77 極秘作戦 4
ブーナの案内で早速オーキドと面会する。
少し心苦しいが、ここからはフィオナ姫を演じる。
「ブーナか?何度来ても答えは変わらん。この場所を守り続けることが俺の使命なのだ」
「説得に来るのは今日が最後ゴブ。だから特別な方に来てもらったゴブ」
ブーナに紹介され、オーキドの前に歩み出る。
「ま、まさか・・・」
「そのまさかよ」
「フィオナ姫!!お会いしとうございました!!」
オーキドだけでなく、すべてのオークが私に跪いた。
自分からフィオナ姫と言っていないけど、どうやら上手く騙されているようだ。
「そんなことは後にしな!!それよりも早くここから逃げるよ」
「そ、そう言われましても・・・」
「つべこべ言わずに行くよ。アンタが一生懸命にこの場所を守ってきたことは誇りに思っていい。でも、何が一番大切かを考えな。命あっての物種だろ?」
オーキドは茫然としている。
ここは勝負所だ。
「男だったら即決だよ。アンタが何をしようと勝手だけど、アンタを慕っている者たちのことも、少しは考えな!!」
「そうですね・・・分かりました。野郎ども!!これよりこの地を離れるぞ。まずはゴブリンやコボルトたちを避難させるぞ」
「「「ハイ!!」」」
どうやら上手くいったようだ。
ブーナとその協力者のゴブリンたちが扇動して、教会に設置されているトンネルに誘導を開始した。
デミドラから念話がきた。
『練習通りに上手くいったわね?』
『そうね』
『フィオナ姫っぽかったわよ。会ったことはないけど』
『それで外の状況は?』
『ダイアナからの報告では、これからマライアが町のステージに移動して公演を行うみたいよ。公演は大体1時間、その間に避難を終えたほうがいいわね』
『分かったわ』
ここまでは作戦通りだ。
マライアの公演中はどうしても警備が手薄になる。それに亜人たちはエリザベート王女が帝都に滞在中は、亜人居住区から出ないように指示を受けている。なので亜人居住区の門は閉ざされている状態で、外からは中の様子が見えないしね。
それからは思いのほか順調に避難が進んだ。
多少文句を言っていたオークもいたがオーキドが黙らせたり、私も現場に行って対応した。
「フィオナ姫?ああ・・・お会いしたかったです・・・」
「今はそれどころじゃないだろ!?早く行きな!!」
「ハイ!!」
順調に進んでいた避難だったが、予想外のことが起きた。門が開き、警備兵が巡回にやってきた。
警備兵が警笛を吹き鳴らし叫ぶ。
「異常事態だ!!亜人たちが何かしているぞ!!すぐに応援要請をしろ!!」
すぐに多くの警備兵が集まってきた。
かなり不味い状況だ。
慌てて、巡回していた警備兵を殴って気絶させ、亜人居住区の門を閉める。
「ここはアタイが引き受ける。みんなは逃げな!!」
これにはオーキドと最後まで残っていたオークたちが異論を唱えた。
「それはできません。今度こそ、俺たちはフィオナ姫を見捨てません」
「何言ってるんだい!!今だから言うけど、アタイはここにいたら駄目な人間なんだ。それに時間もないんだ。分かってくれ」
「そ、それは・・・」
「アンタたちの危機だと知って、無理を押して来たんだ。言っている意味は分かるだろ?」
しばらく考えて、オーキドは言った。
「ありがとうございます。あの世から俺たちのために・・・分かりました。野郎ども!!フィオナ姫の思いを無駄にするな!!」
口から出まかせで何とかなった。いい感じで騙されてくれたようだ。
というのも、フィオナ嬢が討ち取られる寸前に帝国兵に対して「今後、亜人たちに手を出したら、化けて出てやるからね」と言ったという伝説を利用したというわけだ。
『やるじゃないの』
『でしょ?』
『それはそうと、これからどうするの?避難が完了したら教会を確実に壊すように指示されてなかった?』
デミドラが言うとおり、今回の作戦は漁村に住む魚人族やリザードマンの避難も併せて行う。
トンネルの出口を隠蔽しなければ、彼らにも被害が出るからね。
「力業しかないわね・・・」
しばらくして、門をこじ開けて居住区内に入ってきた警備兵たちを片っ端から棍棒で殴りつけていく。
これも伝説のとおり、フィオナ姫の得意の武器の棍棒を使っている。使い方はオークの国で習った。まあ、力任せに殴るだけだったけど・・・
それにしても警備兵の数は一向に減らない。
警備が手薄になるんじゃなかったの?
まあ、愚痴を言っても始まらないけどね。
そんな時、ネルから念話が届いた。
『避難が完了したよ。教会を破壊しても大丈夫だよ』
『分かったわ』
私は警備兵から逃げるように教会に向かってダッシュする。
そして、教会に入るとデミドラと合流した。
『じゃあ離脱しましょう。魔道砲も魔力を装填しているからね』
「ありがとう」
私はデミドラに乗り、上空に浮かび上がった。もちろんデミドラの隠蔽魔法を使っているから警備兵には分からない。
頃合いを見て、私は魔道砲を教会に向けて放った。轟音を上げて、魔力を帯びた弾丸が飛んでいく。そして教会が吹き飛んだ。
「相変わらず凄い威力ね」
『ゴレアが改良に改良を重ねていたからね』
「でも大赤字らしいけどね・・・」
この高出力の魔道砲は、私たち以外に使える者はおらず、かなり高価な素材を使って開発したけど、全く売れないとのことだった。
そんな呑気な話をしながら、私たちは帝都を後にしたのだった。
★★★
それからの話をすると、漁村からの避難も異常なく終了した。因みに帝都ではこの事件はなかったことになっている。帝国の公式発表では、「目障りな亜人たちを帝都から追い出した」としていた。
そして、フィオナ姫はまた伝説の人物となった。感銘を受けたオーキドはその伝道師となった。後年、オーキドがフィオナ教を創設したのだが、それはまた別の話だ。
こうして、私たちの極秘任務は幕を閉じた。
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