なかよし
お弁当を食べ終えて、いつの間にかきっぱりと気まずい雰囲気がなくなっている。それどころかもっと仲良くなれた気がする。
今までもそれなりに仲が良かった気がするけど、僕の中でやっと友達になれた感覚がした。
「さて、帰りますよ」
「うん」
放課後になり、今日も一緒に帰る。昨日は二人で帰っていたけど、今日は尾園さんもいて少し違う雰囲気だ。
「仲直りできた?」
「喧嘩なんてしてない」
「うん、僕たちいつも通りだったよ」
「え……そうなん?」
そんなわけないだろみたいな顔をされているが、多少気まずかっただけでいつも通りの雰囲気だった気がする。
「ああ、いつも通りだ」
なんだか表情がいつもよりも柔らかくなった気がする。笑った顔も、まじめな顔も、少し失礼かもしれないけどロボットみたいだったから。今はなんだか、ちょっとふにゃっと笑っている気がする。
「ならいいけど」
「そうだ綾瀬君。お弁当だが、また作ってくれないか」
喋り方が中将みたいでちょっと気になるけど、それも速道さんの面白いところということで。
「それはいいけど、今日みたいに気合い入ったもの作らないかもだけど」
「それでもいい」
「何これ、カップルか」
確かにそう言われてみるとカップルに見えてしまうかもしれない。お互いそこまで気にしていないだろうし、大丈夫だと思うけど。
しかしお弁当をまた作るとして、何を入れるべきだろう。もうトンカツとか入れられないし、かといって特段入れたいものがあるわけでもない。速道さんの好きなものばかり入れるのは違う気がするし……その時の気分で決めるとしよう。
「カップルではない!」
「え、そんな否定する? ねえ綾瀬君からも何か言ってよ~」
「僕? 特に意識してみたことがないからわからないかな」
まだ友達段階なのだからカップルとかそういうのはあまり気にしないようにしている。もしも好きになったとして、その時に意識し始めるべきことだと僕は思っている。
「そうなの~?」
「そうだぞ、私たちはまだ友達だ」
「へ~」
にやりと猫のいたずら前のような表情をしたまま、速道さんに質問を投げかける。速道さんにとってその質問は、あまりにもこたえずらいものだった。
「じゃあ、なんで朝はあんなに気まずくなってたの?」
言えない。尾園さんと僕を間違えて速道さんが抱き着いてきてしまったなんて言えるわけがない。当たり前だろう。これこそカップルがやるようなことなのに、それを僕ら自身で言わなくてはいけないのだから。
「そ、それはほら、あれだ」
「あれってどれ?」
何かこの場を切り抜けることができて、本当に起きそうな出来事はないだろうか。何度も電柱にあたってとかそういうのはできないし、僕が速道さんとの勝負に連勝してしまったとかだったら気まずいじゃなくて速道さんはいじけてしまったとかだろうし……あ、いいものがあった。
「た、立て続けに犬の糞踏んじゃって……ね?」
「なるほどね。まあそれでいいや」
それでいいとはどういうことだ。もしかして僕たちが一緒に行くところをどこかから見ていたというわけではないだろうな。でも尾園さんは珍しく早く来ていたし……わからない。
「な、なんだその返事は」
「いや? まあ? もしかしたらっていうのがあったかもだし」
「もしかしたらって例えば?」
僕が問いかけると尾園さんは言葉を発さなくなってしまった。というより顔を赤くして何かごにょごにょ言っている。これがさっきまで押せ押せムードだった人と同一人物ということに少し驚きだ。
「言えないのか?」
「言わなくてもいいじゃん」
「まあいい、駅に着いたな」
「うん、またね」
「ああ、また明日」
……ん? また明日? 明日といえば土日で休みだったはずだけど、もしかして僕の知らないところで勝手に予定が組まれてるのだろうか。
だとすれば特に何も準備できていないから延期か注視してほしいところだけど、速道さんたちが先導していた場合はそうもいかない。
そんなことを考えているとスマホの方から通知音が鳴った。
『すまない、伝え忘れていたが明日は三人でお料理教室だ』
お料理教室……ああ、もしかして速道さんに三人で料理を教える会ということなのかもしれない。
料理を教えるという点に関してはいいが、もっと早くいってほしかった。いろんなことは最速なのに、報連相はそうでもなかったみたい。
何も考えずに帰っている帰り道で、明日何を作るか考えながら家へと帰った。




