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2度目の守護者は失敗しない  作者: AIの奴隷
失敗しない男と落ちこぼれ魔法少女

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猪突猛進スピードガール

第十四話


数日後。


マガツ出現の報が入った。


出現地点。


市街地。


確認された個体は一体。


脅威度。


D級。


「…………」


《組織》の車両が。


現場へ向かって走っていた。


その後部座席に。


望月朔は座っていた。


「…………」


運転席の職員が。


バックミラーを見る。


朔を見る。


前を見る。


そして。


また見る。


「なんだ」


「いえ」


職員は。


前を向いた。


しばらくして。


また。


バックミラーを見る。


「なんだ」


「……本当に乗ってるなと思いまして」


「ああ」


「ちゃんと迎えを待って」


「ああ」


「走って先に行ったりもせず」


「ああ」


「車に乗ってる……」


「何が言いたい」


「いや……」


職員は。


少しだけ感動していた。


「司令の話、ちゃんと聞いてくれたんだなって」


「当然だ」


朔は。


窓の外へ目を向ける。


「俺は失敗しないからな」


「…………」


職員は。


何故だろう。


少し不安になった。


その時。


車内の端末に。


追加情報が届いた。


職員が確認する。


「出現したマガツの形状が判明しました」


「ああ」


「スライム型です」


「…………」


朔の表情が。


少しだけ変わった。


「厄介だな」


「D級ですよ?」


「等級だけで判断するな」


朔は。


送られてきた情報を見る。


「スライム型は、核を破壊しなければ死なない奴が多い」


「核?」


「ああ。身体を吹き飛ばしても、核が残っていれば再生する」


「なるほど……」


「それだけじゃない」


朔は。


画面に映る。


まだ不鮮明な画像を見る。


「粘液も、ただの粘液とは限らない」


「というと?」


「毒。酸。麻痺。触れたものを取り込む奴もいる」


「うわぁ……」


「再生能力と組み合わされると面倒だ」


朔は。


腰の《月に叢雲》へ。


視線を落とした。


「場合によっては俺が出る」


職員が。


一瞬。


朔を見る。


「望月さんが?」


「ああ」


朔は。


それ以上。


何も言わなかった。


やがて。


車両が。


現場へ到着する。


すでに。


避難は進んでいた。


結界も展開され。


戦闘区域は。


一般区域から隔離されている。


先に到着していた五人も。


すでに変身を終えていた。


そして。


その向こう。


道路を塞ぐように。


それはいた。


巨大な。


半透明の塊。


高さは。


数メートル。


青白い粘液質の身体が。


ぶるん。


ぶるん。


と。


揺れている。


「…………」


朔が。


スライムを見る。


『対象の詳細解析、出ました』


通信から。


戦闘班の声。


「聞いてる」


『現時点で確認された攻撃方法は体当たりのみ』


「粘液の毒性は?」


『ありません』


「腐食性」


『なし』


「麻痺」


『なし』


「接触による侵食、吸収」


『いずれも確認されていません』


「再生能力」


『あり。かなり高速です』


「核は?」


『確認されています。破壊すれば討伐可能と思われます。ただ――』


スライムの。


半透明の身体の中。


何かが。


動いた。


小さな。


赤黒い球体。


それが。


体内を。


凄まじい速度で移動している。


『核そのものが、体内を高速で移動しています』


