83 事件の真相
ヒュドラ及び帝国の魔導士ローゼマリアを取り調べたところ、事件の真相が判明した。
まずはヒュドラの供述から。
『我は雑種のドラゴンの両親の元に生まれ落ちた。しかし、我はこのような異形だ。群れにも馴染めず、両親にも見捨てられた。幼かった我は絶望し、嘆きの森の奥へと彷徨い歩いた。その時、ハイエルフの少女と出会ったのだ』
ここまで聞く限り、ヒュドラは本当に可哀想な竜生を送ってきたようだ。
『ハイエルフの少女、ベネジスカは我を保護してくれた。そこからは幸せな時間が続いた。ここだけの話、嘆きの森はベネジスカが作ったダンジョンなのだ。そこで我はダンジョンボスをしていたのだ』
それは凄い情報だ。帝国の悪巧みには直接関係ないけど、研究者にはどうしても聞きたい情報だろう。
『まあ、ダンジョンボスといっても、見掛け倒しで、侵入者を脅して帰らせるだけであったがな』
「しかし、こちらには過去の戦闘記録がある。尋常ではない強さだと記載されている」
『それは我の影に隠れたベネジスカがやったことだ。ベネジスカほどの魔法使いであれば、我が戦っているように見せるくらい造作もない』
「うむ・・・貴殿の生い立ちは分かった。それで帝国の手先となった経緯を教えてくれ」
少し時間を置いて、ヒュドラは話し始めた。
『100年程前、ベネジスカがダンジョン経営に飽きたと言い出してな。ダンジョンを売りに出す手続きのため、ハイエルフの里に一時帰省してしまった。ハイエルフは長命ならではの時間感覚だから、200年は帰って来んじゃろう。その間の管理のを託されたのだが・・・』
嘆きの森にやってきた帝国の魔導士ローゼマリアに捕縛されたのだという。
『ローゼマリアの真の目的は、我には分からん』
★★★
一方のローゼマリアだが、打ちひしがれていた。
「そ、そんな・・・私の開発した新型の隷属の首輪が欠陥品ですって!?」
「そのとおりだ。隷属の首輪で使役できるのは、Cランク以下の魔物だけだ」
「それはないわ!!私はオルトロスやケルベルロス、ダブルヘッドグリズリーたちを使役していたし、あの伝説のヒュドラも使役していたのよ!!」
取調官が答えづらそうに言う。
「それがな・・・こちらでその魔物たちの戦闘力を計測し直したんだが・・・軒並みCランク以下だった。つまり、そういうことだ」
「そ、そんな・・・」
「ただ、あの魔物たちは知能が高いからな。戦闘力以上に強く見せていたようだ」
ローゼマリアは泣き崩れた。
「散々馬鹿にしてきた奴らを見返せると思ったのに・・・これじゃあ・・・」
「とりあえず、知っていることをすべて話せ。悪いようにはしない」
それからは素直にローゼマリアは話し始めた。
ローゼマリアは魔導士の家系に生を受けたが、所謂落ちこぼれだった。帝国魔導士学校もギリギリの成績で卒業したものの、実家からは実家の姓を名乗るなと指示を受けたそうだ。
魔導士としての才能がないと悟ったローゼマリアは、魔道具開発局で勤務することを決めた。
そこでは意外に才能があったようで、数々の魔道具を開発したそうだ。そして、例の隷属の首輪を開発する。最初にテイムに成功したのが、偶々ケルだったようだけどね。それが元で隷属の首輪の性能を勘違いすることになったようだ。
★★★
ローゼマリアは帝国の計画の詳細を完全自供した。
宰相閣下が言うには、これで帝国との交渉が、かなり有利に運べるという。
そして、テイムされていた魔物たちだが、魔物たちの希望もあり、竜王国が文官として雇用することになった。因みにヒュドラは竜王国の宰相閣下預かりとなり、イベントなどに引っ張りだこだ。伝説のドラゴンだからね。
他の魔物たちは、オルトロス以外は地方での勤務となった。
竜王国は中央に比べて、地方の文官の質は高くないからね。赴任する地方はどこも大喜びだ。
そしてオルトロスだけど、私の従魔になった。名前はオルと名付けた。
なぜそうなったかというと、ケルと意気投合したからだ。同じような種族だし、事件以後、ずっと行動を共にしていたからね。
今もケルとオルが嬉しそうに話をしている。
「オルさん。まずはハワード商会の流通の管理をお願いしますね」
「分かったわ、ケル。どんどん、仕事を持ってきて」
優秀なスタッフが加わり、嬉しいかぎりだ。
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