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2度目の守護者は失敗しない  作者: AIの奴隷
失敗しない男と落ちこぼれ魔法少女

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鏡子、魔法少女辞めるってよ

十六話 鏡子、魔法少女辞めるってよ


放課後。


学生避難誘導員特別待機室では。


四人の魔法少女が。


いつものように。


思い思いに時間を潰していた。


「鏡子先輩、遅いね」


香仁子が。


椅子の背もたれに身体を預けながら言った。


「三年生だから、何かあるんじゃない?」


星歌が答える。


「進路相談とか?」


「そういう時期ですもんね」


猫が。


小さく頷いた。


「大学とか?」


昴が言う。


「須久井先輩なら、どこでも行けそうだけど」


「分かる」


「頭良さそうです」


「というか、実際いいでしょ」


そんな。


取り留めのない会話をしていると。


ガラッ。


待機室の扉が開いた。


「お待たせ」


入ってきたのは。


白石だった。


そして。


その後ろから。


鏡子が入ってくる。


「先輩!」


昴が。


椅子から立ち上がった。


「遅かったね!」


「ええ。ごめんなさい」


いつも通り。


穏やかに笑う鏡子。


けれど。


どこか。


その笑顔は。


ぎこちなかった。


「…………?」


星歌が。


首を傾げる。


白石が。


教卓の前まで歩き。


四人を見る。


「ちょっといい?」


その声に。


四人が。


白石へ視線を向けた。


「須久井さんから、みんなに話があるそうよ」


「話?」


香仁子が。


鏡子を見る。


鏡子は。


少しだけ。


困ったように笑って。


「ええ」


それから。


四人の前へ立った。


「急な話で、申し訳ないのだけれど」


「うん」


「私」


一度。


言葉を切る。


そして。


「魔法少女を辞めることになりました」


「「「「ええええええええええええええっ!?」」」」


待機室が。


揺れた。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


星歌が。


真っ先に立ち上がる。


「なんで!?」


「何かあったんですか!?」


猫も。


珍しく大きな声を出した。


「先輩、なんか失敗した!?」


「いや、それで辞めさせられるなら私が一番危ないでしょ」


香仁子が言った。


「確かに」


「納得すんな!」


「違うの」


鏡子が。


慌てて手を振る。


「そういうことではなくて」


「じゃあ、なんで?」


昴が。


身を乗り出す。


鏡子は。


少しだけ。


言いにくそうに。


視線を逸らした。


「私」


「うん」


「結婚することになったの」


「「「「ええええええええええええええっ!?」」」」


二度目の。


絶叫だった。


「けっ」


星歌が。


口をぱくぱくさせる。


「結婚!?」


「ええ」


「誰と!?」


「お相手は、家同士で決まっている方よ」


「家同士!?」


香仁子が。


目を丸くする。


「本当にあるんだ、そういうの!」


「ありますよ」


猫が。


何故か小声で答えた。


「いや、あるんだろうけど!」


星歌は。


頭を抱えた。


「ちょっと待って。だから魔法少女も辞めるってこと?」


「ええ」


鏡子は。


静かに頷いた。


「結婚するなら、いつまでも危険なことを続けているわけにもいかないでしょう?」


「いや、でも……」


星歌は。


言葉に詰まる。


結婚。


それ自体は。


悪いことではない。


むしろ。


普通なら。


祝うべきことなのだろう。


けれど。


あまりにも。


突然すぎる。


「ひょ、ひょっとこさんに伝えなきゃ!」


昴が。


慌てて立ち上がった。


「あの人、これ知ってるの!?」


「彼なら、こちらに向かってるわ」


白石が言った。


「もう!?」


「ええ」


「そ、そんな大事にしなくても……」


鏡子が。


困ったように笑う。


「大事よ」


白石は。


即答した。


「魔法少女が一人辞めるのよ。《組織》としても大事」


「…………」


「それに」


白石は。


鏡子を見る。


「教師としても、はいそうですかって送り出すつもりはないわ」


「先生……」


「結婚が悪いなんて言わない。あなたが結婚したいなら、それはそれで祝うわよ」


白石は。


少しだけ。


表情を柔らかくした。


「でも、高校生活だって一度きりなんだから。急いで全部手放す必要があるのかくらいは、考えてもいいでしょう?」


「…………」


鏡子は。


答えなかった。


その時。


コンコン。


「…………?」


音がした。


星歌が。


そちらを見る。


コンコン。


もう一度。


窓が。


叩かれた。


「…………」


ここは。


三階である。


「…………え?」


窓の外に。


ひょっとこがいた。


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


五人が。


固まった。


白石が。


額に手を当てる。


「ちょっと、もち――」


止まった。


五人がいる。


