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2度目の守護者は失敗しない  作者: AIの奴隷
失敗しない男と落ちこぼれ魔法少女

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昴 怖くないもん

第十二話


「嫌じゃないよ」


昴が言った。


「じゃあ乗る?」


「それとこれとは別」


「嫌なんじゃない!!!」


星歌の声が響いた。


「違うって!」


「何が違うのよ!」


「嫌じゃないけど乗りたくないだけ!」


「それを嫌って言うのよ!」


「違う!」


「じゃあ何なのよ!」


「…………」


昴は少し考えた。


そして。


「怖い」


「嫌なんじゃない!!!」


「だから嫌じゃないって!」


「怖くて乗りたくないなら嫌なのよ!」


「ジェットコースター、怖いんですか?」


猫が尋ねる。


「うん」


「意外ね」


鏡子も少し驚いたようだった。


「そう?」


「だって」


香仁子が。


先ほど頭上を走っていったジェットコースターを見上げる。


「昴の方が速いよね?」


「…………」


昴が黙った。


星歌も。


猫も。


鏡子も。


白石も。


黙った。


そして。


全員が昴を見る。


「…………何?」


「あんた光より速く走るでしょうが!!!」


「それとこれとは全然違うよ!」


「何が違うのよ!」


「自分で走るのと、乗せられるのは違う!」


昴が力説する。


「ボクが走ってる時は、ボクが走ってるんだよ!」


「でしょうね」


「自分で曲がれるし、自分で止まれるし!」


「うん」


「でもあれ!」


ジェットコースターを指差す。


「ボク何もできないじゃん!」


「ジェットコースターだからね」


「勝手に曲がるんだよ!?」


「ジェットコースターだからね」


「勝手に落ちるんだよ!?」


「ジェットコースターだからね」


「自分で止められないんだよ!?」


「ジェットコースターだからね!」


「怖いじゃん!」


「光より速く走る人間が言う台詞じゃないのよ!」


「速さの問題じゃない!」


昴にとっては。


光より速く走ることより。


ジェットコースターに乗る方が怖いらしい。


「でも」


鏡子が首を傾げる。


「あなた、光より速いのに本当に自分で止まれるの?」


「止まれるよ」


「どうやって?」


「止まる」


「…………」


「…………」


「止まる?」


「うん」


「説明になってないわよ」


星歌が突っ込んだ。


「だって止まるんだもん」


昴は不思議そうな顔をする。


「《光速》はボクが走ってる時だけだから。走るのやめれば切れるよ」


「走ってる時だけ?」


「うん」


星歌が眉を寄せる。


「じゃあ転んだら?」


「切れる」


「バランス崩したら?」


「ちゃんと走れなくなったら切れるよ」


「ジャンプしたら?」


「走ってる途中なら平気」


「なんでよ!」


「普通に走ってても両足が地面から離れる時あるでしょ?」


「判定そこなの!?」


「ボクに言われても!」


「自分の魔法でしょうが!」


「使えるんだからいいじゃん!」


「よくない!」


「じゃあ」


鏡子が続けた。


「その速度で壁にぶつかりそうになったら?」


「止まるよ」


「自分で?」


「ううん」


昴は首を振った。


「勝手に」


「…………勝手に?」


「うん」


昴が頷く。


「何かにぶつかりそうになると、ぶつかる前に《光速》が勝手に止まる」


「何その親切設計」


「知らないよ!」


香仁子が手を挙げた。


「じゃあ体当たり!」


「やったよ!」


「やったんだ!?」


「訓練用の的に全力で突っ込んだ!」


「どうなったの?」


「ぶつかる前に止まった!」


「駄目じゃん!」


「だから攻撃力ないって言ってるじゃん!」


昴が頬を膨らませた。


「じゃあ武器持てばいいじゃん!」


「それもやった!」


「やったんだ!?」


「訓練の時に、ハンマー持たされた!」


「おお!」


香仁子の目が輝く。


「絶対強いやつ!」


「ボクもそう思った!」


「それで!?」


「重かった!」


「うん!」


「上手く走れなかった!」


「うん?」


「《光速》も発動しなかった!」


「駄目じゃん!」


「だから駄目だったんだって!」