「…………」


朔は。


実物を見る。


体当たりしかない。


毒もない。


酸でもない。


触れて即座に危険となるような。


面倒な性質もない。


再生は速い。


核も。


確かに狙いにくい。


だが。


「…………あ」


朔が言った。


「行けるわ」


『はい?』


「応援不要で」


『ちょっと待ってください』


通信の向こうが。


ざわついた。


「ひょっとこさん?」


星歌が。


朔を見る。


「大丈夫なの?」


「ああ」


朔は。


スライムを見る。


「お前たちで行ける」


「いやいやいや」


香仁子が。


スライムを指差した。


「めっちゃデカいよ?」


「ああ」


「しかも再生するんでしょ?」


「ああ」


「中の核、めっちゃ動いてるよ?」


「ああ」


「行ける要素どこ!?」


「核を壊せば死ぬ」


「それが難しいって話してるんだけど!?」


星歌が。


スライムを見る。


「でも、やるしかないでしょ」


「そうだなぁ……」


香仁子も。


巨大な身体の中を。


高速で動き回る核を見る。


「…………」


じっと。


見る。


「…………」


星歌が。


香仁子を見る。


「香仁子」


「なに?」


「スライムの中に入って爆発すれば、核に当たるかもとか考えてないでしょうね?」


「なぜバレたし!?」


「やりそうだと思ったからだよ!」


「いや、でもさ!」


香仁子が。


スライムを指差す。


「外から狙って当たらないなら、中からドカーンってやればどっかには当たりそうじゃん!」


「自分からスライムの中に入ろうとするな!」


「私、爆発には強いよ?」


「問題そこじゃない!」


「前も敵のど真ん中で爆発したし」


「だからって今回は敵の中に入る必要ないでしょうが!」


「いけると思うんだけどなぁ」


「却下!」


「ちぇー」


香仁子が。


口を尖らせる。


その隣で。


猫が。


何かを見ていた。


「…………」


道路脇。


一本の。


道路標識。


赤い逆三角形。


『止まれ』


「…………」


猫が。


それを見る。


スライムを見る。


もう一度。


道路標識を見る。


「猫」


「は、はい!?」


星歌が。


道路標識を指差した。


「それ引っこ抜いて投げようとか考えてないでしょうね?」


「なぜバレたんですか!?」


「やりそうだと思ったからだよ!」


「で、でも……」


猫は。


道路標識を見る。


「石より大きいですし……」


「駄目」


「硬そうですし……」


「駄目」


「持ちやすそうです」


「絶対駄目!!」


「でも、核に当たれば――」


「道路設備を弾薬にするな!!」


「…………はい」


猫が。


しゅんとした。


道路標識は。


守られた。


「…………」


朔が。


星歌を見る。


「桃井」


「なによ」


「お前、ツッコミすぎてツッコミレベルが上がったのか?」


「そんなレベルないよ!?」


その横で。


鏡子が。


ぽつりと言った。


「ツッコミの魔法?」


「嫌だよそんな魔法!」


「便利そうだけど」


「どこが!?」


「変なことをしようとしたら、事前に分かる」


「それ私が一生ツッコミ続けることになるじゃない!」


香仁子が。


ぽん。


と。


星歌の肩を叩いた。


「頑張って」


「誰のせいだと思ってんのよ!!」


巨大なスライムが。


ぶるん。


と。


身体を揺らした。


そして。


跳ねる。


「来る!」


巨体が。


五人へ向かって飛んでくる。


「須久井!」


「分かってる!」


鏡子が。


両手を前へ出した。


氷の壁が。


地面から立ち上がる。


直後。


スライムの巨体が。


ぶつかった。


どぷんっ!


