60 特別公演 2
国際会議に伴うオープニングセレモニーが始まった。
私はというと、ドレスに着替えて晩餐会に出席するように指示されているので、今回の特別公演には出演しない。まあ、これ以上目立っても困るからよかったと思っている。
最初はマライアのソロ歌唱から始まり、獣人歌劇団の歌劇へと進む。
獣人の子供たちは皆が楽しそうで、見る度に上手くなっているように思う。マライアの指導がいいのだろう。
続いては、なぜかリリ様の弓の演武が行われた。
グラース王子が言うには、ナウール王国とエルフとの関係が良好なことをアピールしたいのだそうだ。今もマレドーラに乗ったリリ様が見事に的を射抜き、大歓声が上がっている。
そして今回のメインは、竜騎士学校の実習生によるアクロバット飛行だ。
こちらはセリーナとそのパートナーのウィルを筆頭に、一糸乱れぬアクロバット飛行をしていた。
スピラが言う。
「みんなよく頑張っているわね。飛行が得意ではないドラゴンを上手くフォローしたりして、感心するわね」
「そうね。スピラの指導がよかったんじゃないの?」
「私の指導というよりは、マライアね。彼女は厳しいから・・・」
マライアは普段はおっとりした性格だが、芸事となると性格が変わる。
ケルが苦労していたくらいだからね。
そんな話をしていたところ、エリザベート王女の護衛責任者として来ていたルシル副官が声を掛けてきた。
「カトリーヌ嬢、スピラ嬢、久しぶりだな。貴殿らの指導は竜騎士学校でも評判になっているぞ。それにしてもあの甘ったれな学生たちをよくぞここまで鍛えたものだ。元教官として礼を言う」
「私たちは特に何もしていませんわ。学生たちの努力の賜物ですわ」
「ふっ・・・カトリーヌ嬢にしてみれば、大したことではないということか・・・
それでは私はこれで失礼する。晩餐会では周辺国の代表者や王族が多数参加しているから言動には十分注意してくれ」
「分かりましたわ」
★★★
晩餐会が始まる。
私としては、あまり目立たないように会場の隅っこに居ようと思っていたけれど、それは無理だった。どこに居ても、私には多くの出席者が声を掛けてきた。それに求婚をしてくる者までいた。まあ、絶世の美少女の私の宿命のようなものだろう。
「お嬢さん、一度我が国に来てはもらえないだろうか?旨い物がいっぱいあるぞ」
「それなら我が都市に来てくれ。何なら息子の嫁に向かえてもいい」
「こちらは王妃の座を用意する」
特に熱烈なアプローチを受けたのは、オーク族、象人族、トロル族の王子たちだった。
協商連合は多民族国家のナウール王国とは違い、各種族ごとで国や自治区を形成している。なので、協商連合内に多くの王族や貴族がいるのだ。
オークも象人もトロルもがっしりとしていて体格はいいが、私の好みではなかった。
しかし流石に相手は王族なので、無下にはできない。私が困っていると、メイドのマリアが助けてくれた。
「申し訳ありません、王子様方。カトリーヌ様は竜王国の名門ハワード公爵家のご令嬢でもあらせられます。ですのでカトリーヌ様の一存で結婚は決められないのです。どうしてもというのなら、竜王国に話を通してもらいたいのです」
「分かった。すぐに使者を送ろう」
「うむ」
「強く、美しく、そして家柄もしっかりしているか・・・これはかなりの優良物件だ。ますます手に入れたくなった」
この場はマリアのお陰で乗り切れたけど、話を持って来られた竜王国のほうは大変だろう。
そんなことをマリアに伝えたら、こう言われた。
「大丈夫ですよ、お嬢様。ボガード様とアンヌ様に怖いものなどありません。特にお嬢様のことになればね」
「それもそうね・・・お父様とお母様は過保護だから・・・」
求婚しに行く王子たちがどうなるか・・・彼らのほうが心配になる。
晩餐会はつつがなく終了した。
私と同じくらい人を集めていたのは、エリザベート王女とマライアだった。まあ、竜王国三大美少女だからね。
次の日、続々と王族たちは帰還していった。もちろんエリザべート王女も。
「カトリーヌ隊長、よく頑張っていますわね。これからも国のために任務を遂行してください」
「ありがとうございます。竜騎士として、国のため、民のために精進致しますわ」
エリザベート王女は学生に向き直って、言葉を掛ける。
「学生諸君!!いい実習ができたみたいですわね?この経験を活かし、更に精進なさい」
「「「はい!!」」」
そういうとエリザベート王女とその護衛たちはドラゴンに乗り、空に舞い上がった。
それを見上げながらスピラが言う。
「やっと一息ね」
「そうね・・・それにしても今回は楽な任務だったわね?」
「そうかしら?私は晩餐会やなんかでお偉いさんの相手をするのに気疲れしたわ。カトリーヌさんはそうでもないでしょうけど」
「慣れるのも大事よ。こういったことはこれからも増えると思うしね」
「私は慣れるとは思えないけど・・・自由に飛び回っていたほうがいいわ」
そんな呑気な会話をしながら、学生たちと共に帰り支度を始める。
これから学生たちは、一旦ナウール王国の王都に帰還して各種手続きをした後に竜王国に帰還することになっている。
引率のグラース王子が指示をする。
「じゃあ学生諸君。準備が出来たら王都に帰還するぞ」
「「「はい!!」」」
その時だった。
漆黒のドラゴンに乗った少女が私たちの前に舞い降りた。その少女は小柄で緑の肌をしていた。
「た、助けてほしいゴブ・・・このままではゴブリンは全滅ゴブ・・・ウッウッウウ・・・」
その少女は突然、泣き崩れた。
落ち着かせて話を聞く。
グラース王子が言う。
「これは大変な事態だ・・・」
私だってそう思う。
こんなことになるとは、夢にも思わなかった。
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