速道さんと夏休み最後の思い出2
しばらく歩いていると普通に滝があった。これもこの場所のアトラクションの一部らしいけど、みんな当たり前のように滝に打たれている。
「ね、滝あったでしょ」
「あったけど、これ本当にアトラクション?」
「そうだよ。水があったかいの」
なるほど、体験版滝行というわけか。周りを見てみると意外と人が多く並んでいて、人気のアトラクションであることがわかる。
次のウォータスライダーにつながっているようで、一回の入場で二つ分楽しむことができるらしい。
「そろそろだね」
「瞬ちゃんはやったことある?」
「それが無いんだよね」
多分瞬ちゃんは楽しそうだからっていう理由で来たんだろうな。
しばらくして、僕たちの番が回ってきた。時間は五分取られていて、その間ずっと滝に打たれ続けるというものだ。
入ってみると、見た目ほど勢いがなかった。適度な痛みと水の重さが伝わってきて、やっぱり体験版のような感覚に近かった。
あっという間に五分が経過して、ウォータースライダーの方へと歩いていく。
「いや~ちょっときつかったな~」
「そう? 僕は大丈夫だったけど」
「綾瀬君強いね~」
確かに瞬ちゃんは倒れないように踏ん張っているようにしていた。体幹の違いなのか、はたまた男女で何か差があるのかわからないけど、とにかくお互い楽しめたようだ。
「次はあれでしょ」
「そうだね」
「あ~……」
ウォータースライダーの方に向かっていくとき、瞬ちゃんが足を止めて何かを見つめている。
その方に目をやると、ある立て看板が目に入った。
『二人一組! 恋人や家族と楽しもう!』
という内容の看板だった。僕はあまり気にしないつもりだったけど、これを見てしまうと、少しは気にしてしまう。
「い、嫌ならあっちから抜けれるけど……」
「……さ、最後まで楽しもうよ」
抜け道を見つけてそっちの方に歩いていこうとしたとき、腕を掴まれて止められた。瞬ちゃんの目はグルグルしていて、声も少し震えていた。
本当は少し嫌なんじゃないかと心配しながらも、ついに階段を上り切りすべる場所まで来てしまった。
「どちらが前に乗りますか?」
目の前には特大の浮き輪が用意されていて、そこに二人入って滑るようだ。
僕と瞬ちゃんはほとんど身長が変わらないから、どちらが前でもいい。だけどここは僕が後ろに乗った方がいい気がする。なんでかわからないけど、こればかりは後ろに乗らないといけない。
「ど、どうする?」
「僕が後ろに乗るよ」
以外にも僕たち二人で乗るとすっぽりハマって、そう簡単に抜けないようになった。
「彼氏さん後ろから支えててくださいねーではカウントいきまーす」
「かれっ?!」
瞬ちゃんが何か言っていた気がしたけど、従業員の人のカウントダウンと水の音でよく聞こえなかった。
支えておいてとのことだったが、これはどうやって支えればいいんだろう。腕で支えようとすると首の部分を掴んでしまうし……とりあえず浮き輪についている持ち手で支えることにした。
「それでは行ってらっしゃいー!」
「ひゃーーーー!」
勢いが早くてリアクションの隙もなかったけど、瞬ちゃんが叫んでいたのは聞こえてきた。
勢いよく飛び出した先は海だった。海に面しているのだから当たり前だけど、ここは果たして足の着く深さなのだろうか。
「ふぉーーー!」
海に着地した衝撃で少し浮いた。浮き輪につかまったままだったから大丈夫だったけど、やっぱり足の着く場所ではなかった。
「はー楽しかった」
「瞬ちゃん」
「どうしたの?」
「足着かない……」
大笑いしながら僕の手を引いて浜辺まで泳いでいってくれた。確かにウォータースライダーは楽しかったけど、そのあとの足がつかなかったときの方が印象が強かった。
浜辺について、海の方を眺めてみるともう夕方になっていた。
「そろそろ帰る?」
「うん、私はすっごく楽しんだ」
「僕もだよ」
お互いに疲れているのか、ゆっくり歩いて更衣室へと向かった。
「あれ、綾瀬じゃん。来てたんだ」
「田向君も来てたんだね」
「誰と来たんだ? 俺は尾園に連れられてきたんだけど」
よくわからない組み合わせだな。尾園さんこういう少しチャラい人が好みだったりするんだろうか。
「僕は速道さんと来てたよ」
「あ~なるほど」
「なるほどって?」
「いや、こっちの話。尾園が俺を誘った理由がわかったよ」
ここに来て同じクラスの人が見えた気がしていたけど、やっぱりいたみたいだ。もしかすると、瞬ちゃんの方も尾園さんと出くわしていたりするのかな。
「速道さんってあのめっちゃ早い人だろ? 綾瀬がそんな奴と友達なんて意外だったな」
「そう?」
そんな話をしながら退場口へと歩いていく。思った通り尾園さんと合流していたようで、二人で待っていた。
「そろったし帰ろ」
全員疲れているのか、特に話もしないまま電車に乗った。みんな普段なら元気よく話しているイメージだけど、今日ばかりはそうじゃないらしい。
電車の揺れは少し心地よく、疲れた体に眠気をもたらしてきた。
「瞬ちゃん、眠いの?」
「ん? あーうん……」
その言葉を最後に、瞬ちゃんは僕の肩で眠りについてしまった。人の寝息というのはなぜか安心してしまうもので、僕もしばらくして眠ってしまった。
次に起こされたときは瞬ちゃんが降りている駅の時だった。なぜか尾園さんたちがニヤニヤしていたけど、いったい何があったんだろうか。




