 星歌は暗くなったステージを見る。


 本当に終わってしまった。


 そう思った、その時だった。


「アンコール!」


 どこかから声が上がった。


「アンコール!」


 別の場所からも。


「アンコール!」


「アンコール!」


 声が増えていく。


 やがて、それは会場全体へ広がった。


「アンコール!」


「アンコール!」


「アンコール!」


 何千、何万という人間の声が、同じリズムを刻む。


 星歌も。香仁子も。猫も。昴も。鏡子も。


 いつの間にか、その中に混ざっていた。


「アンコール!」


「アンコール!」


「アンコール!」


 暗かったステージに――光が灯った。


「――呼んだぁぁぁぁ!?」


 天空時イブが再びステージへ飛び出してくる。


「アンコールありがとぉぉぉぉ!!」


 歓声が爆発した。


 イブは客席へ手を振りながらステージ中央まで進むと、マイクを口元へ戻した。


「さて!」


 その一言で、会場の声が少しずつ静まっていく。


「アンコールは、ちょっと懐かしい曲を歌おうかな」


 再び歓声が上がった。


「この曲はね――私が作った、最初の曲です」


「最初の……」


 星歌がステージを見る。


「まだ今みたいに、たくさんの人に歌を聞いてもらえるわけでもなかった頃。当時の私の気持ちを、精一杯込めて作った曲です」


「この曲で言いたかったことは、すっごく簡単!」


 イブが大きく息を吸った。


「自分にだけないものを気にすんなーーーーっ!!」


 会場に声が響き渡る。


「自分にあるものをーーーーっ!!」


 腕を振り上げる。


「見つけろーーーーーっ!!」


 観客が歓声で応えた。


 星歌だけが、声を失っていた。


 自分にだけないもの。


 香仁子には、爆発がある。


 猫には、力がある。


 昴には、速さがある。


 鏡子には、氷壁がある。


 自分には――。


 そこまで考えたところで、ステージの上のイブと目が合った。


「ねっ☆」


 ぱちん。


 イブが星歌へ向かってウインクした。


「…………え?」


 今、こっちを見た?


「じゃあ、聞いてください!」


 イブが笑う。


「――『歌を歌うと決めた日』」


 イントロが流れ始める。


 歓声が上がる。


 星歌もペンライトを振った。


 香仁子も。猫も。昴も。鏡子も。


 同じ歌を聞いて。同じリズムに乗って。同じ場所で笑っている。


 楽しい。


 ただ、それだけだった。


 魔法のことなんて忘れていた。


 自分に何ができるのかも。


 自分だけ何も見つかっていないことも。


 今はただ――楽しい。


 それでよかった。


「――――!」


 隣で香仁子が何か叫んでいる。


 曲と歓声に掻き消されて、何を言っているのかなんて聞こえない。


 なのに。


 ――楽しい!


「…………え?」


 分かった。


 言葉が聞こえたわけじゃない。


 でも、分かった。


 香仁子が楽しい。


 すごく楽しい。


 もっと歌ってほしい。


 まだ終わってほしくない。


 そんな気持ちが、当たり前のように伝わってくる。


 星歌は隣を見る。


 香仁子は何も気づかず、笑顔でペンライトを振っていた。


 その向こうでは昴が跳ねている。


 ――すごい!


 ――楽しい!


