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【第二章完結】異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~  作者: 犬型大
第四章

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嘆きの魔女6

「オルサロ……」


 ボスはイースラたちの目の前まで来ると、そっと手を伸ばしてイースラの頬に触れた。

 血に濡れてぬるりとした指先はまるで氷のように冷たい。


 けれども壊れ物にでも触れるかのように優しく触れている。


「リンダ……」


 次はサシャに触れる。

 ボスの目には確かにモンスターではない人の光が宿っている。


「ごめんなさい……私のせいで、あなたたちまで巻き込んで……」


 ボスはイースラとサシャを抱きしめて、嗚咽する。

 サシャはなんだかものすごく申し訳ないような気持ちになった。

 

 何も悪いことはしていないのだけど何か悪いことでもしているような気分で、どんな顔をしたらいいのか分からない。

 ボスはただひたすらに謝罪の言葉を繰り返す。


「俺も、分かんないよ」


 サシャがイースラを見ると、イースラも困った顔をしている。

 回帰前、ボスの討伐に一人の青年が混ざっていた。


 このダンジョンには他にも特殊な攻略条件の場所があって、それは白髪の人限定というものだった。

 そこの攻略に参加した教会関係の聖騎士である。


 ダークハンドで回復するボスとの激しい戦いが続いていた中で、ボスが突然動きを止めた。

 誰かの名前を呼びながら青年聖騎士に近づこうとして、その隙に一斉攻撃を受け、形勢が逆転した。


「こんなことになるなんて……」


 こうした過去からボスに対する考察も行われていた。

 特殊な条件、そして特殊な条件の場所に出てきた中ボスはボスに関わっているのではないかと推測がなされた。


 イースラたちも戦った白髪の男女はボスが名前を呟く子供で、白髪の聖騎士は子供と間違われたのではないかと言われていたのである。

 本当にそうだったのか確かめる術はないが、その可能性はかなり高いと言われていた。


 聖騎士はただ白髪だっただけで、年齢制限にも引っかかるぐらいだった。

 今回イースラは年齢制限に引っかからないサシャも引き込んで二人とも白髪、さらには武器まで揃えてみたのだ。


 ボスの動きが鈍れば倒すチャンスはある。

 よりボスの気を引く姿に近ければチャンスも大きいはずだと思っていた。


「ごめんなさい……ごめんなさい…………」


 今はならチャンスだろう。

 しかしただ懇願するように謝り、泣き続けるボスに対して刃を突き立てる気には、どうしてもなれなかった。


 ここまでボスが無防備な姿を晒すとは思っても見なかった。

 倒すなら今だろう。


 でも良心が咎める。

 決して気分の良い勝利でないことは間違いなく、後々引きずってしまいそうな感じすらあった。


 イースラはいいのかもしれないが、サシャやクラインには精神的な負担になるかもしれない。


「あっ……えっ!?」


「分かってるの……あなたたちが本物じゃないってこと」


 どうしたら負担なく丸く収まるか。

 イースラが頭を悩ませていたら、ボスはサシャの剣を掴むと自らの胸に突き刺した。


「あの子たちはもう……いない。分かってるの……」


 ボスが咳き込み、口から血を吐き出す。


「だ、大丈夫!?」


「いいの……」


 サシャは剣を抜こうとするけれど、ボスは手から血が滲むほどに強く刃を掴んで離さない。


「優しいのね……」


 ボスは微笑む。

 やはりこんな展開はイースラも聞いたこともなかった。


 だがこれも一つの分岐なのだろうと思った。

 ボスの行動も決まりきったものだけではない。


 特定の攻撃、特定のパターンでしか動かないものもいる一方で、相手の行動によって攻撃や行動に変化が起こることもある。

 ボスが隙を見せたのにも関わらず、イースラたちは攻撃をしなかった。


 無防備なモンスターを前にして攻撃しないというのは、かなり特殊な行動である。

 しかしこれがボスに大きな影響を与えた。


「どうしてこんなこと……」


 モンスター、それもボスが自刃するなんてまずあり得ない。

 攻撃しなかったことで元々人であった本能が呼び覚まされ、ボスは自らの胸を刺したのだ。


 倒れかけたボスの体をサシャが支える。

 もはや感情移入してしまっている。


「私の心は闇に飲まれてしまった……愛する人を、国を、そして信条を失い……私はただの人形に落ちた……」


 とても静かだった。

 ボスのささやくような独白とカメラアイが羽ばたくわずかな音しか、そこにはない。


「私を……私の力を手に入れたい奴らが……」


「サシャ、危ない!」


「な、なに!?」


 イースラが動き、次に甲高い金属音が響いた。


「うおっ、あぶね!」


 クラインのすぐ横に剣が突き刺さる。


「いけない……この中にも、いたのね」


 スケルトンナイトの一人が突然剣を投げてきた。

 イースラが咄嗟に防がなかったらサシャかボスにあたっていたことだろう。


「なんだアイツ?」


 目に黒い炎のような光が燃えている怪しいスケルトンナイトに、イースラは訝しむように目を細めてしまう。


「……いけない……逃げて!」


「何が起きてんだ……?」


 スケルトンナイトが黒い魔力に包まれていく。

 それを見てボスが手を振ると、他のスケルトンナイトが黒い魔力に包まれたスケルトンナイトに襲いかかる。


 この展開、イースラも聞いたことがない。

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