71 覆面の竜騎士
覆面の竜騎士はおもむろに覆面を取った。
顔立ちはエリザベート王女やジョージ王子、それに国王陛下によく似ていた。
「カトリーヌ嬢。俺は竜王国ドラーゴ第一王子のフレッドだ」
「お初にお目にかかります、殿下。私は・・・」
言い掛けたところで遮られた。
「堅苦しいことはいい。手短に俺の事情を話す。俺がこんなことをしているのはクレイのためだ。というのも・・・」
フレッド王子は竜騎士学校を卒業後、王太子になるべく特別の教育カリキュラムが組まれ、そのカリキュラムをこなす日々だったという。
「1年程経った頃、クレイが目に見えて元気がなくなった。詳しく聞いてみると共に行動するドラゴン、特に光竜から不遜な態度を取られることが原因だった。光竜はプライドが高く、土竜であるクレイの命令を聞くことが許せなかったみたいだ」
「そうなのですか?私も光竜はプライドが高いと聞いていましたが、私たちと接する光竜はみんな素直な印象でしたが・・・」
マライアのパートナーのダイアナもエリザベート王女のパートナーのクーニゲンも、この前まで面倒を見ていた学生の光竜だって私たちを馬鹿にするような態度を取ることはなかったし、どちらかと言えば素直に言うことを聞いてくれていたと思う。
「そ、それは・・・カトリーヌ嬢たちが特別なだけだと思うが・・・まあ、話を戻すとクレイの性格もあり、光竜たちと同じ任務に就くことはクレイにとって大きな負担となっていたのだ」
フレッド王子は王太子となる予定で、常時護衛が付くような状況だったため、常に近衛隊の光竜と行動を共にする環境だった。
それが土竜のクレイにとっては大きな負担になった。元々土竜は単独行動で群れを成さない。これが暴竜だと、問答無用で殴りつけるだろうけど、クレイは逆に引きこもるようになってしまったようだ。
「そうした事情から、俺は王族の身分を返上してクレイと共に旅に出ることにしたのだ」
事情は何となく分かった。
エリザベート王女が言う。
「しかしお兄様。ここまで功績を上げたのですから、今戻ってくればきっと光竜たちもクレイを認めると思います。それにお父様は正式にお兄様が王族の身分を返上したと公表しておりませんし・・・」
「エリザ。そういう問題ではないんだ。光竜たちはいくら功績を上げようとも、クレイを心から認めることはないだろうしな・・・」
難しい問題だ。
そんな中、デミドラが念話を飛ばしてきた。
『やっと分かったわ。クレイが私に土竜の加護をくれたのね?それで懐かしい感じがしたのね?』
クレイが答える。
『そうだよ。君が生まれた時、ほぼ強制的に僕が呼ばれたからね』
『最初から言ってくれればよかったのに』
『事情が事情なだけにそれは無理だよ』
私たちが深刻な話をしているのもお構いなく、二匹のドラゴンは楽しそうに会話をしている。
「クレイが他のドラゴンと親しげに話をするようになるとはな・・・」
「私もそう思いますわ。カトリーヌさんとデミドラには、何か特別な力があるのかもしれませんわね」
特別な力?
絶世の美少女で才能溢れる私は、特別な力があっても不思議はないとは思うけど・・・
そんな話をしている所に宰相閣下がやってきた。
宰相閣下は暗部の長を務めているだけあって、姿を現すまで全く気づかなかった。
「フレッド王子殿下、国王陛下より親書と辞令書が届いております。ご確認ください」
フレッド王子は親書と辞令書を確認する。
「ふっ・・・そういうことか・・・カトリーヌ嬢、いや、カトリーヌ隊長。よろしく頼む」
私も辞令書を確認させてもらった。
なんと、フレッド王子とクレイが直轄特務隊に配属されることになっていた。
「いくら王族でも、のんびり遊ばせておく余裕はないとのことだ。こちらは遊んでいたわけではないのだがな・・・」
「そ、その・・・よろしくお願い致します、フレッド王子・・・」
「フレッドでいい。それと他の隊員には、俺の素性は秘密にしておいてくれ」
「承りました」
二匹のドラゴンはと言うと、嬉しそうだった。
『クレイ、これからもよろしくね』
『デミドラ、仲良くしよう』
フレッド王子は、二匹のドラゴンを嬉しそうに見つめながつぶやく。
「クレイにとってもいい経験となるだろう・・・」
しばらくして、パーティー会場が一段と盛り上り始めた。マライアのステージが始まったからだ。
「覆面の竜騎士~♪土竜クレイ~♪今日も現場で、大活躍~♪」
エリザベート王女が言う。
「お兄様は素性を明かさなくても大人気ですわよ。これは誇ってもいいと思いますわ」
苦笑いを浮かべながら、フレッド王子が言う。
「カトリーヌ隊長、くれぐれもマライアにだけは秘密にしてくれよ。大変なことになりそうだからな」
「承りました」
こうして私の部隊に新たな隊員が加わることになった。
それも未来の王太子殿下だ。
次回から最終章となります。




