81 多頭種
オルトロスから話を聞く。概ねケルと同じような話だった。
「私はこの見た目に反して、戦闘力は高くないのよ。だから魔導士に隷属の首輪を嵌められてしまったんだけどね。そこにいるケルベルロスには以前、遭遇したことがあるんだけど、その時は一目散に逃げたわよ」
「分かったわ。とりあえず、魔物たちを解散させて、私たちと一緒に来てくれる」
「いいわよ。それに知っていることは全部話すわよ」
王都に場所を移して、オルトロスは暗部の事情聴取にも素直に応じる。
私たちも事情聴取に同席することになった。
「私以外にも知能の高いリーダー格の魔物がいるのよ。ダブルヘッドグリズリー、キマイラ、双頭蛇・・・まあ、どれもがSランクの魔物ね。私じゃ太刀打ちできない魔物よ」
取調官が質問する。
「そんな危険な魔物を従えるといると?」
「そうよ。危険性がないのは私くらいのものよ。それほど、帝国が開発した隷属の首輪が強力だということよ」
「信じられん・・・」
「それともう一つ、信じられない話をしてあげましょうか?それはね・・・」
その話は取調官だけでなく、私たちも絶句した。
それって伝説のドラゴンじゃないか!?
落ち着きを取り戻した取調官が再度、質問をする。
「それは真実なのか?」
「実際に見たから間違いないわ」
「もっと詳しく話せ」
「それは無理よ。私なんか、恐怖で震えていることしかできなくてね。威圧感が凄かったくらいしか、覚えてないのよ」
「それはそうだな・・・」
オルトロスの取調べはまだ続いていたが、同席していた宰相閣下は慌てて、取調室から出て報告に向かっていた。
★★★
宰相閣下が国王陛下に報告の後、今後の方針が決まった。
「オルトロスも我らに協力してくれることになった。オルトロスに危険性がなく、ケル殿ともいい関係が築けている」
まあ、同じような魔物だからね。頭の数が違うだけだしね。
「それでオルトロスの証言を基にまずは、ダブルヘッドグリズリー、キマイラ、双頭蛇の討伐又は確保に当たる。基本方針は確保だ。情報が欲しいからな」
「分かりました。それで私たちはどうすればよろしいのでしょうか?」
「ダブルヘッドグリズリーの対応をしてもらいたい」
「了解しました」
ダブルヘッドグリズリーは、二つの頭を持つ巨大な熊の魔物だ。情報によると竜王国南部で活動しているようだ。
今回はハワード商会のメンバー全員で対策に当たる。ダブルヘッドグリズリーが活動している周辺は大きな川があるので、その対策としてクレーテとカメールも任務に当たってもらう。川で戦闘する可能性もあるからね。
現場に到着すると、先行配置していたブーナから報告を受けた。
「ダブルヘッドグリズリーの居場所は分かったゴブ」
「ご苦労様。じゃあ、早速強襲しましょう」
「それは難しいと思うゴブ・・・」
ブーナから話を聞くとダブルヘッドグリズリーは森の中の洞窟を要塞化しているようだった。
「柵やトラップ。堀なんかもあるゴブ。ちょっとしたお城よりも攻めるのは難しいゴブ」
「分かったわ。とりあえず、現場を見ましょう」
現場に着くと、ブーナの報告の通り、洞窟が要塞化されていた。
スピラが聞いてくる。
「カトリーヌさん、どうするの?」
「そうね・・・力技でやってみようと思うの」
私たちがここに来るまでに、冒険者たちでどうにかしようと試みたようだが、要塞化された洞窟に引きこもった魔物たちに返り討ちにあった。
普通にやっても、結果は同じだろう。まあ、こちらは竜騎士が大勢いるから負けはしないと思うけど、被害は最小限にしたい。
私はデミドラに乗って、空中に飛び上がり、魔道砲に魔力を込めた。
「行くわよ!!発射!!」
轟音を上げて、魔力を帯びた弾丸が発射される。
防護柵を貫通し、洞窟の壁の一部を粉砕した。私は声に魔力を込めて、降伏勧告を行った。
まあ、素直に降伏するとは思わないけど、一応やるだけはやった。下っ端の魔物は、これだけで逃げ出すかもしれないしね。
「大人しく投降しなさい!!命は保障します」
すると、洞窟から巨大な二つの頭を持つ熊の魔物が姿を現した。
「こ、降伏する!!我の妻たち、それに配下の魔物たちの命も保障してもらいたい!!」
あれ?こんなにすんなり?
★★★
その後の話をすると、ダブルヘッドグリズリーはケルやオルトロスと同じく、戦闘力は全くなく、明晰な頭脳とハッタリだけで何とかやってきたそうだ。
「そ、そういう事情なので・・・ご勘弁を・・・」
今のところ、素直に取調べにも応じている。
王都に到着して数日もすると、他のリーダー格の魔物も別部隊が捕獲してきた。
どれも同じような話をしているそうだ。
ケルが言う。
「私たちのような多頭種は、見掛け倒しなのかもしれません。恥ずかしいかぎりです・・・」
「そう言わないで、ケルはケルでいい所はあるし、他の魔物もそうだと思うわよ」
実際、彼らは本当に頭がいい。
竜王国の文官たちは、是非文官として彼らを採用したいとまで言っていた。試しにダブルヘッドグリズリーに聞いてみる。
「有難い話です。戦闘しなくていいのなら、何でもいいです」
彼らは平和主義者でもある。だからこそ、帝国に狙われたのだろう。
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