76 極秘任務 3
エリザベート王女の外遊に同行する。私たちは表向き、御用商人という身分だ。
また、いきなり帝国に行くのではなく、主に協商連合の国々を歴訪する。そして協商連合の最後の訪問先であるオークの国で私とデミドラは別行動になった。
エリザベート王女一行を見送った後、私は別室に案内された。
メイドのマリアとオークの侍女たちが私のお化粧直しをしている。
「なんということでしょう・・・伝説のフィオナ姫にそっくりですわ!!」
「こんなお仕事に携われるんて、侍女冥利につきますわ」
「ええ・・・なんだか涙が・・・」
マリアは渋い顔をしているけど、オークの侍女たちは大盛り上がりだ。
私はオークと同じ褐色の肌色にされ、オークと同じような牙を取り付けられる。これはかなり喋りづらい。一見するとオークに見えなくもない。
これは私の趣味でしていることではない。帝都での亜人救出作戦のためだ。
帝都で暮らす亜人たちは特殊で、弱小種族を比較的戦闘力の高いオークたちが面倒を見ている構図なのだ。これは歴史的な事情が関係している。その昔、今のオークの国とは別に多種族が暮らす国があったそうだ。その国は帝国の侵略により滅びてしまったのだが、オークの姫であるフィオナという女性が最後の最後まで命を懸けて戦い抜き、それに感銘を受けた時の皇帝が帝都の一部に亜人たちの自治区を認めると宣言した。
それがきっかけで、帝都の一部に亜人の居住区ができたそうだ。
だけど、現皇帝の治政となってからは状況が一変する。
過去の取り決めを無視して、亜人たちに不当な扱いをするようになっていった。オークたちだけなら、何とかなっただろうが、弱小種族を抱えている状況では年々暮らしは悪くなる一方だ。それでオークの国から「協商連合に亡命しないか?」と打診したそうだ。
しかし、オークたちからは「フィオナ姫が守り抜いた土地を離れることはできない。フィオナ姫がここに来て、「逃げろ」とでも言わないかぎりはな」と言われ、申し出を断られた。
状況は切迫しているので、オークの国としては同胞を見捨てたくはない。
それで私に白羽の矢が立ったというわけだ。つまり、私がフィオナ姫の生まれ変わりを演じろということだ。まあ、私の美しさは万国共通だから、できなくはないんだけどね・・・
「重要な任務ね・・・それに姿形だけじゃなく、フィオナ姫に成りきらないとね」
「カトリーヌ様、我らにお任せください。立派なフィオナ姫にしてみせますわ」
それからはオークの侍女たち、それにオークの騎士団長なんかが指導をしてくれた。
騎士団長が言う。
「この任務が終れば、是非我が国に嫁に来てほしいものだ」
「それは何とも・・・」
曖昧に受け流す。
お墨付きをもらった私は、最終チェックでオークの国王陛下や王族に謁見することになった。
もちろん、こちらも評判が良かった。国王陛下が言う。
「危険で困難な任務を受けてくれて礼を言う。必ず、この礼はするぞ」
準備を整えた私たちは、帝国に秘密裏に入国したのだった。
★★★
私たちは帝都に近い漁村に潜入した。この漁村には多くの魚人族やリザードマンが居住しており、今回の作戦に併せて彼らも亡命する手筈になっている。
漁村に着くと既に現地入りしていた覆面の竜騎士ことフレッド王子に拠点に案内される。
「トンネルは既に開通している。トンネルを進めば帝都の亜人居住区の教会にたどり着く。俺とクレイはこちらで待機する」
「ありがとうございます。それでは行って参ります」
「うむ。気をつけてな。現地にはブーナとネルが潜入している」
私とデミドラは出来たばかりのトンネルを進む。
1時間程で明かりが見え、フレッド王子が言ったとおり、教会にたどり着いた。すぐにブーナが出迎えてくれた。
「頑張ったけど、説得は上手くいってないゴブ・・・」
「気にしなくていいわ。私が何とかするからね」
「ありがたいゴブ。それにしてもオークそっくりゴブ・・・」
私の変装は上手くいっているようだ。
ブーナの案内で亜人居住区を取り仕切っているオークの元に向かう。
道中にブーナから現状について説明を受ける。
「オークのオーキドという奴がボスだゴブ。親分肌のいいオークだけど、それが仇となっているゴブ」
ブーナが言うには、オーキドはかなりフィオナ姫を崇拝しているようで、フィオナ姫が守り抜いたこの地を絶対に離れたくないと言っているそうだ。
オーキドは俺を置いて「出て行きたい者は出て行ってもいい」と言っているようだが、ほとんどの者がこれに従わず、オーキドと行動を共にすると言っているそうだ。
「ゴブリンを中心に話をしたけど、駄目だったゴブ。ここではゴブリン王国の王女よりもオーキドのほうが信頼されているゴブ」
どうやらオーキドを説得しなければ、この作戦は成功しないようだ。
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