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現在時刻  作者: shr
6/7

覚えていることは、記録してあることだけ。

昼休み、僕は、図書室に向かった。

理由は特にない。

ただ、教室の、みんなの、時間の音が聞こえない場所に行きたかった。

古い本棚の間で、一冊の地下資料室集は目に入った。


地球の自転。

1日は24時間。1時間で15度。

回転数は秒単位で計算できる。

数式による正確な数字が並ぶ。

でも、ページをめくっても、めくっても、


めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても、めくっても。


「今、この瞬間に、何回、回ったのか」は書いていない。

当然だ。

そんなものを書く必要がない。

必要がないから、誰も答えを持っていない。


その時思った感情も、その時感じた雰囲気も、必要がないから、誰も覚えていない。

考えすぎだとは思う。

でも、一度思ってしまった。

思ってしまったからこそ、そのことが少しだけ怖かった。



放課後、幼馴染からスマホにメッセージが届いた。

『今日、話せる?』

『駅前で待ってるね』


駅前のベンチで会うと、幼馴染は開口一番、こう言った。

「私さ、昨日のことも抜けてる」

「どれくらい覚えてる?」

「....記録に残ってるぶんは...ところどころだけど...。」

....したこと、やったこと、行ったところ、会った人、食べたもの、飲んだもの、全部、全部記録されている。

でも、感情は、その時思ったこと、考えたことは、抜け落ちる。


思い出として残らない記憶。

長いようで短い。

でも、人の感情には十分な時間だ。


「記録jは残ってる。撮った写真も、撮った動画も。自分が笑ってるのもわかる。君が一緒に写ってるのもわかる。でも_______。」

幼馴染は次の言葉を探すみたいに、少し間を置いた。

「その笑顔が、私のものだった感じがしないの。私、こんなことしてないって。心ではわかってるのに、納得がいかない。」

それは、記録と記憶のズレだった。

正しい時間は残っている。

正しい表情も残っている。

でも、本人だけが置き去りになっている。


帰り道。信号の前で立ち止まる。

赤だ。当たり前のこと。青まで数分。

時間のカウントダウンが刻一刻と、正確に進んでいく。

幼馴染も、他のみんなもスマホを見る。

僕は、スマホをポケットにしまったまんまだ。

この、数十秒を覚えていられるかどうか。

青になって、歩き出す。

何も起きない。何事も。

普通の、ただの、当たり前のいつもの景色。いつもの帰り道だ。

もし、この数秒が消えるとしたら、それは偶然じゃない。

正しすぎる時間の中で、僕たちは自分の居場所を見失っているだけだ。


今、何時、何分、何秒、地球が何回、 回った日なのか。

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