63 復興へ
ゴブリン自治区に来てから2週間が経った。復興は順調に進んでいる。
学生やエリザベート王女は帰国したものの、その代わりにナウール王国と協商連合から多くの人員が派遣された。
その中にはエルフもいるし、ドワーフもいる。グラース王子に聞いたところ、エルフもドワーフも排他的だけど、困っている者に対しては情が厚いとのことだった。
私とデミドラはというと、主に物資と人員の搬送任務に従事している。
これは特に協商連合の人たちに評判がよかった。
「ドラゴンに乗れるなんて、一生に一度あるかないかの経験だ」
「自慢できるな」
「それに歌姫マライアが定期的に歌ってくれるからな」
理由はどうあれ、復興に協力してくれることは有難い。
マライアはというと、相変わらず覆面の竜騎士に付きっきりだ。
覆面の竜騎士とそのパートーナーのクレイは、少し迷惑がっていたけどね。
「何かお手伝いすることはないでしょうか?」
「だったら、資材を持って来てくれ。それが終ったら人員を派遣してくれ」
「分かりましたわ」
飛び立っていくマライアとダイアナを見ながら、覆面の竜騎士がつぶやく。
「鬱陶しいのが、やっといなくなったな」
『そうだね・・・でも、ダイアナは他の光竜とちょっと違う気がする』
「そうか?」
『うん。それに彼女の所属する隊のドラゴンも、普通のドラゴンとはちょっと違うね』
「それはそうだな。デミドラなんかは・・・話は後だ。早く仕事を片付けよう」
『そうだね』
黙々と作業をする覆面の竜騎士のお陰もあり、最近では普通に生活する分には特に問題がなくなった。
問題はこれからゴブリンたちがどうやって自立していくかだけど・・・
★★★
ゴブリン自治区に来てから3週間が経った。
氾濫したセイン川は、そんなことがなかったかのように水位が低くなり、もう小川レベルにまでなっている。なので、クレーテとカメールはキーグ島に帰還させた。ここではクレーテとカメールは活かせないからね。
そして今日、竜王国、ナウール王国、協商連合の代表者を集めての国際会議が開かれた。議題はもちろん、今後のゴブリン自治区についてだ。
ナウール王国の代表のサンドラ王女が仕切る。
「皆さんの協力もあり、ゴブリン自治区の復興は進みました。それで今後についてですが・・・」
特に議題となったのは、今後の開発計画だった。
セイン川の水位が戻ったので、元あった場所に再び町を建設するという話が持ち上がった。しかし、これには覆面の竜騎士が反対の意を示した。
「俺は反対だ。洪水になった原因が分からないのだろ?ゴブリンたちの話を聞くかぎり、何の前触れもなく、突然水位が上昇したとのことだ。原因が分かるまでは、同じ場所に町を作るのはリスクでしかない」
竜王国代表のエリザベート王女が反論する。
「ですが、他に場所はありません。堤防を作ってはどうでしょうか?」
「かなり高い堤防になるぞ。色んな意味でな」
「堤防の規模だけでなく、建設費もということですね・・・」
覆面の竜騎士が言っていることはもっともだけど、それにしてもエリザベート王女に軽口を叩いている。一体、どんな素性の者なのだろうか?
グラース王子が発言する。
「再度、詳しく状況を調査しましょう。それで覆面の竜騎士殿、今のところ考えられる原因はありますでしょうか?」
「上流を調べることを提案する」
「上流ですか・・・ここより更に上流となると帝国領ですね・・・」
会議の結果、復興作業を続けながら上流の調査を行うことになった。
調査に向かうのは覆面の竜騎士とマライアになった。
「俺は一人でもよかったんだが・・・」
「そうはいきませんわ。貴方たちの活躍を歌にしませんと」
「くれぐれも邪魔はするなよ」
「もちろんですわ」
スピラがつぶやく。
「マライアもよくやるわね?」
「そうね。趣味みたいなものかしら?」
「そうかもね・・・あっ!!もうこんな時間。配達に行かないと!!」
「そういえば私も物資の搬送依頼があったわ・・・」
私とスピラは復興支援が始まって、忙しくなった。協商連合の依頼も請け負っているからだ。
というのも、協商連合がこちらに人員を派遣するのは、何も人道的な理由だけではない。私とスピラが手紙の配達や物資や人員の搬送を請け負うことを条件に出してきた。
抜け目がないというか、何というか・・・
ただ、これは私たちにもメリットがないわけではない。
私たちが人員や物資を運ぶことで、ナウール王国も利益が上げられる。そして、竜王国もナウール王国が上げた利益の一部を納められるからね。
私が資材をデミドラに積み込み、出発しようとしていたところ、リリ様とマレドーラに声を掛けられた。
「カトリーヌ隊長、ちょっといいか?」
「できれば後にしていただきたいのです。時間が押していますので」
「うむ・・・」
『リリよ。帰ってきてからでもいいだろう。カトリーヌ、話というのはブーナとネルのことだ』
「ブーナとネルが何か?」
『うむ・・・これは後々問題になるかもしれん・・・王女殿から国には報告が上がっているじゃろうしな』
一体、どういうことだろうか?
そんな思いを抱えながら、私とデミドラは空に飛び立った。