柔らかな身体が。


氷壁に沿って。


ぐにゃりと潰れた。


そして。


ずるずると。


地面へ落ちる。


「……なんか」


昴が言った。


「弱くない?」


「体当たりだけならな」


朔が答える。


潰れたスライムが。


再び。


元の形へ戻っていく。


「問題は倒せるかだ」


「じゃあ!」


香仁子が。


前へ出た。


「とりあえず吹っ飛ばしてみる!」


「待ちなさい! 加減――」


「どーん!」


「しろぉぉぉぉぉぉ!!」


爆発。


スライムの身体が。


盛大に吹き飛んだ。


粘液が。


四方へ飛び散る。


「…………」


星歌が。


固まる。


「…………やっちゃった」


香仁子が呟いた。


だが。


飛び散った粘液が。


ずるずると。


動き始める。


一つ。


また一つ。


中央へ集まり。


あっという間に。


元の巨体へ戻っていく。


「うわ」


香仁子が。


顔をしかめた。


「ほんとに戻った」


「だから核を壊せって言っただろ」


「狙ったよ!」


「どこを」


「なんとなくこの辺!」


「狙ってないじゃない!」


その間にも。


核は。


スライムの体内を高速で動き続けている。


「だったら!」


昴が。


走り出した。


姿が。


消える。


次の瞬間には。


スライムの横。


その次には。


反対側。


体内を高速で移動する核を。


昴が。


追う。


核が。


上へ。


昴は。


地上から。


その動きを追い続ける。


やがて。


核が。


下へ。


そして。


スライムの表面近くへ。


「そこ!」


昴が。


一気に回り込んだ。


「もらったぁ!」


拳を。


叩き込む。


ぺちっ。


確かに。


核へ。


当たった。


「やったか!?」


香仁子が叫ぶ。


「…………」


「…………」


「…………」


核は。


無傷だった。


何事もなかったかのように。


すいーっ。


と。


体内の奥へ逃げていく。


「…………」


昴の。


頬が引きつった。


「ムキーーーーーッ!!」


「当てたのに!?」


星歌も叫ぶ。


「当てたよ!」


「見てた!」


「ちゃんと核に当てたよ!」


「見てたって!」


「なのになんで壊れないのぉぉぉぉ!!」


「攻撃力がないからでしょうが!!」


「分かってるけどムカつくぅぅぅぅ!!」


「…………」


朔は。


その様子を見ていた。


追える。


問題なく。


核の動きを追えている。


狙える。


表面近くへ来た瞬間を見逃さず。


正確に攻撃を当てられる。


だが。


壊せない。


それも。


分かっていたことだ。


流星昴。


《光速》の魔法。


発動条件は。


本人が。


『走っている』と認識できる動作を維持すること。


走る姿勢が崩れれば。


魔法は止まる。


だから。


訓練でも。


攻撃力を補う方法は。


すでに試されている。


大型の戦鎚。


それを持たせ。


速度と武器の威力を。


両立させようとした。


結果は。


失敗。


重さと大きさに振り回され。


まともな走行姿勢を取れず。


《光速》そのものが発動しなかった。


報告書には。


そう記載されていた。


だから。


ただ。


強い武器を持たせればいいわけではない。


流星が。


持てる。


そして。


持ったまま。


走れる。


その条件を満たした上で。


最大の火力を。


用意する。


「…………」


朔は。


通信を開いた。


「一つ聞く」


『はい』


「今、この戦闘区域に持ち込まれている装備で」


朔は。


昴を見る。


「個人携帯可能で、一番火力のある武器はなんだ」


『…………はい?』


「個人で持ち運ぶことを前提に作られたものだ」


『ええと……少々お待ちください』


通信の向こうで。


確認する声。


やがて。


返答が来た。


『対マガツ用の携行ランチャーがあります』


「どこだ」


『臨時拠点の装備車両です。ただ――』


「流星」


「なに?」


昴が。


振り返る。


「臨時拠点の場所は分かるな」


「分かるよ」


「装備車両に対マガツ用の携行ランチャーがある」


「うん」


「取ってこい」


「分かった!」


『待ってください! 使用許可が――』


昴の姿が。


消えた。


『――まだ出てません!』


「…………」


数秒後。


「持ってきたよ!」


昴が。


戻ってきた。


肩には。


対マガツ用の携行ランチャー。


「これ?」


『早い!!』


「それだ」


朔は。


昴を見る。


ランチャーを持っている。


そして。


今。


それを持ったまま。


《光速》で戻ってきた。


なら。


使える。


「お前が撃て」


「ボクが?」


「ああ」


「使い方知らないよ?」


「教えてやれ」


『え、今からですか!?』


「今からだ」


『…………』


通信の向こうで。


深いため息が聞こえた。


それから。


昴への。


最低限の操作説明が始まった。


安全装置。


構え方。


照準。


発射方法。


一通りの説明を聞き。


昴が。


ランチャーを構える。


「分かった!」


「で」


昴が。


スライムを見る。


「どうやって撃つの?」


「核を追え」


「うん」


「表面近くまで来たところで」


朔が。


スライムを指差す。


「ゼロ距離で撃て」


「え」


『待ってください!』


通信から。


即座に声が飛んだ。


『近すぎます! 誤爆や爆発に巻き込まれる危険があります!』


「流星」


「なに?」


「トリガーを引いたら、ランチャーごと置いて退避しろ」


「置いてくの?」


「ああ」


『いや、それでも近すぎます! 発射までに退避できなければ――』


「流星」


「なに?」


「お前と爆発、どっちが速い?」


「ボク!!」


「なら問題ない」


朔は。


続けた。


「外したら、すぐ車両に戻れ」


「うん」


「同じ武器を持ってこい」


「うん」


「一発で足りなければ、もう一発。それでも駄目なら、もう一発」


「核が壊れるまで?」


「ああ」


朔は。


当然のように頷いた。


「お前の速さならできる」


「分かった!」


『待ってください!』


通信の向こうで。


職員が叫んだ。


『それ、装備車両のランチャーを全部使う気ですか!?』


「必要なら」


『必要ならって――!』


「問題ない」


朔は。


自信満々に言った。


「《組織》のものなら使っていいと、司令官の黒鉄が言っていた」


『…………』


「…………」


「…………」


どこか遠くで。


司令官の胃が。


痛む音が聞こえた。


「よし、行け」


「うん!」


バビューン!!


