今日はちゃんと
今日も今日とて学校が終わり、帰宅の準備をする。いつも通り瞬ちゃんと帰ろうと思ったが、瞬ちゃんは尾園さんに、僕は田向君に呼ばれてしまって一緒に帰れなかった。
「この間のやったか?」
「うん、やってみたよ」
頭撫でてみろとか言うよくわからないことだったけど、言われたとおりにやってみた。当然よくわからない気持ちになったが、悪い気はしなかった。むしろちょっとこのまま甘やかしてみたいという気持ち悪いような感情が芽生えてしまっていた。
「そうか、どう思った」
「ん~ちょっと難しいんだよね」
「どんな感じだったか変でもいいんだ、教えてくれ」
そこまで言うならと感じたことをなるべく詳細に伝えた。途中で少し苦いような顔をしていたけど、それは気のせいだと思って話続けた。
「……よし、よし分かった。もうやめてくれ」
「え、もうちょっとあるけど」
半分くらい話したところで止められてしまった。でも、顔を見るにもう聞きたくないと言われているような表情をしている。
そんなに聞きたくないならなんで話させたんだろう。まあ、理由があってしてるんだろうし、僕の感じているものの正体も教えてくれるみたいだからいいんだけど。
「もういい。十分わかった」
「何がわかったの?」
「いいか、これは確証じゃないからな。尾園さんと俺で話し合って出した結論だ。絶対間違ってないと思うけど」
そこまで自信があるならちゃんと言い切ってほしいところだけど、覚悟して聞いておいた方がいいのかもしれない。
しかし、僕が覚悟して聞いておかないといけないこととは何だろうか。僕が覚悟することといえば、バイト代の減給についてとか成績が著しく下がった時くらいだけど。
「綾瀬のそれはな、少なくとも友達に思う感情ではないぞ」
「え?」
そんなわけない。友達に思う感情じゃないなら……いったいなんだというんだ。特にそれといった感情は思いつかない。
そういえば瞬ちゃんは尾園さんに連れていかれていたな。もしかしたら、こういう話を瞬ちゃんも尾園さんから聞いているかもしれない。
「これを直接速道さんに確認しようなんて思うなよ」
「ダメなの?」
なぜか体温が上がっている。顔も少し赤くなっている……気がする。
しかし、本人に確認してはいけないとはどういうことだろう。別に僕が感じていることなら瞬ちゃんも感じていてもおかしくはないと思うけど、それでもダメなんだろうか。
「当たり前だろ」
「なんで?」
「それは言えない」
せっかく楽しみにしていた田向君の答え合わせみたいな感じだったのに、なんだかあっけなかったな。
もうちょっと楽しめるような内容だと思ったけど、この気持ちについてはゆっくり考える必要がありそうだ。
「まあ、どうせすぐにわかるようになる」
「ならいいけど」
やっと終わると言わんばかりの表情をしているように見えるけど、終わるにしてもいったい何が終わるというんだろうか。
「明日から体育祭の練習だろ、遅れるなよ」
「うん」
気づけばいつの間にか夏休みが終わって一か月がたっている。結構ゆっくり進んでいたはずの日付も、もう十月に入りかけている。時間の流れというものは意外と早いものだ。
来週に控えている体育祭。あんまり運動は得意な方ではないけど、ちゃんとできるように練習しておこう。
「じゃあな」
「うん」
すぐわかると言われた田向君の言葉を信じて、明日からの瞬ちゃんに注目していこうと心に決めた。
同時に、あの言葉を聞いた時の心臓の鼓動が早くなった理由についても理解したいと考えながら帰り道を歩く。もしかしたら、僕は無自覚に本当の想いを知っているのかもしれない。
それをちゃんと感じるためにも、これについて考えることをやめたくはない。