「…………ひょっとこ」


「なんだ」


窓越しに。


返事が返ってきた。


「あんた、いい加減にしなさい」


「そうです先生!」


星歌が。


勢いよく立ち上がった。


「言ってやってください!」


白石は。


窓の外に立つひょっとこを。


じっと見た。


そして。


その足元を指差した。


「ここは学校内だから、靴は脱ぎなさい」


「承知した」


「そこじゃない!!」


星歌が。


叫んだ。


ひょっとこは。


窓の外で。


律儀に靴を脱いだ。


そして。


左右を揃えて。


窓の外へ置いた。


ガラッ。


窓を開ける。


靴下のまま。


室内へ入ってきた。


「三階!!」


「知ってる」


「知っててなんで窓から入ってくるのよ!?」


「最短だった」


「玄関があるでしょうが!!」


「ひょっとこの面を被った男が校内を歩く方が問題でしょう」


白石が言った。


「先生はどっちの味方なんですか!?」


「学校の味方よ」


「分かんない!!」


騒ぐ星歌を。


朔は無視した。


そして。


鏡子を見る。


「話は聞いた」


「…………はい」


「結婚するらしいな」


「はい」


「それで、魔法少女を辞める」


「…………はい」


朔は。


少しだけ。


鏡子を見た。


「で」


「?」


「お前はどうしたい?」


「…………」


鏡子が。


黙った。


「家の話じゃない」


朔は。


続ける。


「お前はどうしたいんだ」


「…………私は」


鏡子は。


少し考えて。


「結婚は、したいです」


「今か?」


「…………」


答えは。


返ってこなかった。


「魔法少女は辞めたいのか?」


「…………」


それにも。


答えは。


返ってこない。


「でも」


鏡子が。


小さく口を開いた。


「家で決まったことだから」


「それは聞いた」


「私の家、大きいでしょう?」


「そうだな」


「普通の人より、ずっといい暮らしをさせてもらって」


鏡子は。


自分の手を。


膝の上で重ねた。


「何不自由なく育ててもらって」


「…………」


「お父様にも、お母様にも、大切にしてもらったから」


だから。


「このくらいは、従わないと」


「…………」


朔は。


鏡子を見た。


鏡子も。


朔を見ている。


けれど。


その口から。


自分がどうしたいのかという答えは。


最後まで。


出てこなかった。


「分かった」


「…………?」


「お前自身の答えがないなら、この話をこれ以上しても意味がない」


「え?」


「なら、俺の仕事は継続だ」


「…………え?」


星歌が。


目を瞬かせる。


「ちょ、ちょっと待って」


「なんだ」


「今、須久井先輩が結婚して、魔法少女を辞めるって話してたよね?」


「そうだな」


「なんでその結論になるの!?」


「まだ辞めてない」


「それはそうだけど!」


「なら、俺はまだこいつの守護者だ」


「…………」


「いいから聞け」


「強引!!」


朔は。


星歌の抗議を無視した。


「須久井」


「……はい」


「お前の《氷壁》について、考えていたことがある」


「私の?」


「ああ」


朔は。


鏡子の前に立つ。


「お前の《氷壁》は、お前から離れるほど弱くなる」


「はい」


「逆に、近ければ?」


「強くなります」


「どこが一番強い」


「私の、すぐ近くです」


「なら簡単だ」


「…………?」


「離すな」


鏡子が。


瞬きをした。


「《氷壁》を、ですか?」


「そうだ」


「ですが、それでは、離れた場所にいる人を守ることが――」


「だから」


朔は。


鏡子を指差した。


「お前自身が《氷壁》を纏え」


「…………私が?」


「壁を守りたい場所に出すから、お前との距離ができる」


朔は。


続ける。


「だったら、壁を離す必要はない」


「…………」


「お前が動け」


「私が……動く」


「ああ」


《氷壁》を。


守りたい場所へ。


作るのではなく。


自分のすぐそばに。


最も強い状態で。


置き続ける。


そして。


必要な場所へ。


自分自身が。


移動する。


「お前自身が、壁になれ」


「…………私自身が」


鏡子は。


自分の両手を見る。


結婚するのか。


魔法少女を辞めるのか。


自分が。


本当は。


どうしたいのか。


その答えは。


まだ。


出せない。


けれど。


どう戦うのか。


その答えなら。


一つ。


示された。


「…………やってみます」


鏡子が。


小さく。


そう答えた。


朔は。


頷く。


「そうしろ」


「…………」


少しだけ。


鏡子の表情が。


変わった。


何かを。


考えるように。


自分の手を。


見つめている。


その横で。


星歌は。


ふと。


窓の外を見た。


「…………」


三階の窓の外。


窓枠のすぐそばに。


一足の靴が。


綺麗に揃えて置かれている。


「ねえ」


「なんだ」


「帰りも窓から帰るつもり?」


朔も。


窓の外を見る。


「靴があそこにあるからな」


「玄関から帰れ!!」


――つづく。


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