66 サンバル王国 2
サンバル王国に到着した。サンバル王国は山々に囲まれた国で、王都もそこまで大きくはない。ちょっとした町くらいの大きさだ。
王都の広場に降り立つと、多くの闇竜やその竜騎士たちに出迎えられた。その中には見知った顔も何人かいた。
スピラが言う。
「あれ?何人か知っている文官がいるわ。それにあれは・・・」
「宰相閣下ね・・・」
エリザベート王女が説明をしてくれる。
「彼らも竜騎士なのです。文官の傍ら暗部の仕事もしてもらっているのですわ。因みに宰相は暗部の隊長を兼務しています。これは国家機密ですので、くれぐれも口外しないようにお願いしますわ」
「もちろんです」
詳しく聞くと、竜王国の暗部の本拠地がサンバル王国の王都らしい。
国王陛下も続く。
「大昔から闇竜乗りの竜騎士はここで育てている。暗部の仕事は特殊だから、竜騎士学校では教えられない。それに暗部の身分は知られたくはないからな」
サンバル王国の住民のほとんどはダークエルフと大柄で筋骨隆々のオーガという種族だ。
リリ様がこの国の成り立ちを解説してくれる。
「その昔、我が里のエルフとオーガの若者が恋に落ちたことが始まりだ。その時は我が里でも結婚を認めなかった。それで二人はこの地に移り住み、今に至っているというわけだ」
「リリ様!!もっと詳しくお話ください!!これはいい歌が作れますわ」
マライアはここに来た目的も忘れて、リリ様から当時の話を詳しく聞いていた。
それから王城に案内された私たちは、会議を行うことになった。
最初の議題は、ネルとブーナの修行についてだ。女王陛下が言う。
「ブーナ殿は竜騎士としての基礎が全くできておらん。そのためのカリキュラムを用意したが・・・かなり厳しいものになるだろう」
「頑張りますゴブ。そうしないとネルと一緒に居られないなら、頑張るしかないゴブ」
『ブーナ・・・嫌になったら逃げればいいんだよ』
ネルはまたシェディに殴られていた。
国王陛下が言う。
「カトリーヌ隊長、貴殿にはネルとブーナの監視を命ずる」
「はい、謹んで拝命致します」
「うむ。デミドラも闇竜の加護を持っているであろう?ついでに闇竜の基礎を習うといい」
「ありがとうございます」
シェディが念話で語りかけてくる。
『大きくなったわね。貴方に闇竜の加護を与えたのは私なのよ。シュワーフとシュネールに頼まれたからね』
『そうなのね・・・だから、懐かしい感じがしたのね』
『まあ、貴方は純血の闇竜ではないから、教えることも基礎的なことだけだけど、しっかり教えてあげるわ』
『ありがとう』
女王陛下が言う。
「修行は早速明日から始める」
続いての議題はセイン川の迂回工事だ。
女王陛下が言う。
「まずリリ様に森に住むエルフの了解を取ってもらいたいと考えます」
「任された」
「続いて、そちらの・・・覆面の竜騎士殿に工事計画の策定を願いたい」
「謹んでお受けします」
「実はこちらも困っておったのだ・・・」
女王陛下が合図を送ると、カエルのような顔をした男性が会議室に入ってきた。
「こちらはセイン川沿いに住むフロッグ族のケロット族長だ。ケロット族長、説明を」
「分かりましたケロ。実は・・・」
フロッグ族はセイン川の流域に居住区があり、代々そこで暮らしていたのだが、ある日突然、セイン川の水位が急上昇した。そして集落の半分以上が水没してしまったという。
「フロッグ族は水中活動が得意ケロ。だからみんな、泳いで避難できたケロ。でも集落の7割は水没してしまったケロ・・・」
女王陛下が話を引き継ぐ。
「こちらも調査をしていたのだ。それで帝国と事を構えてもダムを破壊する案まで出ていたのだ。流石に戦争となれば被害は甚大になる。それに比べれば、セイン川の迂回工事をしたほうがいいに決まっている。我らにとっても渡りに船というわけだ」
サンバル王国にもそういった事情があったようだ。
マライアが嬉しそうに言う。
「これでまた、覆面の竜騎士様の活躍が見られますわ」
会議の結果、サンバル王国も最大限作業員を出してくれることになった。
ただ竜騎士については機密保護のため参加させられないとのことだった。
「まあ調査や何かはさせるが、あくまでも隠密行動が基本だからな。それでは会議は終了とする。今日はネルを捕獲できためでたい日だ。早速、宴を開くぞ」
そこからはいつも通りの宴会になってしまった。
マライアが歌で場を盛り上げ、皆が楽しそうに料理やお酒を楽しんでいる。
覆面の竜騎士はというと、国王陛下とエリザベート王女と少し言葉を交わした後にすぐにいなくなってしまった。
私にしてみれば、暗部の闇竜よりも覆面の竜騎士のほうが謎なんだけどね。
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