80 発生源
ケルが語る。
「実は暗部から、今回の魔物被害の分析を極秘で依頼されていました。その分析の結果、私と同じような魔物がいるのではないかという結論に達したのです」
そういえばケルは、謎の魔導士に隷属の首輪を嵌められ、ポルガ村近辺でグラスウルフを率いて活動していたわね。
「カトリーヌ様も気づいていらっしゃいますよね?今回の魔物被害が普通ではないことに」
その通りだ。
今回の魔物被害は明らかにおかしい。魔物襲撃は計画的で、魔物が好き勝手に暴れているとは思えない。竜王国の弱点を確実に突いてくるし、絶対に魔物側に指揮官がいるというのが定説になっている。
「それで先程、ご褒美をいただけるということだったのですが、私の願いは一つ。私のような魔物を救ってほしいのです」
「分かったわ。すぐに宰相閣下にお願いしてみるわね」
次の日、早速宰相閣下と面会をした。
「人員資材の搬送任務に影響がなければ、休日に何をしようとこちらが関知するところではない。好きにすればよい。この意味は分かるな?」
「はい」
あくまでも個人の趣味という形で処理されるようだった。
宰相閣下との面会を終えた後、ケルは言う。
「宰相閣下は、口ではそう言いましたが、特別手当という建て前で資金も出してくれますし、暗部の資料も提供してくれました」
「私もだんだんとやり方が分かってきたわ」
私も暗部のやり方のすべてを知っているわけではないけど、面倒くさいやり取りをしなければならないのは分かる。何事も建て前が大事なのだ。
★★★
早速、魔物を率いているリーダ格の魔物の捕獲作戦を開始する。
ケルの分析の結果、まずは竜王国の東端、ナウール王国との国境付近で作戦を実施することにした。
「私が分析したところ、こちらは主にオオカミ系の魔物が出現します。記録を見ても、こちらに損害を与えるというよりは、自分たちの被害を最小限にする戦い方をしています」
「まるで、昔のケルのような感じね?」
「そうですね。それとオオカミ系の魔物ということで、グラスウルフたちにも来てもらいました」
ケルが言うには、グラスウルフに相手の魔物の群れに潜り込ませるという。
「私の場合は少数精鋭で活動していたので、群れの構成員すべてを把握していましたが、今回のように規模が大きくなれば流石に無理でしょうからね」
「分かったわ。でもグラスウルフたちにくれぐれも無理はしないように言っておいてね」
「分かりました」
作戦を開始する。
この付近では、襲撃の回数は多いが被害はかなり少ない。なので、拠点の整備も後回しにされている。だから、未だに定期的な襲撃が続いている。
「実際に見てみるとよく分かりました。本当に申し訳程度の襲撃しかしてませんね」
「そうね」
「多分、そろそろ撤退するでしょう。グラスウルフに指示を出しておきます」
しばらくして、魔物たちが撤退を始めた。魔物の群れの中にはグラスウルフも多くいる。こちらのグラスウルフたちを紛れ込ませるには好都合だ。
「グラスウルフたちが上手く潜入できました。しばらくは様子見ですね」
「分かったわ。変わった事があったら報告をお願いね」
「了解致しました」
それから2時間後、ケルが報告にやってきた。
「カトリーヌ様、グラスウルフたちがリーダー格の魔物を発見したようです。その魔物ですが・・・」
ケルの報告を受けて、私とデミドラ、ブーナとネルが隠蔽魔法を発動させて、リーダー格の魔物の元へ向かう。途中、潜入していたグラスウルフが案内してくれたので、迷うことはなかった。
そして・・・
「あの魔物は、ケルとよく似ているゴブ」
「そうね。でも頭が二つしかないわ」
「二つしかって・・・普通は一つゴブ」
「そうね。ケルを見ていると三つ首がデフォルトと思ってしまっていたわ」
ケルが会話に入ってくる。
「あれはオルトロスです。魔物ランクはSランク、かなり危険な魔物として有名です。私も過去に一度だけ、遭遇したことがあります。まあ、その時は一目散に逃げたんですけどね。戦闘力のない私にはどうしようもないですしね」
「分かったわ。とりあえず拘束しましょう。デミドラ、ネル。隠蔽魔法を解除して、戦闘準備」
『分かったわ』
『任せて』
隠蔽魔法を解除した私たちはオルトロスを取り囲んだ。
オルトロスは呆気に取られ、恐怖で震えている。
「た、助けて・・・私は無理やり・・・こんなことはしたくなかったんだけど・・・この首輪の所為で・・・」
オルトロスが示した首輪は、ケルに嵌められていた首輪に酷似していた。
「デミドラ、お願い。でも今回は、気をつけて外してね。後で鑑定できるくらいに」
『分かったわ』
デミドラが近づこうとすると、オルトロスは地面に這いつくばった。
「ど、どうかお許しを!!」
ケルが宥める。
「大丈夫ですよ。こちらのデミドラは隷属の首輪を外すことができるのです」
「あっ!?貴方はケルベルロス?」
「はい。私も貴方と同じように隷属の首輪を嵌められて、無理やり指示に従わせられていた過去があります。だから心配しないでください」
「分かったわ」
デミドラが慎重に首輪に手を掛け、首輪を引きちぎった。
『今回は奇麗に取れたわ』
「そうね。これなら鑑定しやすいでしょうね。それでオルトロス。詳しく話してくれるかしら?」
「本当にありがとうございます。正直にお話します」
私たちはオルトロスから話を聞くことになった。
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