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2度目の守護者は失敗しない  作者: AIの奴隷
失敗しない男と落ちこぼれ魔法少女

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致命的欠点

第九話 致命的欠点


 三階の窓から飛び降りた。


 地面が迫る。


 朔は着地と同時に身体を前へ流した。


 そのまま走る。


 校舎脇を抜け。


 フェンスへ足をかける。


 越える。


 路地へ。


 走る。


 今回、マガツが出現した場所は学校から少し離れている。


 普通に道路を使えば、それなりに時間がかかる距離だ。


 だが。


 道など使わない。


 目的地までの最短距離を進む。


 ただ、それだけだ。


 塀へ飛び乗る。


 走る。


 途切れる。


 跳ぶ。


 隣の建物の壁を蹴る。


 室外機へ。


 そこから屋根へ。


 走る。


 道路が曲がっている。


 関係ない。


 建物がある。


 越えればいい。


 階段がある。


 使う必要はない。


 下りるより。


 飛び降りた方が早い。


 朔は止まらない。


 なお。


 そんな朔の頭には。


 迎えの車が来る。


 などという考えは。


 欠片もなかった。


     ◇


 その頃。


 学校の正門と裏門へ。


 ほぼ同時に二台の車両が到着した。


 組織が手配した送迎車両である。


 一台は正門。


 五人の魔法少女を現場へ運ぶためのもの。


 こちらは問題なかった。


「お待たせしました!」


「ありがとうございます!」


「五名全員ですね?」


「はい!」


「乗ってください。すぐに出ます!」


 星歌たち五人が乗り込む。


 扉が閉まり。


 車両はすぐに現場へ向けて走り出した。


 そして。


 もう一台。


 裏門へ到着した車両。


 こちらは。


「望月朔くんのお迎えに来ました」


「…………」


 対応した白石の顔が。


 引きつった。


「あの……」


「はい?」


「望月くんなんですが……」


「はい」


「もう行きました」


「…………はい?」


「本当にすみません!」


 白石が勢いよく頭を下げる。


「ちょっと目を離した隙に三階の窓から飛び降りまして!」


「三階!?」


「はい!」


「…………現場へ?」


「多分!」


「多分!?」


「いえ! 現場です! 現場に向かったはずです!」


「…………」


 職員は。


 裏門の向こうを見る。


 当然。


 望月朔らしき姿など。


 どこにもない。


「いつ出ました?」


「ついさっきです!」


「…………」


 少し考える。


 ここから現場までは距離がある。


 徒歩で向かったのなら。


 まだ途中にいるはずだ。


「分かりました」


 職員は車へ戻りながら言った。


「まあ、さすがに車より早く着くことはないと思いますので。現場に戻りつつ探します。途中で見つけたら拾いますね」


「本当にご迷惑おかけしますーー!!」


 白石の声を背に。


 車両は学校を出発した。


     ◇


 その頃。


 朔は。


 既に学校から現場までの、およそ半分を走破していた。


 屋根を走る。


 跳ぶ。


 塀へ。


 走る。


 降りる。


 道路を横切る。


 再び塀へ。


 目の前に建物。


 脇へ回る必要はない。


 壁を蹴る。


 窓枠へ足をかける。


 上へ。


 屋根へ。


 そのまま向こう側へ。


 朔にとって。


 道路とは。


 人間が目的地へ向かうために用意した道でしかない。


 目的地へ向かうのに。


 道路を通らなければならない理由はない。


 故に。


 直進する。


 ひたすら。


 直進する。


     ◇


 現場では既に。


 組織の職員たちが対応を開始していた。


 周辺住民の避難。


 道路の封鎖。


 結界の展開。


 マガツの位置と数の確認。


 慌ただしく動く職員の一人が。


「…………ん?」


 何かに気づいた。


 向こうから。


 一人。


 走ってくる。


 腰に刀。


 顔には。


 ひょっとこ。


「…………」


 職員が時計を見る。


 もう一度。


 ひょっとこを見る。


「…………早くね?」


「そうか?」


「いや……」


 時計。


 ひょっとこ。


 時計。


「学校から来たんだよな?」


「ああ」


「…………早くね?」


「そうか?」


「早いと思うけどな……」


 朔は気にせず。


 現場へ入る。


 そのとき。


 職員の通信機に連絡が入った。


『こちら送迎車両』


「はい」


『魔法少女五名については、正門側の車両が無事回収しました』


「了解」


『ただ……望月さんが見当たらなくて』


「…………」


 職員が。


 目の前のひょっとこを見る。


『学校を出たとは聞いているんですが、こちらへ戻る途中にも姿がなく――』


「…………今、現場にいます」


『…………はい?』


「望月さん。今、俺の目の前にいます」


『…………』


「…………」


 少し。


 沈黙が流れた。


『…………早くないですか?』


「俺もそう思います」


「そうか?」


『「早いです」』


「…………」


 朔は首を傾げた。


「そうか」


 どうでもよさそうだった。


 職員は。


 それ以上考えるのをやめた。


「それより」


 朔が空を見る。


「敵は?」


「あちらです」


 職員が指差す。


 朔も。


 その先を見る。


「…………クラゲか」


 空に。


 薄紫色の何かが浮かんでいた。


 一体。


 二体。


 三体。


 それだけではない。


 複数。


 半透明の傘状の身体。


 そこから伸びる。


 長い触手。


 どう見ても。


 クラゲだった。


 ただし。


 海ではなく。


 空を漂っている。


「飛行型です」


「ああ」


「かなり高度を取っています。接近も難しいかと」


「攻撃は?」


「触手から棘を飛ばします」


 直後。


 一本の触手が。


 地上へ向く。


「来ます!」


 ――ヒュッ!


