78 幕間 悩める王女様
~エリザベート王女視点~
私は今、本当に忙しい。もう何日も徹夜だ。
国内各地で魔物被害が発生し、その対応に追われている。私が担当しているのは現場での戦闘ではなく、後方支援だ。兵站を安定させ、必要な箇所に国軍や竜騎士を配備していく。
そんな中、お父様から声を掛けられた。
「エリザ、あまり無理をするなよ」
「しかし、お父様。国の危機なのですよ」
「それでもだ。お前が倒れたら、それこそ国の危機だ」
「はい・・・」
なぜここまで我が国が疲弊しているかというと、それは竜王国の特殊事情が大きい。
この国は防衛を竜騎士に頼りきっている。竜騎士は強く、そこらの魔物に後れを取ることはない。しかし、今回の魔物被害は国内の各地で起こっており、竜騎士の数が圧倒的に足りないのだ。
竜王国だけでなく、ナウール王国も協商連合も魔物被害は受けている。しかし、我が国程の被害は出ていない。
というのも、ナウール王国も協商連合も竜騎士がいないからこそ、竜騎士に頼らない防衛戦略を採用しているからだ。今回の魔物被害で出現する魔物自体はそこまで強くはないから、ある程度実力がある冒険者や騎士がいれば対応できる。しかし、竜王国はその騎士や冒険者が圧倒的に不足している。
「流石にこれは盲点だったな・・・」
「はい・・・」
「だが、それでもここまで持っているのはエリザの手腕といっていいと思うぞ」
「ありがとうございます」
まあ、グラース王子から多くの助言を受けたんだけどね。
兵站を整えるため、竜騎士学校の学生を総動員し、昨年卒業した学生を部隊から引き抜いて、学生と共に任務に当たらせている。昨年卒業した学生はナウール王国で厳しい搬送任務をこなした経験があるからね。
「しかし、ここまで卒業したての新人や学生が活躍するとは思わなかったな」
「私もそう思います。今後もナウール王国の研修は伝統として残すべきですね」
「そうだな。だが、圧倒的に戦力が足りんな・・・」
「はい。水竜隊も三分の二は引き上げて対応に当たってもらっています。これ以上増やすとなると・・・」
ジョージお兄様を筆頭に陸戦もできる水竜乗りは魔物対策に動員している。その分の穴はクレーテと、こちらも卒業したての新人で埋めている。それに予備役もほぼすべて動員しているから、これ以上増やすことは物理的に無理だ。
「このままだと、防衛線を下げるしかないな・・・苦渋の決断だがな」
それはできればしたくない。多くの民が故郷を奪われてしまう。
「お父様、まだ打てる手は残っています。まずは・・・」
これもグラース王子の受け売りだ。
グラース王子が提案した作戦を話す。一つはデブリーヌの部隊を使って兵站を安定させる。
「確かにいい案だ。しかし、それだけでは根本的な解決にはならんな」
「はい。ですので併せて、ポルガ村方式を採用します」
「ポルガ村?」
ポルガ村はあのデブリーヌが研修で訪れた村で、今では冒険者が多数常駐し、フレッドお兄様が城壁を建築したこともあり、竜騎士なしで何とか対応できている珍しい場所だ。
「なるほど・・・いい案だと思うが、それでも人員が足りんと思うが・・・」
「それはそうですが、やってみる価値はあります」
「防衛線を下げることを決断すれば、その案は生きるだろうが・・・」
如何にデブリーヌでも、流石に今の防衛戦を維持するのは厳しいだろう。
そんな時、宰相がグラース王子と共にやってきた。
早速、お父様に報告をする。
「陛下、朗報です。まずナウール王国と協商連合から冒険者や義勇兵の派遣が決定いたしました」
「誠か!?」
グラース王子が引き継ぐ。
「ナウール王国も決して余裕があるわけではありませんが、それでも竜騎士に感謝している者が多く、戦闘力の高いエルフやドワーフが多く志願してくれています。それに協商連合ですが、特にオークの国が大量動員してくれることになりました」
「厳しい状況の中、無理してエリザを外遊に行かせた甲斐があったな」
私が外遊に出た理由も冒険者を派遣してもらうことが一つの目的だった。
そしてもう一つ。
「陛下、それに今回の魔物被害の発生原因も突き止めました。睨んだ通り、帝国の関与が認められました。こちらも無理をして暗部を大量動員した甲斐がありました。エリザ様の訪問に併せて亜人たちの救出作戦に踏み切ったのも、混乱に乗じて、この情報を手に入れるためでしたからな」
「うむ・・・」
報告書をお父様と共に確認する。
なるほど・・・
「つまり、帝国が魔物のボスを手懐け、操っていたということだな?」
「そのとおりです。後は証拠を掴むだけです」
「うむ。では指示をする」
またデブリーヌ頼みか・・・
まあ仕方がない。癪に障るけど、これも国のためだ。
私はグラース王子と共に今後の運用計画を練るのだった。
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