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第16話 生死の分かれ目、鈴音縫合する(前編)

 鈴音は瞬が横たわる霜月に向かって叫んでいるのを見た。死に向かっている人を呼び戻していると確信したわ。そして鈴音は霜月の命の危険にこう叫んだ。



「霜月、死なせないわよ!」



 するとそこに集まっていた誰もが鈴音の方を見た。鈴音の横には橙次が立ち止まった。その荷物の上に乗っていただてまきは霜月の方へ駆け寄って行く。鈴音は素早く霜月の方を確認した。腹部が血まみれだった。出血が多いように見える。このままだと怪我が原因の前に出血多量で命を落としてしまう。だてまきは走って霜月の横へやってきた。



「これじゃあ移動してたら間に合わない。ここでやるしかないわ!」



 鈴音は声を上げると橙次の方を見てこう伝える。



「橙次さん、荷物を広げてください」



 橙次はそれを聞くと背中にから荷物を下ろすと板を並べ始めたその上にきれいな布を敷く。鈴音は腹部がどれくらいの怪我か想像していた。鈴音は橙次を見ると小さく頷いている。


(橙次さんもついているのよ。私がやらないといけないわ。霜月を何としても救うのよ!)


「鈴音さん、僕も手伝います」 


 諒が鈴音に声をかける。それからどこかの里の男の人も手伝いをかってでる。その男の人が橘と言う人だと知るのは後になってからだった。


「里からきれいな針ときれいな水、石鹸、消毒液、痺れ薬なども持ってきてます。手伝わせて下さい」

「俺も炎と風が使えます。何か役にたたせてください」


 瑛真も鈴音に近づいてこう手を挙げる。


 鈴音は近くに来た皆に頷いた。その間に橙次は準備を済ませていく。そして橙次はだてまきの背中を摘んで遠くへつまみ出そうとした。するとだてまきは足をじたばたさせ嫌がっていた。その後だてまきは何とか橙次の手から逃れると瞬の後ろに走っていって隠れた。橙次はため息をついて皆に白い服を配ると固く絞った布を渡していく。


「水がそんなに使えないから出来るだけこの布で手の汚れを拭き取って」


 その後は皆橙次のことを見なくなった。その時鈴音の目には橙次横に来ているのは見えていたので、橙次が幻術を使ったことが初めて分かった。そして橙次が口を開く。


「鈴音、これから指示を出していく。さっき話した通り幻術を使っている。他のやつには俺の姿も見えないし、声も聞こえていないはずだ。とにかく怪我の全体を見たい。出来るだけ血を取り除いて中を見よう」



 その後は橙次の指示に従って皆に伝えていった。皆の話だと腹部は貫通しているようだ。血を出来るだけ拭き取って太い血管を圧迫して血を止める。そうしてようやく怪我の全貌が分かった。腹部が貫通しているので内臓の損傷も大きい。ここまでひどい損傷の処置は初めてだ。


「難しいところは俺が代わりに行うから安心しろ」


 鈴音は橙次に心の中で感謝の言葉でいっぱいになった。しかしやることが多くてそうも言ってられない。橙次の指示に従って順番に縫合していく。難しい箇所が何箇所もあったので橙次に変わってもらう。鈴音は見逃さないように橙次が行うのをじっと見ていた。



 瑛真は鈴音の縫うタイミングを見て風で患部から血を飛ばす。諒も縫いやすいように接合面を少し切って整える。橘は血を布で拭ったり、諒が切り取った不要な細胞組織を体内から取り除いたりしている。


 そうしている内に追加の荷物が来て荷解にほどきされているようだ。足りないと思っていた綺麗な布や縫合器具などが補充される。これはありがたい。


 瞬は霜月の手を握りしめていた。そして処置の範囲が広くて時間がかかったが誰一人音を上げなかった。



 カラン、傷はすべてが縫われた。



「鈴音、よく頑張ったな」


 橙次の言葉を耳にすると鈴音はようやく終わったことが実感してきて深呼吸をした。


 霜月をしばらく眺めていた。皆からも声をかけられた。しかし鈴音の耳にはちゃんと届かなかった。鈴音の緊張の糸は切れてしまったのだ。



 橙次はすかさず鈴音を抱きとめた。瞬と諒と瑛真は霜月の方を見て安堵の息をゆっくりと吐いた。瞬は霜月の手を自分のおでこにつけた。だてまきは瞬の横にピッタリとくっついて丸くなった。



「白狼⋯⋯良かった⋯⋯」



 諒と瑛真は橙次の方を見た。そして橙次が口を開く。


「霜月は大丈夫みたいだな。この後、霜月を影屋敷まで運んでくれ。俺は鈴音を影屋敷まで運ぶ。霜月が起きたら自己紹介をしよう」


 そう言うと橙次は鈴音を背負って行ってしまった。橙次は幻術を使っていたので諒と瑛真は橙次のことがあまり記憶に残らなかった。そして瑛真は橙次から目線を外して諒を見るとこう提案した。


「俺と瞬で霜月さんを板に乗せて運ぶよ。諒は念の為横についていてくれ」


 諒は瑛真を見て霜月の運び役を立候補しようとしたが身長差が少ないほうがいいことに気がつき、それを口にしなかった瑛真の配慮を感じとった。瑛真は瞬に近づき霜月を運ぶ方法を説明した。すると瞬は頷いた。


 瞬は準備を諒と瑛真に任せると諒も説明の手伝いをすると言うのでそれぞれの忍の里長の元へ行き、霜月の現在の様子と今後について説明を始めた。特に白龍と緑龍は数日近くで休んでから影屋敷に戻ることを提案した。瞬は困ったが諒が黒獅子の里長が逃げたようなので影屋敷の方が安全なことを説いて助けた。

 その結果、霜月の目が覚めたら伝書鳥を飛ばすことにしてなんとか帰ってもらった。



 そうしているうちに瑛真の霜月を運ぶ準備が出来たので瞬たちはさっさと退散し始めた。帰り道はなるべく平な道を選んで進んだ。時間はかかったが皆休みなく進んでいく。皆の気持ちは影屋敷に一刻も早く帰る事、それに尽きた。影屋敷が近づいて来た。

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凄くひどいケガだった霜月……でも、橙次や他のみんなの助けを借りて、無事縫合できてよかった…♪ このまま回復すれば良いですね(*^^*)
 霜月の傷の酷さに思わず絶句いたしました。私なら、大切な人がその状態なら動揺してしまって何も出来なくなってしまうかもしれません。  けれども、鈴音ちゃんは頑張りましたね。
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