59 特別公演
学生の実習も無事に終わりを迎える。
大きなトラブルもなく、実習が終了したことには安堵した。今はのんびりとスピラと共に報告書をまとめている。
「それにしても、最後の実習は意外な結末になったわね?」
「そうね。まさかヘルマンのグループが勝つなんてね」
学生を三つのグループに分けて収益を競わせたのだけど、全くやる気のなかったヘルマンのグループが一番成績が良かった。
セリーナやロジャーのグループも一生懸命で、様々な特産品を見つけてきたり、相場情報を入念にチェックして基本に忠実な取引をしたりして、それなりに成果は上がっていた。特にセリーナのグループに所属する学生が火山地帯で希少鉱石を見つけたのは女王陛下も大喜びだった。
その学生のドラゴンは混血だけど、火竜の特徴が色濃く出ていて、火山での活動も得意だった。それを上手く利用したのが成功した要因だった。
しかし、当初は全くやる気を見せなかったヘルマンのグループは、それ以上の収益を上げていた。
「私としては、一生懸命に頑張っていたセリーナやロジャーのグループに勝ってほしかったけどね。それにセリーナは、私が指導した学生だしね」
「まあ、そういうこともあるわよ。でもヘルマンもヘルマンである意味凄いわ」
「そうね」
やる気のなかったヘルマンは、命の危機を救った帝国商人に支給された資金をすべて預け、こう言ったそうだ。
「これで何か商売をしてくれ。僕たちも手伝う。まあ・・・多少赤字になってもいいらしいから、好きにやってくれて構わない」
依頼された帝国商人は、非常に感謝したそうだ。
そして自分の持てるかぎりの人脈をフル活用して、商売を始めた。その商売というのが観光産業だ。帝国や竜王国、協商連合から富裕層を集めてイベントを企画した。そのメインイベントが水竜レースだ。なんとわざわざジョージ王子が率いる水竜隊も呼び寄せてレースに参加してもらった。結果はクレーテとジョージ王子がデッドヒートを繰り広げ、ジョージ王子が優勝を飾ったのだけど、大変な盛り上がりだった。
またマライアと獣人歌劇団に声を掛けて、定期的に公演を開いて更に収益を上げていた。
グラース王子も驚いていた。
「こんなやり方があったとはね。ここまで急速にキーグ島が発展するなんて、夢にも思わなかったよ」
本当にそう思う。
結局、最も利益の上げたヘルマンのグループには竜騎士学校から、セリーナとロジャーのグループにはナウール王国から表彰されることになった。
学生を指導したことで、私もスピラもクレーテも、少しは成長したと思う。
「これで報告書も終わりね。じゃあ、お茶にしましょうか?」
「そうしましょう。後は・・・」
言い掛けたところで、マライアが部屋に入ってきた。
「カトリーヌ隊長。こちらが特別公演の計画書になりますわ。ご確認くださいませ」
マライアに手渡された計画書を確認する。
「許可は出したけど・・・それにしても、かなり大掛かりね」
「そうですわね。でも大丈夫ですわ。実習生のお稽古もバッチリですわ」
「分かったわ。私たちもサポートするから、しっかり頑張ってね」
「お任せください。それでは私はこれで失礼致しますわ。最終チェックがありますので」
マライアを見送る。
スピラが報告書を見ながら言う。
「マライアはやっぱり凄いわね。ここまでキチンと計画するなんてね」
「そうね。これなら儀礼大臣になっても十分やっていけると思うわ」
マライアが現在進めているのは、サイシレドスで行われる国際会議のオープニングセレモニーだ。
ナウール王国、協商連合、竜王国の王族や代表者が集まっての国際会議なのだが、そのオープンニングセレモニーのすべてを私たち直轄特務隊が請け負うことになった。
私を含め、誰も経験のない任務だったので断ろうかと思ったけど、マライアのたっての希望で請け負うことになった。
実際、マライアはキーグ島でほぼ同じようなことを成功させている。マライアは言う。
「歌を歌うのも楽しいのですが、こうしたイベントのすべてを取り仕切るのも楽しいものですわ」
そんなマライアは、実家の伝手を使ってスタッフを大量に集め、ここまでこぎ着けた。
素直に凄いと思う。
「竜王国の主賓はエリザベート王女ね。竜騎士学校の副校長だから適任ね」
「また竜王国の三大美少女が揃うのね・・・今回も私は目立たないようにしないとね。エリザベート王女は、こういった大規模な国際会議は初めてでしょうから、折角の晴れ舞台を台無しにしてはいけないしね」
「そ、そうね・・・多分、カトリーヌさんは隠れていても目立つと思うけど・・・」
「それもそうね・・・困ったものだわ」
後から考えると、この時は呑気なものだったと思ってしまう。
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