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【第二章完結】異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~  作者: 犬型大
第四章

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嘆きの魔女5

「ただまあ……触れなきゃいいってのは……そうなんだけどな」


 ダークハンドが発動する条件は接触だ。

 つまりは全く触れられなければなんの問題もない。


 というのは理想論である。


「ふっ、はっ!」


「あぶね! うわっと!」


 触手やダークハンドは数が増えて、三人それぞれに差し向けられて分散してもかなりの数に襲われていた。

 イースラはまだ余裕があるものの、サシャとクラインは回避でいっぱいいっぱいだ。


「このままじゃ……持たないかもな」


 頭の中で考えていた作戦の最高の状態には持っていけない。

 素早く判断を下したイースラは次の手を使うことにした。


「備えあれば憂いなし。なんでも準備しとけば役に立つこともある」


 回帰前のイースラはかなり泥臭く生きてきた。

 最後には努力で力を得て活躍していたけれども、その過程では生き残るために相当足掻いていた。


 普通の人があまり使わない手段も用いることもためらわなかった。

 イースラは魔物袋に手を突っ込み、小瓶を取り出した。


 指に挟むようにして取り出された複数の透明な瓶の中には、やや赤みを帯びた液体が入っている。


「くらえ!」


 イースラは瓶をボスに投げつける。

 クルクルと回転しながら飛んでいく瓶は、何のひねりもなく投げられたためにあっさりとトゲ触手に防がれた。


 瓶が割れて赤い液体が飛び散ってボスの触手にかかる。


「ハッ!」


 イースラは続け様に魔法を放つ。

 放たれた光の魔法はボスの触手に当たって爆発を起こす。


「ギャアアアアッ!」


「な、なんだぁ!?」


 爆発が起きた瞬間、ボスの触手がものすごい勢いで燃え始めた。


「特製燃焼剤……どうだ?」


 赤い液体は複数の魔物体液などを混ぜ込んだものである。

 ちょっとしたことで燃えやすく、燃え始めると爆発したように燃焼し、かつ割と長い時間燃えるという相手を燃やすためだけに作られた燃焼剤だった。


 こういう手段はみんな卑怯だという。

 普通の人が使わないずるい手段であり、毒などの手と同じように好まれないやり方だと回帰前は言われたものだった。


 それでもそんな手段で敵を撃退したこともあるし、結局最後には毒だろうと何だろうと生きてた方が偉いのだ。

 死ねばズルいなんて罵倒を気にすることだって出来ない。


「まだあるからな」


 回帰前、一緒に燃焼剤を作った悪友の顔がイースラの頭をチラつく。

 弱いものの足掻き。


 使えるものは何でも使う。

 高潔な騎士ではなく、泥臭くても生き残って戦う戦士こそがイースラなのである。


 さらに魔物袋から小瓶を取り出して投げつける。

 火炎に包まれてボスが悲鳴を上げる。


「トゲトゲの触手を狙え!」


 触手やダークハンドの勢いが弱くなった。

 今のうちにとボスに反撃する。


「見よう見まね閃槍撃!」


 イースラは一気にボスと距離を詰めて、槍を突き出す。

 白いオーラが込められた一撃は防御しようとしたダークハンドを消し飛ばし、真っ直ぐにボスへと向かっていく。


「チッ……!」


 最後の最後で触手に防がれた。

 槍の軌道が少しずれて、イースラの一撃がボスの脇腹を大きくえぐった。


 何なら頭に当たっていたらこの戦いは終わっていたかもしれない。

 思わず舌打ちが漏れてしまう。


「アア……ワタシノ、カゾク、タチヨ」


 傷口がみるみると塞がっていくボスが両手をゆっくりと持ち上げた。


「げっ! 地面からなんか出てきたぞ!」


 床を突き破り、骨の手が出てくる。

 一つだけじゃなく何十本もの手が突き出して、そして骨の兵士がそのまま床から這い出す。


 せっかく触手もぶった斬って減らしたのに、とクラインは渋い顔をしてしまう。


「くるぞ!」


「ちょ……あの手も来んのかよ!」

 

 剣や槍を持ち、鎧に身を包んだスケルトンナイトがイースはたちに向かう。

 同時にダークハンドも襲いかかってくる。


「どうして……どうしてなの……」


 戦うイースラたちをよそにボスは嘆きの言葉を漏らす。


「なぜ……あの子たちは、あの人は出てこないの……」


 ボスは血の涙を流しながら震える己の手を見つめる。

 何度も顔を覆った手は血の涙のせいで真っ赤に染まっている。


 戦いの中でも不思議とボスの声は耳に届いてきていた。

 しかし聞こえていても何が言いたいのかサシャやクラインには分からない。


 後悔していたり、悲しんでいるような声色であるということは何となく感じられていた。


「リンダ……オルサロ……………………オル……サロ?」


「今度は何だよ!」


「動きが……止まった?」


 突如として、ダークハンドとスケルトンナイトの動きが止まった。

 ずっと動きっぱなしで汗だくになっているサシャとクラインは不思議そうにボスのことを見る。


 止まらなかったら意外とどこかでダークハンドに捕まったか、スケルトンナイトに切り捨てられていたかもしれない。


「……ようやくか。サシャ、こっちに」


「あ、うん」


 ボスが手を振る。

 するとスケルトンナイトが分かれて整列する。


 地面に降り立ったボスは、スケルトンナイトの真ん中をフラフラと歩いてイースラの元に向かってくる。

 イースラに呼ばれて横に立つサシャは何が起こるのか分からなくて、緊張した面持ちでイースラのことを横目で見る。


 イースラもやや硬い表情でボスのことを見つめていた。

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