73 ハワード商会
今後の方針について、みんなで話し合うことにした。
最初に口を開いたのはスピラだ。
「資料を確認して思ったけど、私たちは異動したら一からやり直しになるわ。流石に副隊長にしろとは言わないけど、また新隊訓練からやらされるのはちょっとね・・・できればカトリーヌさんと一緒に行動したいわね」
これに続いたのはクレーテだった。
「よく考えたら、オラもカトリーヌ隊長と一緒がいいですだ。資料には水竜隊に入ったら、陸戦の訓練もしないといけないみたいですだ。だったら今のままがいいですだ」
マライアも続く。
「私もカトリーヌ隊長と一緒がいいですわ。近衛隊に入隊すれば公演も自由に開けませんしね。それなら多少危険でも暗部のほうがいいですわ」
何ともマライアらしい理由だ。
リリ様も続く。
「我はもう国王陛下から研修期間は終わったから自由にしていいと言われておる。もし手伝ってほしいなら手伝ってやらんこともない。それに帝国には多くのハーフエルフたちが奴隷同然に扱われておるから、カトリーヌ隊長がどうしようと、個人的にブーナを手伝うぞ」
「リリ様、ありがとうゴブ」
最後は覆面の竜騎士ことフレッド王子だ。
「俺はこの話を君が断ると、実家に帰らなくちゃならない。できればハワード商会を立ち上げて、暗部の仕事をしてほしいのだが・・・」
「えっ!?実家はどこですの?」
「いや・・・それは・・・」
「詳しく聞きたいですわ」
マライアが話に入ってきて、ややこしくなったけど、全員が私と行動を共にしたいようだ。
だったらやるしかない。それに望まない結婚はしたくないからね。
「みんなの気持ちは分かったわ。じゃあ、ハワード商会を設立して暗部の仕事をすることにするわ。でも商会の立ち上げなんてしたことないし・・・そこは少し不安だわ・・・」
これにはケルベロスのケルが反応する。
「それはお任せください。私にはタヌタヌ商会で培ったノウハウがあります。金銭管理からスタッフの手配までお任せください」
「スタッフ?スタッフは重要よね?暗部の仕事を請け負うのだから、信頼できる者を集めないといけないけど・・・伝手もないし・・・」
「それは大丈夫ですよ。マリアさんが既に手配しております」
マリアが一礼して言う。
「既に手配はできております」
「そ、そうなの?」
「はい。明日には到着するものと思われます」
手際が良すぎるな・・・
「分かったわ。では本日をもって直轄特務隊は解散。そしてハワード商会として再出発します。これからもよろしくね」
「「「はい!!」」」
こうして、あっさりとハワード商会に全員が移籍することになった。
★★★
次の日、ハワード商会で働く予定のスタッフが勢揃いした。顔を見て唖然とする。
すべて実家のハワード家の使用人たちだった。代表してメイド長が挨拶してくる。
「使用人一同、再びお嬢様の元で働けることを心から嬉しく思っております。これでもかなり人数を絞ったのですよ」
メイド長が言うには、希望者が殺到し、厳しい選抜試験が行われたそうだ。
「メイド長、それにしてもこの人数は・・・実家のほうは大丈夫なの?」
「それは問題ないわ」
応えたのはメイド長ではなく、なんとお母様だった。
「最近、魔物被害が国のあちこちで発生して、あの人も任務でほとんど家に帰って来ないのよ。だからこの際だから、希望者を引き連れてこっちに来たのよ。私も暇だしね」
どうやら、お母様もハワード商会で働く気満々らしい。
メイド長が言う。
「もちろんハワード家のほうは大丈夫でございます。執事のガイゼル様がおりますからね」
ガイゼルいるなら何とかなるのだろう。
それにしてもお父様が任務でずっと家にいないのは少し心配だ。
そんな話をしているところに宰相閣下がやってきた。
「皆の退職金を持ってきた。確認してほしい。もちろん、今後の活動資金も含まれている」
確認すると、かなりの金額だった。
これならどんな商売でもすぐに始められる。
続いて、グラース王子とタヌーカさんがやってきた。
「こちらからは提携の話だ。タヌタヌ商会と提携してもらえれば有難い」
「そうよ。多分、商会の立ち上げと同時に多くの依頼が舞い込むからね。早いもの勝ちよ」
タヌーカさんが言うには、私たちの商会は立ち上げた段階で既に成功間違いなしというのが、大方の予想らしい。
「分かりました。契約内容を確認して、提携する方向で検討させていただきます。ケル、頼めるかしら?」
「もちろんです」
「ケルちゃんが交渉相手?身内なら頼りになるけど、交渉相手となると厳しいわね」
「お手柔らかにお願いしますね」
タヌーカさんとケルは軽口を叩き合っているが、お互い信頼しているのが分かる。変な話にはならないだろう。
こうして、あっという間にハワード商会が設立されてしまった。
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