「じゃあ重いものを持ってたら使えないってこと?」


鏡子が尋ねる。


「んー……」


昴が少し考える。


「たぶん違う」


「違うの?」


「重いかどうかじゃなくて、ちゃんと走れるかどうかだと思う」


「どういうこと?」


「何か持ってても、ボクがちゃんと走れるなら使えるよ」


昴が走る姿勢を取る。


「でもハンマー持った時は、重いし持ちにくいし、こう……」


今度は両手で巨大な何かを抱えるような姿勢を取る。


「上手く走れなかったから、発動しなかった」


「つまり」


星歌が整理する。


「重さそのものに制限があるんじゃなくて、あんたが『走ってる』状態を維持できるかどうか?」


「たぶんそれ!」


「…………」


星歌が眉間に皺を寄せた。


「やっぱり変な魔法」


「星歌に言われたくない」


「私のどこが変なのよ!」


「まだ何の魔法か分かってないところ」


「ぐっ」


的確だった。


「それで……」


猫が。


おずおずと口を挟んだ。


「ジェットコースターは、やっぱり怖いんですよね?」


「…………うん」


「じゃあ」


猫は少し考えて。


言った。


「嫌なら、乗らなくてもいいんじゃないですか?」


「猫!」


昴が振り返る。


「私も付き合いますよ」


「本当!?」


「はい」


猫が小さく笑う。


「怖いのに、無理して乗る必要はないと思いますから」


「猫ぉぉぉ!」


「わっ」


昴が猫の両手を握った。


「ありがとう!」


「はい」


「じゃあソフトクリーム食べよう!」


「それは最初から食べたかっただけですよね?」


「バレた?」


「ふふっ」


「…………」


星歌は。


猫を見る。


少しだけ。


意外だった。


少し前までなら。


猫の方が。


こういう時。


嫌だと言えない側だった。


怖くても。


嫌でも。


誰かに期待されれば。


断れない。


そんな猫が。


今は。


怖がっている誰かに。


無理をしなくていいと言っている。


「…………まあ、そうね」


星歌が頷いた。


「嫌なら無理して乗るものでもないか」


「よっしゃあ!」


昴が拳を握る。


「なんで勝ち誇ってんのよ」


「乗らなくて済んだから!」


「やっぱり嫌なんじゃない!!!」


***


結局。


ジェットコースターには。


星歌と香仁子と鏡子。


そして白石の四人が乗った。


猫と昴は。


ベンチに座ってソフトクリームを食べながら待つことになった。


「おいしいですね」


「でしょ!」


「昴さん、今日二個目ですよね?」


「遊園地のソフトクリームは別腹」


「一個目も遊園地のソフトクリームですよ?」


「…………」


「…………」


「細かいこと気にしたら負けだよ」


「そうなんですか?」


「そうだよ!」


「なるほど」


「納得しちゃ駄目よ!」


ジェットコースターから戻ってきた星歌が突っ込んだ。


「おかえり!」


「ただいま」


「どうだった?」


「楽しかったわよ」


「よかったね!」


「何よその安全地帯からの笑顔」


「ボクは楽しいよ!」


「でしょうね!」


香仁子も満面の笑みだった。


「もう一回乗りたい!」


「私は遠慮しておくわ」


鏡子が髪を直す。


「先生は?」


「…………」


白石は。


無言だった。


「先生?」


「…………ちょっと黙ってて」


「先生!?」


***


その後も。


六人は遊園地を回った。


急流すべりでは。


「濡れるって言ったでしょうが!!!」


星歌が一番濡れた。


「星歌だけすごいね!」


「なんで私だけ!?」


「日頃の行い?」


「香仁子ぉぉぉ!」


お化け屋敷では。


「ひっ!」


猫が星歌の腕へしがみついた。


「猫、痛い痛い痛い痛い!」


「あっ、ご、ごめんなさい!」


「力抜いて! 本気で掴まれたら私の腕が終わる!」


「すみませんすみません!」


「きゃあああ!」


「香仁子!?」


「びっくりした!」


「楽しそうじゃない!」


「楽しい!」


「何なのよ!」


そして。


鏡子は。


「…………」


「鏡子先輩?」


「何?」


「全然怖くないんですか?」


「作り物でしょう?」


「…………」


猫が。


尊敬の眼差しを向けた。


「すごいです」


「いや、普通よ?」


その直後。


背後から突然。


