体育祭の始まり
学校の体育祭にしては珍しく、ファンファーレが流れている。僕たちは一年めだからよくわかっていないが、先輩たちは盛り上がっている。
「楽しみだね」
「やるなら一位でしよ」
瞬ちゃんが話しかけてきたかと思ったら、尾園さんがいつの間にか後ろにいた。確かに、どうせなら一位を取っておきたいところではある。
「そりゃそうでしょ」
「玉入れ頑張れよ」
次々と教室に集まってきた。僕が話す隙間がなかったが、みんな応援してくれているようだ。
「速道〜・・・・・・ね? わかった?」
「う、うん」
瞬ちゃんをどこかへ連れて行き、尾園さんは何かを言ったようだ。いつもの流れすぎてもう何をされても驚かない。
「は、遥君」
「なに?」
瞬ちゃんが何かをしようとしたようだったが、その手を止めた。
尾園さんは少し驚いた表情だったけど、何かを無理やりやらせようとしているわけではないらしい。
「遥君、た、体育祭終わったら・・・・・・」
「終わったら?」
「ふ、二人になれる場所・・・・・・どこだろう・・・・・・」
僕以外の二人がずっこけた。あそこまでコメディっぽくなっている二人は、あまり見たことがなかった。
「言いたいことはわかったよ」
「じゃあ終わったら俺らは帰るかー!」
「そ、そうだね! 私たちはすぐ帰ろー!」
なぜか教室中に聞こえる声で言っている。意味がよくわからなかったが、二人は先に帰ってくれるようだ。
「お前らそろそろ外でとけよーあと騎馬戦が一人休みだから補欠決めとけ。背が小さくて軽いやつな」
もうすぐで始まる。外で何かをしたり、運動こそ苦手だけど、みんなとするのは楽しそうだ。
一つ気になることは、背が小さくて軽いやつが騎馬戦に出てない人の中で残っているのは僕くらいということだ。
開会式を終えて、一番最初に行われるのはグラウンドを半周走る徒競走。ここでは田向君が出場している。
田向君曰く、走るのがそこまで走るのが得意ではないらしい。僕もこれにでたかったが、埋まっていたからでられなかった。
「勝てよー! お前らー!」
「田向君頑張ってね」
「おう、三位くらいにはなれるように頑張るわ」
「そこは一位でしょうよ」
「そうだよ田向君、頑張って」
僕らの応援もあってか、徒競走での田向君の順位は二位、総合で三位という結果になった。体育祭第一種目としては上々の出だしだろう。
「いや〜疲れた。次なんだ?」
「玉入れだから、私たちだね」
何種目目かくらいは確認しておけばよかった。
「玉入れの人準備して〜」
女子が多く並んでいく中、一人僕だけが男子としてちょこんと居座る。不安で周囲を眺めてみると、僕のクラス以外は男女がトントンくらいだった。
そんな僕を見かねたのか、瞬ちゃんが背中を叩いて喝を入れてくれた。
「大丈夫、私たちは勝てるよ」
「う、うん」
瞬ちゃんの目は燃えていた。一位になることだけを考えている目だった。
それで悩んでいるわけではなかった。だが、僕の不安は一気に吹き飛んだ。
「行ってきまーす!」
瞬ちゃんは座席に向けて手を振っている。あの頃の、素の自分で話すことに緊張していた頃とは大違いだ。
「やっぱ可愛いよな」
「俺昼飯誘ってみるわ」
そんな声が聞こえてきたからか、がぜん燃えてきた。なんでそうなったのかはわからないけど、とにかく燃えた。
玉入れは圧勝に終わった。瞬ちゃんと僕でとにかく玉を入れた。みんなに少し引かれたけど、勝てたのでまあ大丈夫だ。
「おお、帰ってきたな綾瀬」
「え、はい。どうかしたんですか?」
「あーお前騎馬戦の補欠やってくれ」
やっぱりこうなってしまった。人間って悪い予感だけはよく当たる気がする。騎馬戦は次の次だったはずだが、僕にできるだろうか。