 鋭い何かが飛ぶ。


 地面へ。


 ――ガンッ!!


 突き刺さった。


 長い。


 硬質な棘。


「なるほど」


 朔は上空を見る。


 飛行型。


 地上からは攻撃しにくい。


 敵からは。


 一方的に攻撃できる。


「…………」


 やりようがないわけではない。


 だが。


 それでは。


 五人を守れない。


 朔は通信機へ手を伸ばした。


「こちら望月」


『はい』


「敵は飛行型。地上からの攻撃は届きにくい」


『確認しています』


「応援を待機させてくれ。遠距離型がいい」


『今からですか? まだ五人も到着していませんが』


「だからだ」


『……?』


「あいつらで対処できるかは、まだ分からない」


『では、最初から応援を出しますか?』


「いや。まずは五人にやらせる」


『…………』


「だが、駄目だと分かってから呼んだんじゃ遅い」


 朔は。


 空を漂うマガツを見る。


「俺に失敗はない」


「故に、応援を待機させてくれ。遠距離型だ」


『……了解しました』


 通信を切る。


 しばらくして。


 車両の音が聞こえた。


「到着しました!」


 扉が開く。


「急いで!」


「分かってる!」


「わ、私も行くんですかぁ!?」


「ここまで来て何言ってんのよ!」


 五人。


 全員。


 現場へ到着した。


「ひょっとこさん!」


「ああ」


 朔が五人を見る。


「敵は上だ」


「上?」


 星歌が見上げる。


「…………うわ」


 空を漂う。


 薄紫色のクラゲの群れ。


「何あれ……」


「クラゲ?」


「飛んでるね」


「嫌な予感しかしないんだけど……」


 その瞬間。


「来るぞ」


「え?」


 触手が。


 一斉に。


 地上へ向いた。


「鏡子!」


「分かった!」


 鏡子が前へ出る。


「《氷壁》!」


 巨大な氷の壁が。


 五人の前へ立ち上がった。


 直後。


 ――ガガガガガガガガッ!!!


「きゃあっ!」


 無数の棘が。


 氷壁へ突き刺さる。


「大丈夫!?」


「大丈夫!」


 鏡子が答える。


「この距離なら止められる!」


「よし!」


 星歌が氷壁の向こうを見る。


「じゃあ次はこっちの番!」


 手を前へ。


「《魔力球》!」


 光の球が生まれる。


 撃つ。


 空へ。


 飛ぶ。


 飛ぶ。


 飛ぶ。


「…………」


 勢いが落ちた。


「…………あれ?」


 まだ。


 敵まで距離がある。


 魔力球は。


 そのまま消えた。


「…………」


「…………」


「…………届いてなくない?」


「そ、そんなこと……!」


 昴も撃つ。


「《魔力球》!」


 飛ぶ。


 消える。


「…………」


「鏡子!」


「やってみる!」


 撃つ。


 飛ぶ。


 届かない。


「香仁子!」


「任せて!」


「ちょっと待って爆発は――」


「大丈夫! 小さくするから!」


 香仁子の指先に。


 小さな光球が生まれる。


 飛ぶ。


「いけー!」


 上へ。


 上へ。


 そして。


 敵へ届く。


 遥か手前で。


 ――ぽんっ。


「…………」


「…………」


「…………」


「…………てへぺろ」


「てへぺろじゃない!!!」


「でも届かなかっただけで爆発は小さかったよ!」


「今そこ褒めるところ!?」


 星歌が頭を抱える。


「猫!」


「ひゃい!?」


「猫も――」


「…………」


 止まる。


 猫を見る。


 猫も。


 星歌を見る。


「…………」


「…………」


「猫って」


「はい……」


「魔力……身体の外に出せないのよね?」


「はい……」


「…………」


「…………」


「《魔力球》は?」


「撃てません……」


「そうよねぇぇぇぇぇ!!!」


 猫が申し訳なさそうに縮こまる。


「ご、ごめんなさいぃ……」


「いや猫が悪いんじゃない! 悪いんじゃないんだけど!」


 星歌は次に。


 昴を見る。


「昴!」


「なに?」


「あなた速いわよね!?」


「速いよ!」


「ものすっごく速いわよね!?」


「うん!」


「じゃあ――」


 星歌が。


 空を見る。


「…………」


 昴も。


 空を見る。


「…………」


「飛べる?」


「飛べないよ?」


「…………」


「…………」


「じゃあ無理じゃない!!!」


「だからボクもそう思った!」


「元気よく言うなぁぁぁぁぁ!!!」


 ――ガガガガガガッ!!!


「また来た!」


「《氷壁》!」


 鏡子が防ぐ。


 防げる。


 それは。


 問題ない。


 棘は。


 止められる。


 誰も怪我をしていない。


 だが。


 星歌が。


 氷壁の向こうから。


 空を見る。


 クラゲ型マガツは。


 遥か頭上を。


 悠々と漂っていた。


「…………」


 守れる。


 だが。


 届かない。


「…………」


 星歌の頬が。


 引きつった。


「…………ねえ」


「何?」


「もしかして私たち……」


 もう一度。


 空を見る。


「誰も攻撃、届かなくない?」


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


 沈黙。


 そして。


「倒せなぁぁぉぁぁぁいっ!!!


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