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時間に表せない感情

僕の方が取り残されている気がした。

時間を気にしているのは、僕だけ。

覚えていないことも、

怖がっているのも、

疑問に思っているのも。

僕だけ。


駅前のカフェで、クラスメイトたちの話し声を聞いた。

「最近さ、昨日のこととか、全然覚えてなくても困らなくない?」

「わかる。写真あるし、履歴あるし。記録あるし。」

「スマホ一台あれば楽だもん」

「逆に覚えてる方が疲れるよな」


笑いながら、当然のように、そんなことを言っている。

誰も怒ってない。

誰も困ってない。

だから余計に、異常だと気づけない。


帰り道、幼馴染が立ち止まった。

「ねぇ」

「なに?」

「今日さ、楽しかった?」

不意打ちだった。僕は聞き返す。

「…..どうして?」

「なんとなく聞いただけ。覚えてなくても、楽しかったかどうかだけ分かればいいかなって。」

そういって、自然に笑った。

その笑顔はたぶん本物だった。。

でも、僕は答えられなかった・


「嬉」という感情。

「怒」という感情。

「哀」という感情。

「楽」という感情。

何年、何月、何日、何時、何分、何秒、地球が何回、回った日に生まれたのだろうか。

どの瞬間に、そう思ったのだろうか。

泣きたい。愛されたい。認められたい。理解されたい。大切にされたい。受け入れられたい。必要とされたい。落ちつきたい。安心したい。癒されたい。休みたい。帰りたい。立ち直りたい。話したい。話しかけられたい。つながりたい。そばにいたい。一人になりたい。距離を置きたい。甘えたい。変わりたい。強くなりたい。成長したい。自由になりたい。本当の自分になりたい。逃げたい。壊したい。消えたい。投げ出したい。何も考えたくない。笑いたい。楽しみたい。満たされたい。生きていたい。前に進みたい。

そんな感情。

それを思い出せないまま、「楽しかった」「嬉しかった」と言っていいのだろうか。


夜、自分の部屋で時計を見る。

秒針が、正確に進んでいる。

でも、みんなはそれを見ない。

疑問を持たないと言うことは、楽になると言うことだ。

正確さを求めると言うことは、考えなくていいと言うことだ。

それでも僕は、あの日の言葉を手放せない。

『何時、何分、何秒、地球が何回、回った日?』

みんなはもうその問いを必要としていない。


僕だけが思っていること。僕が忘れないこと。僕が聞きたいこと。僕が探したいこと。

だから今度は、僕の番だ。

この問いを忘れないでいる理由を。

ちゃんと、見つけなければならない。

僕が、そうしたいから。

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