お姫様を守って2
「国……ユリアナの護衛?」
かなり顔に近くて内容が読みにくいけれど、大まかな依頼内容は読み取れた。
国から来たと言われたので、何かと思ったらユリアナの護衛をしてほしいもののようだった。
あとはもう少し紙を顔から離してくれないとイースラには見えない。
「近々隣のシーナクロデの国王の生誕祭が開催される。そこにうちの国も招待されているということだ」
「なんで俺が?」
こうした催しに冒険者はまず関わらない。
国の兵士や騎士を動員して護衛するのが普通であるし、ギルド単位で護衛を依頼するならともかく個人的に護衛してほしいなんてあまり聞かない。
「細かい事情はビブローか……エティケント様にでも聞いたらいいだろう。きっと窓口はそこらへんだ」
「あの……教会の仕事もあるんすけど……」
イースラは抱えた箱をゲウィルに見せる。
「それは期限のない依頼だろう。本来なら教皇からの依頼は優先すべきだが、国からの指名依頼を断るわけにもいかない」
「んー、まあ許してもらえるならやりますけど」
イースラとしてもやってもいい依頼だと思う。
ただ教会からの依頼を受けているので、簡単には二つ同時に受けられない。
ゲウィルがいいと言うのなら、というところである。
ユリアナのためになる依頼ならイースラとしても受けたいところではあった。
「やれ。元々俺たちは国政と距離を置いていたが、今やそうも言ってられないからな。全部お前のせいだがな」
「……あはは…………」
イースラがユリアナやエティケントとの距離を近づけてしまったために、ゲウィル傭兵団がユリアナに接近しているように見えてしまった。
正直ユリアナに王座を勝ち取るような可能性は低いとゲウィルは思っているが、複雑な関係が絡み合っていてユリアナと関係ないと距離を置くこともまたリスクであった。
今のところ、後ろ盾のない可哀想なお姫様を支えてあげているだけで政治には興味がない、という顔をしてなんとか過ごしている。
だがイースラはユリアナを気にかけているし、ユリアナもイースラを気に入っている。
ユリアナが王にならなくとも、王族として力を持っていることがあればゲウィル傭兵団は安泰かもしれない。
程よく距離を保っておく必要がある、とゲウィルはそれなりにユリアナに関わることに決めたのだ。
あるいはイースラに賭けたのかもしれない。
「他の王子が手を出すとは思えんが……万が一もある。表向きは護衛だが、ユリアナ様の話し相手が欲しいぐらいの意味かもしれない。だからサシャとクラインもご所望だ」
「二人も……それはありがたいですね」
「期間も決まっているし、そう長く拘束されるものではない。受けても問題はない」
「じゃあ、やらせてもらいます!」
依頼を断ってユリアナを悲しませることにならなくてすみそう。
「それで……お前は何の用でここに来た?」
「あっ、そういえば……」
今回はゲウィルがイースラを呼びつけたわけではない。
イースラからゲウィルを訪ねてきたのである。
何か用事があったから来たのだろうと、ゲウィルは椅子に座ってイースラのことを怪訝そうな顔で見る。
「これについてなんですが……」
イースラは手に持った箱の中の宝玉をどうするのか、ゲウィルに説明した。
それによってまたゲウィルが頭を抱えることになるのだけど、まずはユリアナの護衛が優先なのであった。