昴の姿が。


消えた。


「本当に行ったーーーーー!?」


星歌の絶叫だけが。


その場に残された。


昴は。


走る。


スライムの中を。


核が逃げる。


右。


左。


上。


下。


その全てを。


追い続ける。


そして。


核が。


表面近くへ。


「ここ!」


ランチャーを構える。


照準。


トリガー。


手を離す。


昴の姿が。


消える。


直後。


発射。


爆発。


「っ!」


スライムの巨体が。


大きく揺れた。


だが。


その瞬間。


ドンッ!!


さらに。


ドンッ!!


「…………え?」


星歌が。


固まった。


一発。


撃った。


はずだった。


なのに。


聞こえた爆発音は。


三発。


そして。


気がつけば。


スライムの周囲には。


三丁の。


空になったランチャーが。


転がっていた。


「…………」


「…………」


「…………」


「なんで三丁あるの!?」


星歌が叫んだ。


その直後。


「やったー!」


後ろから。


声がした。


全員が。


振り返る。


昴が。


いつの間にか。


そこにいた。


「一発じゃなかったの!?」


「うん」


昴が。


少し照れたように。


笑う。


「えへ、二発外しちゃった」


「その間に二回取りに戻ったの!?」


「うん!」


「見えなかったんだけど!?」


「速いからね!」


「知ってるわよ!!」


その向こうで。


スライムの身体が。


崩れていく。


今度は。


戻らない。


『核の消失を確認!』


通信から。


声が飛んだ。


『対象、活動停止! 討伐完了です!』


「やったー!」


昴が。


両手を上げる。


「三発目は当たった!」


「そういう問題じゃないのよ……」


星歌は。


三丁のランチャーを見る。


臨時拠点の方向を見る。


昴を見る。


もう一度。


三丁のランチャーを見る。


「…………」


理解したくなかった。


朔は。


満足そうに頷いた。


「予定通りだな」


「どこがよ!!」


「核が壊れるまで撃った」


「そうだけど!!」


「《組織》の装備も使った」


「そうだけど!!!」


「道路も壊してない」


「そこは偉いけど!!!!」


どこか遠くで。


また。


司令官の胃が。


痛む音がした。


「流星」


「ん?」


朔は。


三丁のランチャーを見る。


そして。


昴を見る。


「覚えておけ」


「うん」


「お前の力は、汎用性の塊だ」


「汎用性?」


「ああ」


朔は。


《組織》の臨時拠点へ。


視線を向ける。


「お前が持って走れるものなら、何でも使える」


必要なものを。


必要な場所へ。


必要な時に。


誰よりも速く。


届けられる。


「つまり」


朔は。


昴を見る。


「《組織》の力が、そのままお前の力になる」


「…………!」


昴が。


目を見開いた。


今まで。


何度も言われてきた。


速い。


ただ。


それだけ。


攻撃力がない。


敵を倒せない。


今日だって。


自分の拳では。


核を壊せなかった。


けれど。


「そっか……」


昴が。


三丁のランチャーを見る。


そして。


笑った。


「ボクが強くなくても」


「ああ」


「強いものを持ってくればいいんだ!」


「そういうことだ」


「うん!」


「後で《組織》に礼を言っておけ」


「分かった!」


「ついでに」


「うん?」


「お前が携行可能な武器を増やしてもらえ」


「分かった!」


「待って」


星歌が。


割って入った。


「今の戦いを見た直後に、それ言う?」


「必要だろ」


「必要だけど!」


昴は。


目を輝かせた。


「何増やしてもらおっかな!」


「昴も完全に味を占めてるじゃない!!」


三丁の。


空になったランチャーが。


戦場に転がっていた。


司令官の胃痛は。


まだ。


始まったばかりだった。



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