61 救援活動
私たちの前に降り立ったのは、ゴブリン自治区の代表者の娘であるブーナ。そして、そのパートナーはネルという漆黒のドラゴンだ。
スピラが言う。
「カトリーヌさん。彼女は私たちの先輩なのかしら?」
「どうかしら・・・聞いたほうがいいとは思うけど、今はそれどころじゃないみたいだし・・・」
私の知るかぎり、ゴブリンの竜騎士なんて存在しない。
彼女がどうやって竜騎士になったか興味はあるけど、今はそれどころじゃない。
グラース王子がブーナに話し掛ける。
「僕はナウール王国第一王子のグラースだ。ゴブリン自治区は協商連合に加盟していないし、我が国とも交流がない。助けてほしいとのことだけど、まずは状況を詳しく教えてくれ」
「分かったゴブ。まずゴブリン自治区は協商連合に加盟しようと思ってはいるけど、加盟金が払えなくて加盟できていないゴブ。それよりも、とにかく助けてほしいゴブ」
「一体、何に困っているんだい?」
「それは・・・」
ブーナが言うには、ゴブリン自治区はセイン川の中流に位置していて、そのセイン川が氾濫して自治区全体が水没してしまっており、今も多くの住民が取り残されているそうだ。
「最近、雨は降っていなし、むしろセイン川の水量は減っていたゴブ。でも昨日、急に水位が上がって、自治区全体が水に飲み込まれたゴブ・・・早くしないとゴブリンは全滅するゴブ」
ブーナが嘘を言っているとは思えない。
同じ竜騎士が困っているのなら、何とかして助けたい。
「分かりましたわ。私たちが救援に向かいましょう」
「ありがとうゴブ!!」
学生たちからも声が上がる。
「私たちも救援に向かいましょう」
「そうだ。先輩を助けないとな」
「うん。水害なら僕たち水竜乗りの出番だね」
これにグラース王子が待ったを掛ける。
「流石にそれは僕の一存で決められないよ。せめて竜騎士学校の許可が必要だ。ナウール王国としては・・・」
サンドラ王女が言う。
「ナウール王国は救援隊を出すことに賛成よ。これからお母様に正式な許可をもらいに行くわ」
「ありがとう姉さん。ただ、竜騎士学校の許可となると・・・」
スピラが会話に入る。
「だったら私たちに任せて。全力で飛べば、エリザベート王女に追いつけるわ」
少し考えた私は言った。
「じゃあスピラ、お願い」
「任せて。私たちでは救援活動では、大したことはできないからね」
そう言うと、スピラとゲイルは上空に舞い上がり、超高速で飛んで行った。
学生たちから感嘆の声が上がる。
「あれが副隊長の本気?ヤバいすぎるだろ?」
「そうね・・・あんなの誰も追いつけないわ」
「あれで一日飛んでるんだろう?格が違うな」
グラース王子が指示をする。
「では指示をする。セリーナ、君は風竜の学生を指揮し、ブーナ嬢と共にゴブリン自治区に飛んでくれ。情報収集した後、すぐに報告してくれ」
「承りました」
「ヘルマン、許可が出次第、君は水竜の学生を指揮して現地で救援活動だ。一人でも多くのゴブリンを救ってくれ」
「分かりました」
「ロジャー、君は姉さんと一緒に王都に帰還し、支援物資をサイシレドスまで搬送してくれ。救助したゴブリンたちを保護しないとな」
「任せてください」
流石はグラース王子だ。
指示が的確だ。
クレーテが続く。
「誰か、私とカメールを現地まで連れて行ってほしいだ。飛ぶのが苦手だけど、現地では活躍できると思うだ」
「分かりました。風竜2体でお運びします」
「ありがとうだ」
クレーテも成長している。
以前なら、こんな状況で発言しないだろうし、飛ぶことが苦手と言うこともなかったと思う。自分たちの弱点と長所を知った上で、適切な行動が取れていると思う。
★★★
1時間もしないうちにエリザベート王女が戻って来られた。
「状況は聞きました。すぐに救援活動に移りなさい。カトリーヌ隊長、スピラ副隊長には軍と竜騎士学校、それに王宮への報告をお願いしました。しばらく時間が掛かると思いますわ」
「了解致しました」
それからすぐにセリーナが報告のために帰還した。
「かなり酷い状況です。現地に残した風竜乗りで懸命に救助活動をしておりますが、全く手が足りていない状況です。それに救助したとしても、その後のケアは全くできません。すぐに救護所や仮設住宅の設置が必要と思われます」
「分かりました。それではカトリーヌ隊長、直轄特務隊も現地に向かいなさい。まずは救助が優先です。その後の支援はこちらで何とかしましょう。私も明日には現地に入ります」
すぐにエリザベート王女の指示で動き出した。
出発の準備をしていたところ、ルシル副官に声を掛けられた。
「どうだ?エリザベート王女も頼もしくなっただろ?」
「ええ・・・私も負けてられませんね」
「それでは気をつけてな。学生たちも頼もしくなったし、現地での指揮は任せるぞ」
「はい」
こうして私たちは、ゴブリン自治区に向かうことになったのだった。
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