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現在時刻  作者: shr
5/7

正しい時間は、誰のものなのか。

「最近、変だよね」

幼馴染が口を開く。

「何が?」

わかってはいる。分かってはいるけど、自ら口には出さない。


「全部、ちゃんとスマホに記録されるのに。」

そう言って、僕にスマホを見せてくる。

昨日の歩数、ルート、時間。

信号の前で止まった数とその時間。

どこに、どれくらいいたか。

だれと、何を、どれくらいしたか。

全部だ。全部数値化され、記録されている。


「でも、その時、何を考えてたか、全然わかんなくて、そこだけ覚えてないんだよね。私の気のせいなのかな。」

困ったように笑った。

前は覚えていたんだ。

喜びも、怒りも、哀しみも、楽しみも。

「どうでもいいことでも、雲の形とか、信号の変わり目とか。」

それは、幼馴染にも、僕にも、誰にだって、証明できないような記憶だった。


翌日、学校は|いつも通りだった。

先生が、名簿を読み上げて、返事をする。

チャイムも、決まった時間に鳴る。

先生は、決まったテンポ、決まった時間に沿って授業を進めていく。

いつも通りの、普通の日常。

でも、僕には違和感に見えて仕方がなかった。


始まりは男子生徒たちの話し声だ。

「昨日のホームルーム、何時に終わったっけ。」

前の席にいる、4人の男子達が話し出した。

「覚えてねー」「俺もー」「なんでそんなこと気にしたん?笑」


「てか、スマホみりゃよくね?」


4人は一斉にスマホを見て、確認をして、同じ数字を見て、同時に頷く。

「こっちのがはやいだろ」

「あ、このときか。」

「スマホさまさまだわ〜笑」


と、普段ならこの会話も聞き流す程度の話題なはずなのに、鮮明に聞こえる。

僕はここで、一石投じたい。

本当にそうだろうか。

覚えていないことが。

スマホを見て、確認することが、

問題にならず、当たり前になっている。

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