怪物の人形が飛び出した。


「ひゃあっ!?」


鏡子が飛び上がった。


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


「…………今のは」


鏡子が咳払いする。


「驚いただけよ」


「はい」


「怖かったわけじゃないから」


「はい!」


「宍戸さん。その優しい目やめて」


***


そうして。


気がつけば。


空は少しずつ。


夕方の色へ変わり始めていた。


「結構乗ったね」


「まだ乗ってないのあるよ!」


「一日で全部は無理よ」


「また来ればいいじゃん」


昴が。


何気なく言った。


「…………」


猫が昴を見る。


「また?」


「うん」


「…………」


「何?」


「いえ」


猫が笑った。


「また来たいです」


「じゃあ決まり!」


「まだ次のチケットもないでしょうが」


星歌が笑う。


「その時に考えればいいでしょ」


「はい!」


「じゃあ最後どうする?」


香仁子が園内マップを見る。


「観覧車?」


「いいんじゃない?」


「夕方だし、景色も綺麗そうですね」


そんな話をしている五人を見て。


白石はスマートフォンを取り出した。


「その前に」


五人が振り返る。


「写真撮りましょうか」


「写真?」


「せっかく来たんだから」


「撮る!」


昴が真っ先に答えた。


「どこで撮る?」


「あそこ!」


「ちょっと待って、髪!」


「猫こっち!」


「は、はい!」


「香仁子、そこだと隠れる」


「こっち?」


「鏡子先輩もうちょっと寄ってください」


「こう?」


「昴! じっとして!」


「してるよ!」


「動いてる!」


「これくらい普通!」


「写真撮る時くらい止まりなさい!」


五人が。


騒ぎながら並ぶ。


白石は少し離れ。


スマートフォンを構えた。


「撮るわよ」


「はーい!」


「三、二、一――」


シャッター音。


画面を確認する。


五人が。


笑っていた。


誰も戦っていない。


誰も傷ついていない。


制服でも。


魔法少女の姿でもない。


ただ。


休日の遊園地へ遊びに来た。


五人の女子高生。


「先生、見せて!」


「はいはい」


五人が白石の周りへ集まる。


「いいじゃん!」


「猫、ちょっと目つぶってない?」


「えっ!?」


「ほんとだ」


「も、もう一枚お願いします!」


「仕方ないわね」


もう一度。


五人が並ぶ。


白石が。


スマートフォンを構える。


その姿を見ながら。


ふと。


思う。


本当は。


あいつこそ。


ここに入っていてほしかったんだけどね。


今日。


この子たちが。


こんなふうに笑って。


何も心配せずに遊び回れたのは。


あいつがいるからなのだから。


「先生ー?」


星歌の声に。


白石は我に返った。


「何?」


「まだ?」


「あ、ごめん」


再び。


スマートフォンを構える。


「今度こそ撮るわよ」


「はい!」


「三、二、一――」


五人が笑う。


白石は。


シャッターを切った。


「撮れた?」


「今度は大丈夫」


「見せて見せて!」


「押さないの」


五人が。


また白石の周りへ集まる。


その真ん中で。


猫が。


嬉しそうに写真を見ていた。


「…………」


白石は。


そんな五人を見て。


小さく笑った。


まあ。


本人を誘ったところで。


ひょっとこの面をつけたまま遊園地を歩かれても。


それはそれで困るんだけど。


「先生?」


「何?」


「今なんか変なこと考えてませんでした?」


「考えてないわよ」


「本当に?」


「ほら、観覧車行くんでしょ?」


「あ!」


「行こう!」


「夕日見えるかな?」


「早く行かないと沈んじゃう!」


五人が歩き出す。


「先生、早く!」


「はいはい」


白石も。


その後を追った。


戦いも。


訓練も。


魔法も。


今は。


少しだけ忘れて。


今日くらいは。


ただの学生として。


遊んでいけばいい。


「先生ー!」


「置いてくよー!」


「だから先生を置いていくな!」


白石は。


笑いながら。


五人を追いかけた。


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