尾園と田向の小話
「ねね、あの二人どう思う?」
「もうわからん、どうしたってくっつかねえ」
とある夜、二人で通話をつなぎ速道と綾瀬について語り合っている。
「どっちも悪い子じゃないんだけどね……」
「そりゃそうだろ」
「でもさ~そろそろよくない? いい加減くっついてほしいわ」
「きついだろ。速道の方が自覚してても告る勇気ないんなら」
「綾瀬君の方は好きとかの気持ちはあるんだろうけど全く気付い感じするし」
「そうなんだよ。めんどくさいから今度教えてやろうと思ってる」
「もうそれでいいよ、うん。あれをこれ以上見せられても困るって感じ」
酷い言いようだが、両者の意見はちゃんと一致しているようだ。
「てかさ、明日速道がヤバくなりそうなんだよね」
「ヤバくなるってどんなだよ」
「なんか『私って遥君のお姉ちゃんだったのでは?』とか言い始めちゃって」
「なんでそんな話になったんだよ」
「え、まあ距離遠すぎるよねって言っただけだけど」
「そうはならんだろ」
「なってるんだからどうしようもないじゃん」
「それはわからんでもない」
「そもそもさ~最初の方から好意満開だったじゃん」
「そう思うが、俺でもあれは気づかないと思う」
「私も思うよ? ただ、今は違うじゃん?」
二人をどうくっつけるかの話のはずが、付き合ってもないのに甘い空間が漂い続けている二人の愚痴大会が始まっている。
「確かにな。綾瀬の方はそろそろ気づいていいと思う」
「ね」
「綾瀬だけ速道さんを見る目が違うんだよ」
「え、どんな目してんの」
「俺たちを見るときは普通っていうか……まあ普通なんだよ。でも速道さんを見るときが柔らかすぎるんだよ。愛犬見てるみたいな」
「なんとなくわかるわ~三人で登校してるときとかずっとそんな感じ」
「地獄じゃねえか。大丈夫なのかよ」
「甘すぎて吐きそう」
「ラブコメ読むけどさ、あれと同じくらいの甘さだよな」
「マジで」
「話の中ならもう付き合っててもおかしくないだろ」
「うん、もう五回は告白する瞬間あったよ」
「ほんとどうしてやろうか」
「あ、ちょっと待って速道から連絡来た」
内容は『どうしよう、明日が待ちきれない』という連絡だった。
「どんな連絡だよそれ」
「まあ知らないふりしてくれると助かるかな」
「頑張るけどさ、俺の方も速道さんのこと紹介してほしいってやつがいるんだよ」
「それは……厳しいでしょ」
「無理無理、あの間に入ってこられる奴なんてどんなイケメンでも不可能だろ」
「それより明日だよ、私たちどうする?」
「そりゃあ傍観者に徹するしかない」
「多分明日はひどいことになるんだけどね。速道が綾瀬君のこと抱きしめようとしたりなんなりしようとして」
「もう考えるのやめね?」
「無理でしょ、私どうせ目の前で見ないといけないんだし。これ相談できるの田向君くらいなんだから」
「俺も尾園さんくらいしか相談相手いないけどさ……もうちょっと被害者増やすのもありじゃないか」
「確かに」
「じゃあ渡辺さんとか? あの子なら被害者兼相談者として良い感じになりそう」
「あの子はだめ。魅力について死ぬほど語りだしちゃう」
「じゃあそうだな……」
そうして二人の話は、自分たち以外の『この甘い空間を致死量浴びる被害者を増やすか』に変わった。この後話は二時間以上続いたそうだ。




