85 帝国解放
当然だけど、同期会は中止だ。
すぐに集まった来賓と共に対策会議が開かれた。対策を話し合うよりも、これ見よがしにパウル皇子を怒鳴りつける参加者も多くいたけどね。
これがいつもの帝国なら、逆に脅し返すのだろうけど、パウル皇子はこれを甘んじて受け入れていた。そうせざるを得ない状況だからね。
「貴殿らが言いたいことも十分分かる。しかし、これは帝国だけでなく、世界の危機だ。このようなことを頼める立場ではないことは十分に理解している。その上で頼む・・・」
誇り高い帝国皇族の者の言葉とは思えなかった。
いくらここでパウル皇子を罵倒したところで、状況が改善するわけでないことは皆が理解していた。グラース王子が発言する。
「とにかく現状を把握しましょう。偵察をお願いしていた竜騎士たちが帰って来ましたので、その報告をまずは聞きましょう」
帝国方面に偵察に出ていた竜騎士からの報告をまとめる。
帝国は各都市ごとで防衛に当たっているようで、組織的な対応はできていない状況のようだ。それにこのままでは、いずれ各個撃破されるとのことだった。
エリザベート王女が発言する。
「現状は理解できました。それで提案ですが、国境に近い都市から徐々に解放作戦を行うのはどうでしょうか?アンデッドの討伐は私たち竜騎士が行い、解放した都市の防衛と維持は各国が協力して対応してもらえませんか?私たち竜騎士は戦闘力は高いですが、数が少なく、都市の防衛には向きませんからね」
これは先程の魔物襲撃事件の経験を活かした提案と言える。
竜騎士は強いけど、万能ではないからね。
エリザベート王女の提案はすぐに受け入れられることになった。
★★★
私たちハワード商会は、帝国の都市解放作戦の第一陣として出動が決まった。
やり方はいつもと同じだ。まずはスピラが解放する都市に入り、都市の代表者と調整を行う。ある程度、話がついた段階で、私とデミドラが多数の戦闘員を乗せて、都市に降り立つ。
その後、他部隊の竜騎士と協力してアンデッドの討伐に当たる。
アンデッドの大半がスケルトンやグールなので、戦闘力は高くはない。
私たちにかかれば、一捻りだ。問題はその後だからね。覆面の竜騎士ことフレッド王子を中心に城壁を作っていく。支援物資も大量に運び込み、住民の手当ても行う。
ここまですれば、私たちは次の都市の解放に向かえる。
解放する都市も増えた頃、問題が起きた。
軍議を開いたところ、どの都市を先に解放するかで揉め始めた。
「とにかく帝都を最優先で目指すべきだ」
「いや、まずは西部を完全に解放したほうがいい」
「違う。街道の確保が先だ」
揉めているのはすべて帝国の貴族や領主たちだ。
誰だって、自分が有利になるほうがいいからね。ただ、意気に感じて今回の解放作戦に参加している他国の者からすると、「何を勝手なことを!!」と思ってしまう。
何とかパウル皇子が治めようとするが、上手くいかない。
帝都を追われた時点で、パウル皇子の発言力はないに等しいようだ。
そんな中、協商連合に属するオークの国の王子が怒鳴り始めた。
「我らは世界の危機だということで参戦しているのだ!!醜い利権争いを見に来たのではない!!自分たちのことしか考えれないなら、貴族など辞めてしまえ!!」
「何だと!?オークが偉そうに!!」
「オークを侮辱するのか!?だったら、我らオークはこの戦いから降りる。皆の者!!帰還するぞ!!」
グラース王子が必死で止める。
「ちょっとお待ちください。今、オークの方々に抜けられると作戦自体が成り立たなくなります。都市奪還後の防衛はオークに依存しています。ここは穏便に・・・」
何とかその場は収まったものの、空気は悪くなる一方だった。
そんな時発言したのは、フレッド王子だった。いつもの覆面を脱いでいる。
「私は竜王国第一王子のフレッドだ。皆には覆面の竜騎士と言ったほうが馴染みがあるかもしれんがな」
これで場の雰囲気が変わった。
皆が呆気に取られている。
「それで現場の立場から意見を述べさせてもらう。まず、上層部が揉めているような状況では、現場の者はしっかりとした仕事ができない。それを肝に銘じてほしい」
これには皆が苦虫を嚙み潰した。
「その上で兵站を最優先に考えて作戦を立案することを要請する」
これで流れが一気に変わった。
皆が建設的な意見を出し合うようになる。兵站が最優先ということになれば、自ずとルートも限定されるしね。
フレッド王子があえて正体を明かしたのも、世界のことを憂いてのことだろう。
今回の件で一番喜んだのは、マライアだった。
「覆面の竜騎士様がフレッド王子だったとは!?これは素晴らしいですわ。まさに英雄譚にピッタリです」
これを聞いたフレッド王子は、「やっぱり正体を明かさなければよかった」と言ったとか、言わなかったとか・・・
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