 分かる。


 猫を見る。


 ――楽しい。


 ――みんなと来てよかった。


 分かる。


 鏡子を見る。


 ――素敵。


 ――まだ終わってほしくないですね。


 分かる。


「なに……これ……」


 不思議だった。


 声なんて聞こえていない。


 誰も星歌に話しかけていない。


 それなのに、分かる。


 四人が楽しんでいる。


 四人が今、この時間を大切に思っている。


 そして――。


「…………あ」


 星歌は気づいた。


 逆だ。


 自分が感じているものも、伝わっている。


 楽しい。


 みんなと一緒にいられて嬉しい。


 今日ここに来てよかった。


 この時間が、ずっと続けばいいのに。


 言葉になんてしていない。


 それでも、四人がそれを受け取っていることが、なぜか分かった。


 そして四人も、星歌を見る。


 香仁子が笑った。


 昴が笑った。


 鏡子が微笑んだ。


 猫も、少し照れくさそうに笑った。


 誰も何も言わない。


 言う必要がなかった。


 星歌の目の前で、世界が広がった。


 何千、何万という人がいるはずの会場。


 イブの歌声が響き、歓声が轟き、無数のペンライトが輝いている。


 なのに、不思議と――。


 この世界には、五人しかいないような気がした。


 香仁子。


 猫。


 昴。


 鏡子。


 そして、自分。


 五人。


 その存在が、はっきりと分かる。


 どこにいるのか。


 何を感じているのか。


 どう思っているのか。


 そして。


 五人は、バラバラじゃない。


「……私?」


 星歌は胸元へ手を置いた。


 分かる。


 四つの何かが、自分へと繋がっている。


 いや。


 自分からも、四人へと繋がっている。


 四人と自分。


 五人が。


 私を中心に、繋がっている。


 不思議だった。


 でも、怖くはない。


 むしろ心地よかった。


 五人の気持ちが重なったまま。


 イブの歌は、最後まで続いた。


     ◇


 アンコールが終わった。


 天空時イブが何度も客席へ手を振り、今度こそステージを去っていく。


 照明が落ちても、しばらく歓声は鳴り止まなかった。


「…………終わったぁぁぁ」


 香仁子が座席へ沈み込む。


「楽しかったぁ……」


「ボク、まだいける!」


「昴ちゃん元気すぎない?」


「すごく楽しかったです」


「わ、私も……」


 猫も小さく頷いている。


 星歌はそんな四人を見て、笑った。


 ライブの途中で感じた、あの不思議な感覚。


 あれはなんだったのだろう。


 何千、何万という人が一つになったような、ライブ特有の一体感。


 きっと、それに呑まれていたのだ。


「とりあえず出よっか」


「賛成ー」


 五人で人の流れに乗り、会場を出る。


「いやー、楽しかったね!」


 香仁子が満足そうに伸びをした。


「また行きたい!」


「ボクも!」


「私も楽しかったです」


「わ、私も……また行きたいです」


「うん。また五人で――」


 ――お腹空いた。


「…………」


 星歌が止まった。


「どうしたの?」


 香仁子が振り返る。


「……今、お腹空いたって言った?」


「え? 言ってないよ?」


 星歌は香仁子を見る。


 ――なんか食べたいなー。


「…………」


「星歌?」


「香仁子」


「なに?」


「なんか食べたい?」


「食べたい!」


「何が?」


 ――ラーメン!


「ラーメン?」


「そう! ラーメ――」


 香仁子が止まった。


「…………あれ?」


「私、今ラーメンって言った?」


「言ってない」


 二人が見つめ合う。


 その横で昴が首を傾げた。


 ――ボクは肉がいい。


「昴ちゃんは肉?」


「うん!」


 一拍。


「…………なんで分かったの?」


 星歌の頬が引きつる。


「ちょっと待って」


 星歌は四人を見る。


「みんな、今から適当に何か考えて」


「何かって?」


「なんでもいいから!」


「わ、分かりました……」


 四人がそれぞれ黙る。


 ――眠いです。


 ――お肉。


 ――ラーメン。


 ――明日の予定は何でしたっけ。


「…………」


 分かる。


 全部。


「猫ちゃん、眠い」


「えっ」


「昴ちゃん、肉」


「当たり!」


「香仁子、ラーメン」


「さっきからそれしか考えてないみたいじゃん!」


「鏡子先輩は明日の予定を考えてる」


「まあ……」


 鏡子が目を丸くする。


「全部、当たっていますね」


 星歌の顔から笑みが消えた。


「なんか……みんなが考えてること、分かるんだけど」


「え?」


 香仁子が瞬きをする。


「…………あれ?」


 今度は香仁子が星歌をじっと見る。


「星歌」


「なに?」


「『なんで?』って思ってる?」


「…………思ってる」


 香仁子の顔からも笑みが消えた。


「え?」


 昴が星歌を見る。


「星歌、今『まさか』って思った?」


「…………思った」


「え?」


 猫も恐る恐る星歌を見る。


「い、今……『こっちの考えも伝わってる?』って……」


「…………思った」


 五人が黙った。


 星歌は四人を見る。


 四人も星歌を見る。


 そして。


 誰が言ったのかすら分からないほど、綺麗に同じ感情が五人の間を駆け巡った。


 ――これって。


 ――もしかして。


 ――魔法?


「…………へ?」


 桃井星歌の間抜けな


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