閑話:結果と変化
テストが終わり、結果が返ってくる。当日に二人に何か起こらないか心配だったけど、大丈夫そうだった。
速道さんを見るとチャイムが鳴るまでしっかり問題に向き合っていそうだった。尾園さんも最初から寝ることなく解いていそうだった。
「どうだった?」
「うむ、何の問題もなかった」
「これ怖すぎてまだ見れない……」
どうやら速道さんは全教科赤点を回避することができたようだ。尾園さんはひらひらと紙を揺らしながら泣きそうになっている。
どうやら最後に帰された英語のテスト結果に自信がなかったのか、いまだに見ることができていないらしい。
「大丈夫だって」
「そうだぞ、バイトのために頑張ったんだろう」
「ん~だって全然解けなかったし……」
しばらくして、背筋を伸ばし始めた。ついに覚悟を決めて、裏にしていたテスト用紙をひっくり返した。
「ふむ」
「よかった~」
そこに書いてあったのは六十七点、余裕で赤点を通り抜けている点数だった。全身の力が抜けて、椅子に座り込んでいる。
「さて、帰るとしよう」
「そうだね」
「あ、私バイトだ。じゃね」
尾園さんは走ってバイトへと向かっていった。取り残された僕たちはゆっくりと帰り道を歩いている。
最近、速道さんが最速最速と言っていない気がする。何か悪いものでも食べたのか、これが素の速道さんなのかわからない。
「速道さん」
「どうかしたか?」
「いや、大丈夫」
「そうか」
本人に直接確認しようとしたのだが、速道さんの笑顔を見て大丈夫そうだと思った。それにしても、速道さんは最近いろんなことに挑戦している。料理だったり勉強だったり、少し前までは最速を追い求めて若干人生のRTAをしているかのようだった。
「ふぅ……」
心なしかこんな風にため息も増えた気がするし、何よりたまに喋り方が砕けたようになる。
「綾瀬君」
「ん?」
「ありがとね」
速道さんは頭を撫でてきた。恥ずかしいとかそういう感情はわいてこなかった。それよりも、速道さんがおかしくなっているという認識がより強まった。
「速道さん、変なものでも食べた?」
「いや、食べていない」
「じゃあ、最近最速を求めなくなったのはなんで?」
「それは……なんでだろう?」
やっぱり速道さんは速道さんだったみたい。
速道さんはおかしくなったんじゃなくて、速道さんは変わろうとしているんだ。その理由を僕は知らないけど、それを止める理由はない。
「わからないの?」
「ああ、わからない」
本人にもわからない無意識レベルでの変化なんてそうそう起こることではない。
「そっか」
「でも、なんだか悪い気はしない




