裏で糸を引くもの2
「弄ばれて、あんなことになったんだ」
「でもどうしてボスを攻撃したんだ?」
「多分ボスが意識を取り戻したからだろうな」
リオル・エンドブラインは裏で糸を引いて楽しむ存在である。
自分の存在が表に出ることを嫌う。
ボスが正気を取り戻し、リオル・エンドブラインの名前を出したからボスの口を封じるために動いたのだ。
「本当はボスがただ倒されて終わる、はずだったんだろうな。子供も親しい人も何もかも失ってモンスターに落ちた女性がボスとして打ち倒される……俺たちにとっちゃひどい話だけど、リオルはそれを楽しむ」
「ひっでぇ……」
「最低だね」
「そうやって楽しむためには自分の正体がバレてはいけないし、見ている必要がある」
「それでボスのこと自分で倒したのか」
「悪い人じゃなさそうだったのに……なんだかやるせないね」
「そうだな……本当に最低のクソ野郎だ」
こんなところでリオル・エンドブラインの名前を聞くなんて思っても見なかったが、そのおかげで一つ分かったことがある。
回帰前にリオル・エンドブラインは世界を荒らしてくれたのだけど、活動はもっと後だと思っていた。
けれどももうすでにその存在が確認できた。
これはちょっと計画の変更も必要かもしれない、とイースラは思った。
リオル・エンドブラインの活動の妨害もイースラの計画の一つだったのだけど、もうどこかに毒牙を伸ばしているのならもっと早く動き出したり警戒すべきところが増えてしまう。
「うーん……負担ばっかり増えてくな……」
イースラの記憶だって全てを覚えているわけではない。
加えて過去の知識が全て思い出せたとしても、知っていることにも限界がある。
やりたいことがあっても自由に動けないし、まだまだ力も足りない。
もどかしさばかりが募る。
「それでもさ、私たちもちょっとは強くなったでしょ?」
悩むイースラの背中をサシャがポンポンと叩く。
「俺たちのことももっと頼ってくれよ? 今回みたいにさ」
「サシャ、クライン……」
「お前には敵わないかもしれないけど……俺たちもそこらのやつには負けないぐらいにはなったからさ」
「今回も危なかったけど……こうして無事でいられるぐらいにはなってるでしょ?」
「……確かに、そうだな」
たった二人。
されど二人。
回帰前には何をなすこともなす死んでしまった二人が生きている。
しかも今回はオーラを使えて、蒼天剣まで伝授されている状態でかなり強くなってきている。
今はイースラと同じく途中であるが、このまま成長していけば最後まで生き残っていた人たちと遜色ない強さにもなれるはずだ。
エティケントやウライノスは味方になっているし、ギリウラの裏切りも事前に防いである。
ライアンウルフことリフェンもスカウトできたし、今回は教会の勢力が消耗することも避けられた。
よく考えてみれば意外と頑張っている。
このことが未来に良い影響を及ぼすのかはまだ分からない。
それでも今できることを、必死にやっていくしかない。
「……頼りにしてるぞ。今後も色々やるつもりだからな」
「えっ……じゃあ遠慮しとこうかな」
「もう遅い!」
「えぇ……」
もちろん死なせるつもりはない。
でも限界まで付き合ってもらうつもりだ。
今の仲間も悪くないし、なんだか回帰前の仲間たちにも会いたくなってきたな、とイースラは思ったのだった。




