考えるべき質問
家に帰って、いつも通りの日常。
ご飯を食べて、お風呂に入って、ベッドに寝転ぶ。
その夜、僕は久しぶりに、あの言葉を思い出した。
『何時、何分、何秒、地球が何回、回った日?』
冒頭でも質問した通り
答えを出す質問じゃない。
正確さを試す問題でもない。
ふざけて、じゃれあって、友達に返すあの言葉。
この言葉は、きっと、今、この瞬間をちゃんと見ているか、見れているかを確認するための質問なのではないか。
正しい時間がわからなくてもいい。
地球が何回、回ったかなんて知らなくてもいい。
今、この瞬間を僕は共有したいだけ。
今、この瞬間を、見たいだけ。
今、この瞬間を確認したいだけ。
今、この瞬間を____。
それでも、確かにここにいたし、あったとも思う、記憶じゃない。記録でもない。思い出が欲しいんだ。
家族も、友達も、クラスメイトも、先生も、警察も、医者も、幼馴染も__。
すでに昨日のことは覚えていない。覚えていなかった。
きっと、今日のことも、明日になったら覚えていないだろう。
すべてが記録されているから。
見ればいいから。
確認すればいいから。
世界は今。
正しすぎる時間の中で
大事な何かを削り落としている
そんな予感がした。
スマホの画面には今も、正確な時間が刻まれている。
僕は、電源ボタンを軽く押し、画面を暗くし、スマホをひっくり返した。
今が。
何年の
何月で
何日の
何時で
何分の
何秒で
地球が何回
回った日なのか。
それを考えることから始まるのだろう。




