65 サンバル王国
私たちは国王陛下と共に、用意された天幕に入った。
国王陛下から直々に説明をしていただいた。
「まず、最初にこちらの方々を紹介しよう。サンバル王国女王であらせられるネリッサ陛下とパートナーである闇竜シェディだ。シェディはそこに転がっているネルの母親だ」
可哀想だが、ネルは魔力が付与された鎖にぐるぐる巻きにされて、転がされている。
話を引き継いだネリッサ陛下が言う。
「今回の件は感謝する。この馬鹿は逃げ足が速く、気配感知も得意だ。すぐに連れ戻そうとするとまた逃げてしまうから、様子を窺っていたのだ」
ネルは修行が嫌で、母親のシェディの元から逃げ出したそうだ。
闇竜は隠ぺい魔法が得意で隠密行動は大得意だ。その中でもネルの実力は群を抜いているらしい。なので、ネルの捜索活動は難航していた。そんな時、私たちがネルやその竜騎士であるブーナと接触したことがきっかけで、サンバル王国の知るところとなった。
それからはエリザベート王女の情報を基に綿密に計画を立て、ネルに気づかれないように捕縛したというわけだ。
因みにリリ様とマレドーラは、このことを知っていたようで、あの時はわざとネルの注意を引くために怒らせていたとのことだった。
ネリッサ陛下はブーナに問いかける。
「そこのゴブリンよ。どうやってネルの竜騎士となったのだ?」
「そもそもネルがドラゴンだって知らなかったゴブ・・・ネルがもっと仲良くなるには契約が必要と言ったから、契約したゴブ・・・」
シェディがネルを激しく殴った。
『この馬鹿息子!!騙してやっていい事じゃないわよ』
『ご、ごめんなさい・・・』
『謝って済む話ではないわよ』
ネリッサ陛下が話を戻す。
「竜騎士、それも闇竜の竜騎士は特別なのだ・・・竜騎士も闇竜と共に修行をしなければならん。それもサンバル王国でな。他の竜騎士は竜王国の竜騎士学校に入校しなければならんが、闇竜乗りは違うのだ」
なるほど・・・闇竜乗りの竜騎士が竜騎士学校にいなかったのも、そういった事情のようだ。
国王陛下が補足する。
「我が竜王国の暗部にも闇竜乗りを多く抱えている。闇竜乗りが見つかった場合はすぐにサンバル王国で修業させていた。これは王族や一部の大貴族しか知らないことだ。流石のカトリーヌ嬢も知らなかったと思うがな」
「全く存じ上げませんでしたわ」
「因みに貴殿の両親は知っている。これは国家機密に関わることだから、愛娘にも言わなかったのだろう。それほど重大な秘密なのだ」
国王陛下はブーナに向き直って言う。
「そういった事情だ。貴殿は今後竜騎士を続けたければ、サンバル王国で修業をせねばならん」
「いきなり言われても困るゴブ・・・」
まあ、そうだろう。
ブーナの父親である族長のブロリンが話に入る。
「ブーナ、ちゃんと修行をしてくるゴブ。お世話になった竜王国の国王陛下がそう言うなら、断るわけにはいかないゴブ」
「分かったゴブ。ちゃんと修行するゴブ」
『嫌だよ・・・修行は辛いんだぞ』
当然ネルは、シェディに殴られていた。
★★★
ブーナとネルがサンバル王国で修業することが決定した後、マライアが声を上げた。
「覆面の竜騎士様。今ここで、女王陛下に進言してはどうでしょうか?」
「ここでか?」
覆面の竜騎士は国王陛下を見る。国王陛下は無言で頷いた。
「それでは説明をさせていただく。今回の水害の対策についてだ。原因は帝国が建設したダムによる。意図的かどうかは分からないが、ダムの放水でこうなったのだろう。今後の対策としては・・・」
覆面の竜騎士が提案したのは、壮大な計画だった。
帝国領の更に上流に位置しているサンバル王国からセイン川の流れを土木工事で変えて、直接ゴブリン自治区に流すというものだった。
「流石に大工事になる。俺も協力するが、問題も多い」
女王陛下が少し考えて言う。
「貴殿ならできるというのか?」
「俺一人では無理だ。竜騎士と作業員を用意してくれれば可能だ」
「なるほど・・・しかし、厄介な場所を通さなければならんのだ。奴らが首を縦に振るかどうか・・・」
リリ様が会話に入る。
「エルフのことか?なら私が話をつけてやろう」
「これはこれはリリ様・・・だったら話が早い。頼んでもよろしいでしょうか?」
「もちろんだ」
セイン川を迂回させる場所には森林地帯があり、エルフが居住している。
リリ様が言うには、そのエルフたちは、ナウール王国のエルフ里の出身者でリリ様もよく知っているとのことだった。
「リリ様が説得してくれるのなら、この工事は承認しよう」
「うむ・・・」
なぜか、覆面の竜騎士よりもマライアのほうがドヤ顔をしていた。
それから3日後、私たちはサンバル王国に旅立つことになった。
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